マンションライフの潮流 今、求められる 間取りの傾向を知る

マンションライフの潮流 今、求められる
間取りの傾向を知る

ライフスタイルの多様化に応じて

マンションライフは、画一的な間取りやデザイン空間から、それぞれの好みに応じたスタイルへ。リノベーションの自由度もますます高まっている。なぜ今リノベブームが巻き起こっているのか、どんなプランが人気なのか。ワンストップリノベーションサービス「リノベる。」の一級建築士・山神達彦さんに伺った。
「最近では予めリノベーションして販売された中古マンションなども、少しここを変えたいという要望もあったりして、より自分らしい暮らしがしたい、こだわった空間に住みたいという気運がますます高まっていると感じています」。
かつては廊下を挟んで細かく分けられていた田の字プランが間取りの主流だった。
「住宅難の時代に大量供給された集合住宅は、供給の効率化が重要視されていたため画一的なプランでした。その頃はサラリーマンが多く生活形態も似ていて、家は住むところであり仕事は会社でするもの、と考える人が多かったんです。それが今は仕事も多様化していて、家族のカタチもライフスタイルも様々。そのため、それぞれの暮らしに応じた間取りが求められていると思います」。
築48年100㎡超の物件をリノベーションした「リノベる。」表参道本社ショールームの一角。物件選びの際は、窓からの眺望、日当たり、騒音など、リノベで変えられない部分もチェックしたい。

築48年100㎡超の物件をリノベーションした「リノベる。」表参道本社ショールームの一角。物件選びの際は、窓からの眺望、日当たり、騒音など、リノベで変えられない部分もチェックしたい。

緩やかにプライベート空間を設ける

仕事も多様化し、テレワークも普及した今、家は職住分離から、職住近接へ。寝るだけでなく、仕事や趣味など、様々なことを叶えられる空間が求められている。
「ワンルームのような広い空間が人気の傾向は続いていますが、それと同時にワークスペースなど、自分だけの空間が欲しいというリクエストも、テレワークが始まるのと平行して増えてきました」。
書斎として独立させたり、LDKや廊下、またはクローゼットなどの一角に設けたり。家の中にプライベートな居場所を求める傾向も高まっているそう。
「プライベート空間を設ける場合も、半個室を造りながらガラスの室内窓を取り付けて、つながりを持たせたりするのが人気です。お子さんの様子を見守りながら仕事をすることができるし、空間のアクセントにもなります」。

玄関からLDKにつながる廊下にワークスペースを設置。様々なプランがリノベなら可能に。

玄関からLDKにつながる廊下にワークスペースを設置。様々なプランがリノベなら可能に。

クローゼットの一角にワークスペースを設けることも可。

クローゼットの一角にワークスペースを設けることも可。

ガラスの室内窓を取りつけることで、光を通しながら空間を緩やかにゾーニング。

ガラスの室内窓を取りつけることで、光を通しながら空間を緩やかにゾーニング。

室内窓側の壁のみ色を加えることで、LDKのアクセントに。ガラス窓により抜け感が確保できる。

室内窓側の壁のみ色を加えることで、LDKのアクセントに。ガラス窓により抜け感が確保できる。

仕事も趣味も楽しめる空間に

「色々な相談を受け、本当に今は趣味が多様であるなと感じています。洋服が好きなのでショップのようなウォークスルークローゼットが欲しいとか、マンガを楽しむための図書館のような本棚が欲しいとか、バスタイムを楽しみたいからガラス張りのバスルームが欲しい、とか。そういう個性や、趣味、ニーズに応じて間取りをパーソナライズしていく、というのが最近の傾向です」。
自宅でホームパーティーを開く人も増えていて、ゲストを呼ぶための空間を求める人、ペットと暮らすために共生空間を考える人など、家づくりはパーソナルに。
「特に今、アウトドアグッズを置くために土間が欲しいという要望がとても多いですね」。
アウトドアグッズに加え、キャリーケースやベビーカー、自転車など、日常的に使うものも置くことができる土間は大人気。玄関に広いスペースを設けることで、家全体を大きく見せる効果も望める。
「土間という形態はルーツを辿ると、昔の日本の農家と同じ考え方なんです。土間は外で必要なものを家の中に持ち込まず保管する場所であり、外と中との中間ゾーンとして存在していました。そういう空間が必要とされるのは、住宅の大量供給時代の前の、職住近接だった昔の時代に回帰してきている気がします」。
アウトドアグッズを置くために計画。玄関に、収納を兼ねた広い土間とロフトを設けた。

