
建築家夫妻のリノベーション1つの家に2つのニュアンス、
余白が作る豊かな広がり
耐力壁を長所にした逆転の発想
「物件を購入してからわかったのですが、一室を2:1に分断するように耐力壁が入っていました。しかも耐力壁の開口部はドア1枚分程度という厳しい条件(笑)。耐力壁なので勝手に穴を開けるわけにもいかず、リビング、キッチン、寝室、水回りなどの住まいに必要な場所を、2:1のどちらかに振り分けざるを得ませんでした」
様々なプランを検討するうち、生活に必要なスペースは2/3の部分に収め、残りの1/3は使い途をあえて決めてしまわずに、その時々で自由に形を変えてゆける余力を残した場所とすることに決めた。その決断が、鎌谷邸を魅力ある住まいにしている。
「我が家では、生活インフラエリアを『A面』、余地のあるエリアを『B面』と呼んでいます。『B面』は、時と場合によっていろいろな使い方をしています。今はふたりの仕事スペース、息子の遊び場、友人が来たときにゆっくり食事をしたり、時にはヨガ、ある時はDIYのためのスペースと様々に使い方が変わります」

床面積78㎡のうち、約2/3のスペースに、ダイニングキッチン、水回り、リビング、寝室などの生活インフラをまとめた。

以前の家で愛用していた『graf』のソファを新居に。

右の曲線の壁と、ダイニングテーブルの丸みが、部屋の動線にゆとりを感じさせる。

『平田タイル』のマスタードカラーのタイルと、『北沢産業』の業務用の造作ステンレスキッチン。収納にはグレーの無骨な業務用コンテナを使用。

アルヴァ・アアルトの半円形のテーブルは、長方形のテーブルと組み合わせることで好みの大きさで使えるよう考えられたもの。

ダイニングのライトは奈良の『ニューライトポタリー』で購入。
2つの空間の雰囲気と役割りを真逆に
たとえば『A面』の床はウールの絨毯を敷いたのに対し、『B面』は武骨なフレキシブルボードに。壁は躯体の上にプラスター塗りされているものをそのまま残した。
「『A面』と『B面』をしっかり分けたので、『B面』におもちゃが散乱していても、仕事の資料が広げっぱなしでも、『A面』が片付いていればあまり気にならないのが助かっています」

『A面』と『B面』をつなぐ通路は、異空間を行き来するトンネルのようだ。

通路の右側は瑞くんのスペース。棚はラワン合板を真鍮の棒で支える構造になっている。瑞くんが使いやすいよう、下の段を低くセットしてある。高くすれば勉強机として使える。

『B面』の床は、外壁材としても使われるフレキシブルボード。

二人分がしっかり確保されたワークスペースは、コロナ禍で予想外の活躍。

テラスのデッキは、潤さんがDIYで製作。耐久性の高い南洋材を使った。

夏はテラスで念願のプール遊び!
機能的かつ詩的なカーテンの演出
ここに越してきてすぐの3月に、緊急事態宣言が発令された。
「家にいる時間が長かったことで、テレワークの環境を整えたり、テラスのデッキをDIYしたり、家の近くのスーパーやお店を短時間で把握することができました」
今後は『B面』にソファコーナーを作る計画もあるなど、住まい作りは今も続行中なのだとか。
「息子の成長とともに、フレキシブルな『B面』の使い方は少しづつ変わっていくと思います」

ベッドのヘッドボードの上に並んだ絵本を選んで読み聞かせ。リビングと寝室は『ファブリックスケープ』のカーテンでゆるやかに仕切る。窓際のカーテンはドレープを寄せれば明るさを調節できる。

リビングと寝室をゆるやかに分ける、モダンな素材感のカーテン。

レースのカーテンは、1枚だと柔らかな光に、生地を寄せてレースを重ねれば部屋を暗くできる。ウールのタイルカーペットは『堀田カーペット』のもの。

『平田タイル』の変形六角形と菱型のタイルを組み合わせた浴室。丁寧な職人仕事が美しい。

洗面所の小さな大理石を使った壁面のタイルは、曲線に沿って美しく仕上がっている。収納は無印良品のボックスに。「家族の下着類もここに入っています」。洗面ボウルは『デュラビット』。洗濯機はロールカーテンで隠すこともできる。

バス、トイレ、洗面を一箇所のスペースにまとめた。トイレは『グローエ』のもの。
