アトリエとしての住まい インスピレーションが沸きあがる トキメキを大切にした実験室

アトリエとしての住まいインスピレーションが沸きあがる
トキメキを大切にした実験室

1棟リノベ物件と出会って

「都心で駅近の、リノベーションができるマンションを探していたんです」。
というテーブルコーディネーターの菅野有希子さん。1棟丸ごとリノベーションして販売する、築15年のマンションに出会ったのは4年程前。
「新築も見ていたのですが、一部屋ずつが狭く、開放感が感じられる物件がなかったんです。この部屋はもともと80㎡弱の1LDKで、窓の多い東南角部屋。明るい日差しも入っていました。この条件を活かしてリノベーションをすれば、さらにオープンな空間がつくれると思いました」。
エントランスなど、明るくモダンな雰囲気にリノベートされた共有部も気に入ったそう。マンション全体を担当していたリビタの、モデルルームを担当していた女性建築家に相談して進めることに。

総面積は76.87㎡。遮るもののない明るく広々とした空間。

総面積は76.87㎡。遮るもののない明るく広々とした空間。

東側と南側に開口がある。寝室の仕切りは光を通す格子戸に変え、キッチンと廊下を分けていた仕切りも取り払った。

東側と南側に開口がある。寝室の仕切りは光を通す格子戸に変え、キッチンと廊下を分けていた仕切りも取り払った。

格子戸を開け放つと、全体がワンルームのようになる。床に埋め込んだコンセントは真鍮で。延長コードは出しておいても美しいものをセレクト。

格子戸を開け放つと、全体がワンルームのようになる。床に埋め込んだコンセントは真鍮で。延長コードは出しておいても美しいものをセレクト。

格子戸で緩やかに間仕切りを

「開放的な間取りにすること、床をヘリンボーン張りにすること、ガラス戸を取り入れること、タイルを使うことといった、譲れない条件をお伝えしてプランを立てました」。
間取りや水回りの位置はほぼ変えず、ヘリンボーン張りのLDKを中心としたワンルームのようなプランに変更。玄関を入るとスケールの大きいキッチン、光が通過する格子戸のベッドルームが目に飛び込んでくる。
「格子戸は、危なくないように透明アクリルとアルミフレームで造作したものです。開けておけば部屋全体がワンルームになるし、閉じておいても光が抜けて視界が遮られません。家にいる時間が長いので、広々とした空間で心地よく過ごせるのが有り難いですね」。
菅野さんはフリーランスでテーブルコーディネートをはじめ、食や住に関するスタイリング、商品開発などの仕事に携わっている。
「ここは私にとってアトリエでもあるんです。実験的に色々なコーディネートを試しています。家は心地よい場所であるのと同時に、インスピレーションの沸く空間であって欲しいですね」。

無垢材のヘリンボーン張りにこだわった空間を自由にコーディネート。

無垢材のヘリンボーン張りにこだわった空間を自由にコーディネート。

黒い格子のフレームは、空間のアクセントにも。

黒い格子のフレームは、空間のアクセントにも。

就寝時には戸を閉じると個室のようになる。カーテンレールも設置。

就寝時には戸を閉じると個室のようになる。カーテンレールも設置。

玄関を入った時、キッチンに立った時に眼前に広がる光景。

玄関を入った時、キッチンに立った時に眼前に広がる光景。

仕切りで塞がれていた廊下がなくなり、開放的に。

仕切りで塞がれていた廊下がなくなり、開放的に。

様々なテイストをミックスさせて

どこを切り取っても絵になる空間は、菅野さんがネットや写真集などから気になるインテリアを集めて実現させたものだ。
「気になるものを集めている中で、自分は海外のアパルトマンのような雰囲気が好きなのだと気づきました。細かなパーツや素材など、建築家さんに紹介してもらったり、自分で探したりして、理想の空間を目指しました」。
存在感のあるキッチンは、既存のシステムキッチンに面材を貼ってモールディングを施し、真鍮の取っ手を取り付けて完成した。
「仕事柄もあり器をたくさん持っているので、アイランドに棚を増設しています。パントリーに加えてアイランド上に吊り収納も取り付けました」。
薄いグレーのキッチンの面材は、リビングのアクセントウォール、サニタリーの壁紙のグレーとグラデーションになっている。
「リビングの2面は開口なので、唯一の壁である部分に収納を設けますか? と聞かれたのですが、それよりもディスプレイスペースにしたいと思い、アクセントウォールに仕上げました。色々なアレンジを楽しんでいます」。
家具はアンティークあり、ヴィンテージあり、インダストリアル系ありと、様々にミックス。
「同じテイストで揃えるよりは、色々なものを混ぜ合わせて雑多な感じを楽しみたいです。家具も色々と配置を変えては、違う雰囲気を味わっています」。

