3人で暮らす37㎡ワンルーム  どこにいても家族とつながる 光と風の抜ける部屋

3人で暮らす37㎡ワンルームどこにいても家族とつながる
光と風の抜ける部屋

直線を活かして視界を広く

歴史と下町情緒で人気の谷根千。築42年のマンションをリノベーションして、家族3人で暮らす建築家の瀧内未来さん。
「それまではすぐ近くで賃貸を借りていたのですが、長女の喘息をきっかけに引っ越すことを決めました。とにかく風通しと日当りのよいところを求めていたんです」。
陽がたっぷり差し込むベランダの向こうに、緑豊かな街が見下ろせる、37㎡のワンルーム。リノベにあたっては、抜け感をどのようにつくるかということと、いかに広く見せるか、ということを優先した。
「玄関を入ると、視界がそのままベランダの開口部に直線的に抜けるように、そして白をベースにして広々と見せることをまず決めました。子育てをしながらいかに楽しく暮らせるか、というのも大事なポイントでしたね」。
玄関を入ると現れるキッチンカウンターが、ベランダまで視線を誘導。この直線が視覚的に狭さをカバーする。

玄関を入ると現れるキッチンカウンターが、ベランダまで視線を誘導。この直線が視覚的に狭さをカバーする。

リビングの中央に小上がりを設けることで、空間を2フロアに分け、スペースを有効に活用。

リビングの中央に小上がりを設けることで、空間を2フロアに分け、スペースを有効に活用。

開放的に暮らす工夫

瀧内さんにとって、建築家として初めての住宅のリノベーションでもあった。施工前に、もともとの2DKの状態のまま、1〜2年程暮らしてプランを練ったそう。
「床面積をどう広く取るかを考え、縦使いを取り入れました。小上がりを設けて、その下に自分とゲスト用のベッドを収納しています」。
リビング中央の小上がりは、昼間は子どもたちのお気に入りの遊び場に。夜は下のベッドを引き出せばリビングが寝室に早変わり。小学生の子どもたちは、ランドリー兼クローゼットの空間の上のロフトで眠る。
「2DKで暮らしていたときとは、やはり開放感が違います。ドアはなるべく設けず、どこにいても子どもたちに目が届くよう設計したのも良かったです」。
オープンなロフト下の空間は、トイレ、バスルームともつながっていて、2方向から出入りできて動線もいい。
「マンションの中部屋なので、南向きベランダ側の窓以外には、共用通路側に面したトイレにしか窓がないんです。その貴重な窓からの光と風を部屋に届けたいために、トイレに引き戸と、収納に小窓を設けて、一直線にベランダまで抜けるようにしました」。
バスルームやロフトにも、光が抜けるスリットを設置して明かりとりに。細かな仕掛けが明るく心地よい空間を生んでいる。
天井は壊して梁をむき出しに。床は無垢のウォールナットに傷のつきにくいウレタン塗装をかけた。ロフト下の壁には小窓を。

天井は壊して梁をむき出しに。床は無垢のウォールナットに傷のつきにくいウレタン塗装をかけた。ロフト下の壁には小窓を。

トイレとランドリー兼クローゼットの間は引き戸。開けておけば小窓からの光が室内に通る。

トイレとランドリー兼クローゼットの間は引き戸。開けておけば小窓からの光が室内に通る。

バスルーム、ロフトの壁の上部に明かりとりのスリットを。玄関脇にも設けられている。

バスルーム、ロフトの壁の上部に明かりとりのスリットを。玄関脇にも設けられている。

オープンな室内は、キッチンに立てばすべて見渡せる。バスルームはタイル貼りにこだわった。

オープンな室内は、キッチンに立てばすべて見渡せる。バスルームはタイル貼りにこだわった。

ロフトの下はランドリー兼クローゼット。

ロフトの下はランドリー兼クローゼット。

スペースを無駄なく使った洗面台。

スペースを無駄なく使った洗面台。

小上がりの下にはベッドを内蔵。ゲスト用のベッドもある。

小上がりの下にはベッドを内蔵。ゲスト用のベッドもある。

ロフト上のベッドルーム。壁は子どもたちが描いたチョークアート。

ロフト上のベッドルーム。壁は子どもたちが描いたチョークアート。

キッチンが家の主役

瀧内さんが家の中心に考えたのはキッチンだという。
「料理すること、食べることが好きなので、家ではずっとキッチンに立っている感じです。ここからは家中が見渡せるんですよ」。
バーカウンターのようなキッチン台は、天板を床の雰囲気と揃えてオーダーしたもの。収納棚には扉をつけず、器などをディスプレイした。店舗設計を行っていたこともあり、間接照明などを取り入れる技はお手のものだ。
「扉や引出しをつけるとコストが跳ね上がるので(笑)。キッチンを使わないときは透けるカーテンをかけています。光を反射して映り込む感じもおもしろいかなと思うんです」。
キッチンの背面はブックシェルフにしていて、家族3人の本を並べている。
「週に一度、みんなで図書館に行って本を借りるようにしているんです。それをここに置いておくと手にとりやすく、子どもたちもよく読んでいますね。姉妹でも選ぶ本のジャンルが違っていて、おもしろいです」。
ベランダではハーブやお花の栽培を子どもたちがお手伝い。光に満ちたワンルームを風が通り抜ける。
圧迫感を避けるため吊り戸棚は設けず、棚柱を使ってオープンに。棚の間隔はトースターが収まる30cmと決めていた。シンクはフタができるものにこだわった。

圧迫感を避けるため吊り戸棚は設けず、棚柱を使ってオープンに。棚の間隔はトースターが収まる30cmと決めていた。シンクはフタができるものにこだわった。

キッチン裏のブックシェルフは、大きな本棚を置くかわりにと考えてオーダーしたもの。

キッチン裏のブックシェルフは、大きな本棚を置くかわりにと考えてオーダーしたもの。

机はゴムの木で造作。DIYで造ったベンチは、収納も兼ねている。キッチンの棚の下でも多数使用。

机はゴムの木で造作。DIYで造ったベンチは、収納も兼ねている。キッチンの棚の下でも多数使用。

リビングの一角は長女の勉強コーナー。ここでも棚柱を活用。

リビングの一角は長女の勉強コーナー。ここでも棚柱を活用。

玄関は土間に。夜になると光るビー玉を埋め込んだ。

玄関は土間に。夜になると光るビー玉を埋め込んだ。

「いちばん贅沢をしたのはタイル貼りなんです(笑)」。色々な種類を使うことで施工費がかかるそう。

「いちばん贅沢をしたのはタイル貼りなんです(笑)」。色々な種類を使うことで施工費がかかるそう。

洗面台のまわりには、大好きなピンクのタイルをDIYで貼った。モザイクのようで楽しい。

洗面台のまわりには、大好きなピンクのタイルをDIYで貼った。モザイクのようで楽しい。

一級建築士・瀧内未来さん。kurachiffon代表。ライフスタイルに応じた空間づくりを提案してくれる。

一級建築士・瀧内未来さん。kurachiffon代表。ライフスタイルに応じた空間づくりを提案してくれる。

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