アウトドアグッズを置くために計画。玄関に、収納を兼ねた広い土間とロフトを設けた。

ヘリンボーンの腰壁が印象的なキッチン。バーカウンターのように楽しむことができる。

ヘリンボーンの腰壁が印象的なキッチン。バーカウンターのように楽しむことができる。

猫と暮らすためにプランを立てた実例。リノベーション時にキャットウォークを設け、部屋の意匠に溶け込ませた。

猫と暮らすためにプランを立てた実例。リノベーション時にキャットウォークを設け、部屋の意匠に溶け込ませた。

マンガ室を設けたい、という希望に沿って実現。本のサイズに合わせて棚を設けることで、すっきりとした収納が可能に。

マンガ室を設けたい、という希望に沿って実現。本のサイズに合わせて棚を設けることで、すっきりとした収納が可能に。

動線、効率化を大事に考える

職住近接、趣味も楽しみたい。家に多くが求められるようになった中で、マンションの限られた空間をどのように活用したらよいのか。プロがどう提案しているのかを聞いてみた。
「縦空間を活かしたいというニーズは高く、小上がりやロフトは人気です。ベッド代わりにもなるし、収納力も高められます。小上がりは畳を敷けば和の寛ぎも与えられるし、アクセントとしても有効です」。
快適に暮らす上で、考えたいのは収納と生活動線だ。
「回遊できるウォークスルークローゼットも人気ですが、そこに洗濯機を置き脱衣室とつなげて洗濯から収納までの動線を効率化するというプランを望む方も多いです。家事の簡略化は大事なポイントです」。
コロナ禍が続く中、注目されているのが“クリーンルーム”。玄関に近い位置に上着などをかけられるスペースと洗面を設け、そこで菌を落として室内へ入るためのスペースだ。
「動線を考える時、衛生面も考慮する人が多いですね。玄関付近に洗面台を設置するのは、もう標準といっていいくらいです。これまで、間取りはスペックから考えがちだったのですが、それぞれのライフスタイルや重視したいものによって考えていくのが、今のリノベーションです。そういった自由なプランニングのお手伝いをしていきたいですね」。
壊せない梁を逆に活かし、左右に壁を設けて小上がりをフレーミング。夜は家族全員分の布団を敷いて寝室にしている。

壊せない梁を逆に活かし、左右に壁を設けて小上がりをフレーミング。夜は家族全員分の布団を敷いて寝室にしている。

LDKに設けた小上がり。水と汚れに強い灰桜色の畳を敷き、下にはたっぷりの収納スペースを確保。いずれは子供部屋にすることも考えている。

LDKに設けた小上がり。水と汚れに強い灰桜色の畳を敷き、下にはたっぷりの収納スペースを確保。いずれは子供部屋にすることも考えている。

ロフトを設けて空間を有効活用。下はDVD、CDなどを置いた、「秘密基地」と呼んでいる夫の趣味部屋。上は本を収納し、昼寝もできる図書室スペースに。

ロフトを設けて空間を有効活用。下はDVD、CDなどを置いた、「秘密基地」と呼んでいる夫の趣味部屋。上は本を収納し、昼寝もできる図書室スペースに。

クローゼットに洗濯機を置き、洗濯から収納までの動線を効率化。

クローゼットに洗濯機を置き、洗濯から収納までの動線を効率化。

ベッドルームに接続させてウォークスルークローゼットを設置。

ベッドルームに接続させてウォークスルークローゼットを設置。

シューズクローゼット、土間、ウォークスルークローゼットがつながり、室内へと続く回遊できる造り。

シューズクローゼット、土間、ウォークスルークローゼットがつながり、室内へと続く回遊できる造り。

「リノベる。」で設計を担当する、デザイナーで一級建築士の山神達彦さん。

「リノベる。」で設計を担当する、デザイナーで一級建築士の山神達彦さん。

「リノベる。」が手掛けた様々なリノベーションが図鑑になった「いちばん楽しいマンションの間取り図鑑」 (エクスナレッジ) 。リノベーション計画の参考に。

「リノベる。」が手掛けた様々なリノベーションが図鑑になった「いちばん楽しいマンションの間取り図鑑」(エクスナレッジ)。リノベーション計画の参考に。

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