天井に1mのグリッド設置仕切る、吊るす、載せる…
自由に暮らすワンルーム
予算200万円でリノベ
この家に暮らすのは、藤木俊大さん、あかねさん、3歳の栞ちゃん家族。俊大さんは一級建築士事務所「ピークスタジオ」の共同代表を務める建築士だ。このマンションに暮らすことになった経緯を尋ねると、「ここは、事務所独立後に最初に内装設計を手掛けたコミュニティカフェ『新城テラス』のオーナーさんが所有するマンションなんです」と俊大さん。このカフェの仕事が縁となり、新城の街づくりに取り組むオーナーから「街づくりを手伝って欲しい」と声をかけられたという。「ぜひ手伝いたいと思って、中央区にあった事務所と横浜にあった自宅を両方新城に移すことにしたんです」(俊大さん)。賃貸マンションだが、「住むなら好きにリノベーションしていい」と言われ、予算200万円でリノベーションに着手することになったという。
自由でおおらかな間仕切り
そこで、2DKだった部屋の間仕切りを撤去してワンルームに。そして既存の天井を取り払い、住み手のアイデア次第で自由に使えるアルミ製のグリッドを設置して、可変性のある空間をつくることにした。
「普段はワンルームで広く使い、必要な時はグリッドに布を吊るして緩やかに間仕切りするなど、空間を自由にカスタマイズできます」(俊大さん)。
藤木家では、寝室として使っているスペースのグリッドに蚊帳やテント生地を吊るして活用中。夏は寝るときに蚊帳を下ろし、冬はテント生地を下ろしてアウトドア気分で暮らしているそうだ。「夜遅くに帰ってきたときに、蚊帳やテントをチラッと開けて二人が寝ているのをのぞいたりして」と笑う俊大さん。緩やかな間仕切りのおかげで、寝ているふたりの気配を感じながらも、リビングでゆっくりくつろぐことができるという。
蚊帳やテントを吊るす以外にも、例えば市販の網を乗せて収納棚にしたり、グリーンやドライフラワーを吊るしてインテリアを楽しんだり。「じつは洗濯物の部屋干しがたくさんできて便利なんです(笑)」(あかねさん)と、住むうちに想定外の使い方も発見したそうだ。
玄関土間と収納箱
玄関土間と室内の境界には、両側から出し入れできる箱のような収納を設置。「玄関側が東なので、午前中の光が入るように上部を開けました」と俊大さん。あかねさんは、「この収納があるおかげで、宅配便の人が来た時などに室内が丸見えにならないのが気に入っています」と話す。収納場所を集約するとともに、“吊るす収納”を活用して床にほとんど物を置かないようにしている藤木邸。これが、45平米というコンパクトな空間を実際の面積以上に広くスッキリ見せている要因だろう。
この家に暮らして3年ほど。赤ちゃんだった栞ちゃんは、ワンルームを元気一杯に走り回る3歳に。その様子を目を細めて見守る夫妻。栞ちゃんの成長とともに暮らし方が変化したとき、工夫やアイデアを織り交ぜて空間をカスタマイズしながら、どんなふうに暮らしていくのだろう。