建築家夫妻のリノベーション1つの家に2つのニュアンス、
余白が作る豊かな広がり
耐力壁を長所にした逆転の発想
「物件を購入してからわかったのですが、一室を2:1に分断するように耐力壁が入っていました。しかも耐力壁の開口部はドア1枚分程度という厳しい条件(笑)。耐力壁なので勝手に穴を開けるわけにもいかず、リビング、キッチン、寝室、水回りなどの住まいに必要な場所を、2:1のどちらかに振り分けざるを得ませんでした」
様々なプランを検討するうち、生活に必要なスペースは2/3の部分に収め、残りの1/3は使い途をあえて決めてしまわずに、その時々で自由に形を変えてゆける余力を残した場所とすることに決めた。その決断が、鎌谷邸を魅力ある住まいにしている。
「我が家では、生活インフラエリアを『A面』、余地のあるエリアを『B面』と呼んでいます。『B面』は、時と場合によっていろいろな使い方をしています。今はふたりの仕事スペース、息子の遊び場、友人が来たときにゆっくり食事をしたり、時にはヨガ、ある時はDIYのためのスペースと様々に使い方が変わります」
2つの空間の雰囲気と役割りを真逆に
たとえば『A面』の床はウールの絨毯を敷いたのに対し、『B面』は武骨なフレキシブルボードに。壁は躯体の上にプラスター塗りされているものをそのまま残した。
「『A面』と『B面』をしっかり分けたので、『B面』におもちゃが散乱していても、仕事の資料が広げっぱなしでも、『A面』が片付いていればあまり気にならないのが助かっています」
機能的かつ詩的なカーテンの演出
ここに越してきてすぐの3月に、緊急事態宣言が発令された。
「家にいる時間が長かったことで、テレワークの環境を整えたり、テラスのデッキをDIYしたり、家の近くのスーパーやお店を短時間で把握することができました」
今後は『B面』にソファコーナーを作る計画もあるなど、住まい作りは今も続行中なのだとか。
「息子の成長とともに、フレキシブルな『B面』の使い方は少しづつ変わっていくと思います」