収納を増設して奥行きのあるキッチンに。アイランド上には吊り収納、背面にパントリーも設けた。

収納を増設して奥行きのあるキッチンに。アイランド上には吊り収納、背面にパントリーも設けた。

キッチン台の天板はクォーツストーン。モールディングに真鍮のパーツが、クラシカルな雰囲気。

キッチン台の天板はクォーツストーン。モールディングに真鍮のパーツが、クラシカルな雰囲気。

日本の現代作家ものから骨董、ポルトガルやベトナムの器まで、たくさん揃える。

日本の現代作家ものから骨董、ポルトガルやベトナムの器まで、たくさん揃える。

菅野さんが企画協力したプロダクト「きほんのうつわ」。美濃焼の技術を活かし、現代の生活になじむデザインと質を完成させた。

菅野さんが企画協力したプロダクト「きほんのうつわ」。美濃焼の技術を活かし、現代の生活になじむデザインと質を完成させた。

60年代イギリスのスタンドライト、「Cerote Antiqus」で購入したソファに、ヴィンテージのトランクをサイドテーブルに。ヨガマットを敷いても余裕の広さ。

60年代イギリスのスタンドライト、「Cerote Antiqus」で購入したソファに、ヴィンテージのトランクをサイドテーブルに。ヨガマットを敷いても余裕の広さ。

ドレッサーにはアンティークのテーブルを。パリのアパルトマンの雰囲気が漂う。

ドレッサーにはアンティークのテーブルを。パリのアパルトマンの雰囲気が漂う。

1面をアクセントウォールに。何パターンもある色見本の中から、薄めのグレーを選んだ。「ACTUS」で購入した古材を使ったテーブルに、70年代のチェスカチェアなど、1脚ずつ揃えたイスを合わせる。照明は「POINT NO.39」のオリジナル。大きなウンベラータが生き生きと茂る。

1面をアクセントウォールに。何パターンもある色見本の中から、薄めのグレーを選んだ。「ACTUS」で購入した古材を使ったテーブルに、70年代のチェスカチェアなど、1脚ずつ揃えたイスを合わせる。照明は「POINT NO.39」のオリジナル。大きなウンベラータが生き生きと茂る。

雑然としていても美しい空間に

LDKから進めていったリノベーション計画は、洗面所で完結。
「とりこぼしたものをここに凝縮させました。使いたかったタイルをあしらい、収納は最小限にしてビジュアル重視で海外の洗面器を選びました(笑)。ミラーや照明もお気に入りです」。
もともと外国人の入居を想定して設計されたマンションのためか、ベッドルームから洗面へとつながるドアが設置されているなど、特徴のある造りだった。便利な動線はそのままに、1日2回のバスタイムを楽しんでいるそう。
「以前、賃貸のときもデザイナーズマンションを借りていたのですが、ただ生活するのではなく、住まいにもトキメキが欲しいと思っています。ミニマルですっきりとした部屋もいいですが、私は色々なものが雑然と出ていても素敵な空間が好き。だから、出しっ放しでも美しく見えるモノを選んでいます。そしてコーディネートして、しっくりこなければまた変えて。トライアンドエラーで実験を楽しめる空間を手に入れて満足しています」。

ベッドルームから洗面へ、そしてキッチン方面にも出られる回遊できる造り。

ベッドルームから洗面へ、そしてキッチン方面にも出られる回遊できる造り。

海外の洗面器を採用したサニタリー。あえて配管を見せるようにした。

海外の洗面器を採用したサニタリー。あえて配管を見せるようにした。

丸いミラーや照明は菅野さんが探したもの。古材の足場板を使い、出しておいても素敵なモノを陳列。

丸いミラーや照明は菅野さんが探したもの。古材の足場板を使い、出しておいても素敵なモノを陳列。

トイレの壁はいちばん濃いグレーを選択。真鍮のペーパーホルダー、業務用のシンプルなバーにこだわった。

トイレの壁はいちばん濃いグレーを選択。真鍮のペーパーホルダー、業務用のシンプルなバーにこだわった。

ヤフオクで購入したドラムを使ってディスプレイ。大きさを揃えない、高低差をつけるなどが、菅野さんのアレンジテクニック。

ヤフオクで購入したドラムを使ってディスプレイ。大きさを揃えない、高低差をつけるなどが、菅野さんのアレンジテクニック。

テーブルコーディネーター・プロップスタイリストの菅野有希子さん。食住のスタイリング、商品開発から撮影まで行う。

テーブルコーディネーター・プロップスタイリストの菅野有希子さん。食住のスタイリング、商品開発から撮影まで行う。

Ranking Renovation