自由なリノベーション施工のプロが自ら手がけた
あたたかみのある自宅兼事務所
人と人の繋がりが感じられる物件
平岡さんはこの辺りが地元。独立するタイミングで、自宅兼事務所となる物件を探していた。「マンションオーナーの石井さんは、実は中学の先輩。『ちょうどひと部屋空いたから、住んじゃえば?』と声をかけていただいて即決しました」と振り返る。また、独立する前に勤めていた会社で、原﨑さん・星野さん夫妻の部屋の施工を手がけていており、その後も付き合いが続いていたことから、設計をお願いしてリノベーションを行うことにした。
「このマンションは、住人同士の仲がいいのが魅力的。近所のお店もみんな顔見知りなんです。住みなれた地元で、人と人の繋がりを感じながら働き、暮らしたいと思いました」。
自身を体現したオープンなスペース
「僕は、区切ることや隠すことが好きじゃないので、広々としたオープンな空間にしたいと思いました」と、リノベーションのテーマを語る平岡さん。その希望を受けた原﨑さん・星野さんは、水回り部分だけに扉をつけ、その他のスペースはひとつながりとした。
「ベッドを置くスペースもおおらかな空間の中に組み込み、床の段差と独立柱でゆるやかに区切りました」(星野さん)。
結果、開放的に明るく生まれ変わった部屋に平岡さんは、「オープンで隠し事が嫌いな自分の性格を体現したような部屋なんです」と、満足げに微笑む。
また、室内に現れた鉄骨の柱型や梁型はラワンベニヤで仕上げ、床にはセランガンバツの無垢材を敷いた。さらにデザインのポイントとなるのが、壁に張られた「付け柱」で、壁内の柱位置を示すように設けられている。空間を引き締め、どこか寺社のような落ち着きも感じさせる。照明は、そんな木のぬくもりを感じる空間を引き立てるよう、スポットごとに照らす配置とした。
こちらのリノベーションの最大の特徴は、住まい手である平岡さん自身が、施工を全て手がけた点。かねてから仲が良く気兼ねしない関係性の建築家夫妻と活発に意見を交わしながら、シンプルで洗練されたデザインを練り上げた。
ものづくりの楽しさを発信する場所
「3歳くらいのお子さんから大人まで、20人以上が集まってくれました。壁と天井を白くペイントしたり、木部にオイル塗装をしてもらったのですが、みんなすごく楽しそうで、特にお子さんはびっくりするほどの集中力で取り組んでいましたね」(平岡さん)。
また、部屋を見渡すと棚やキッチンカウンターもラワンベニヤ材で造り付けられているが、これらは星野さんが図面を描き、平岡さんと大工のご友人の2人で製作したもの。自らの手をかけたぴったりサイズの家具たちが、快適な暮らしをサポートしている。
そしてよくよく見ると、棚板はL字金具で付け柱に取り付けられている。これは、設計を担当した原﨑さん・星野さんのアイデアだ。「付け柱を利用すれば、壁に穴を開ける必要はありません。住んでいくなかで『ここにも棚が欲しいな』と思ったら、自在に増やしていけます」(原﨑さん)。
この部屋に住み始めたばかりの平岡さんは、「ようやく自分が理想としていた自宅兼事務所が出来上がりました。開放的で木の温もりを感じられて、とても気に入っています」と笑顔で頷く。きっとこれから先、この空間で新たな交流が生まれ、生業とする住まいづくりもアクティブに展開していくのだろう。