古いものの魅力をモダンに再生  アートと古家具が映える 緑の中のギャラリー空間

ヴィンテージの味を活かして アートと古家具が映える
緑の中のギャラリー空間

70年代の庭つきマンションを即決

「建物自体のポテンシャルが気に入って、すぐに購入を決めました」。
陶芸家・鈴木絵里加さんは、アトリエを併設できる家をリノベーション前提で探し、2年程前に当時築44年のヴィンテージマンションに出会った。
「外観を見た瞬間すぐに気に入りました。ジグザグに建てられた面白いプランで、ほとんどの部屋に窓があり、捨ての部屋がないんです。隣の家はほぼ見えないし、音も聞こえません。うまく考えて造られているなと思いました」。
都心の落ち着いた住宅街。1階のため広い専用庭も付き、リビングダイニングからもベッドルームからも緑溢れる庭を眺めることができる。
「プライバシーが保たれているのでカーテンもかけていないんです。庭には、前に住んでいた方が植えたらしいカキやミカン、グミ、山椒の木などがあって、実がなると収穫していただけるのも楽しみです」。
70年代のコンクリート造の雰囲気が気に入って、壁を現しに。開口部の向こうには専用庭の緑が広がる。

70年代のコンクリート造の雰囲気が気に入って、壁を現しに。開口部の向こうには専用庭の緑が広がる。

ダイニングはラワンの床で。見つけるととりあえず買っておくという古道具が、あちこちで味わいを添える。

ダイニングはラワンの床で。見つけるととりあえず買っておくという古道具が、あちこちで味わいを添える。

解体作業をして気づいたこと

絵里加さんも夫も、ともに大学で建築を学んだ。理想の空間を叶えるため、ふたりでプランを立て、大学時代の友人に設計を依頼。
「夫がイメージパースを描いて、それを元に設計者や職人さんとイメージを共有しました。庭との関係性を中心にプランニングしていきました」。
リビング、キッチン、ベッドルームはモルタルの床で、庭と地続きの土間のような雰囲気。ダイニングのみラワンの床が敷かれている。
「ダイニングはもと和室だったところで、断熱材が入っていたんです。一室くらい裸足で歩く空間があってもいいかなと思って」。
設計プランが決まってからが「壮絶なDIY」の始まりだった。
「壁紙や床のカーペット剥がしなど、自分たちでできる解体作業はなるべくやりました。最後は防水処理やオイル塗装も。大変でしたけど壊していく中で気づくことがあり、その都度変更することができて良かったと思っています」。
例えば洗面所の壁の一部は、壁紙を剥がしてみると表情のあるモルタルが現れた。これはそのまま残したいと、現しにすることに。
「業者さんにお任せにしたままだったら、できなかったことですよね」。
100キロ程あるダイニングテーブルはTIME&STYLEで購入。コンクリートむき出しの空間に合わせて、力強い雰囲気のものを選んだ。

100キロ程あるダイニングテーブルはTIME&STYLEで購入。コンクリートむき出しの空間に合わせて、力強い雰囲気のものを選んだ。

素足で上がるダイニングは、壁を薄いグレーで塗装。

素足で上がるダイニングは、壁を薄いグレーで塗装。

イスはラタン家具のブランドSika DesingやCARL HANSEN&SON。ラワンの床や建具に似合う。 

イスはラタン家具のブランドSika DesingやCARL HANSEN&SON。ラワンの床や建具に似合う。 

ギャラリーのような空気が流れる玄関。陶器のオブジェはご自身の作品。壁の作品はハタノワタルさん。

ギャラリーのような空気が流れる玄関。陶器のオブジェはご自身の作品。壁の作品はハタノワタルさん。

壁紙を剥がして現れた鏡の上のモルタルをそのままに。FONTE TRADINGのシンクは二人でも使える幅と、水はねの心配のないようにピッタリおさまるサイズのものを探した。

壁紙を剥がして現れた鏡の上のモルタルをそのままに。FONTE TRADINGのシンクは二人でも使える幅と、水はねの心配のないようにピッタリおさまるサイズのものを探した。

壁の収納の引出しは、hue leatherにオーダーしたもの。やわらかな質感と色合いの革を選んだ。生活用品はカゴに入れて布でカバー。

壁の収納の引出しは、hue leatherにオーダーしたもの。やわらかな質感と色合いの革を選んだ。生活用品はカゴに入れて布でカバー。

大切な古家具に合わせて

「古いものが好きなんです。昔から買い集めてきた古道具に合わせるために、建具などの素材はラワンで統一して、壁も塗装した部分は真っ白ではなくグレーを選びました」。
キレイすぎる木材は汚れが気になり古家具にも合わないと、キッチン台もラワンで造作。
「ロットで色が変るので、どこにどの部分を使うかなども、細かくリクエストしましたよ。キッチン台の高さも、5mm単位で検証してオーダーしました」。
シンクは角ばりすぎず丸すぎず、深さ、広さもベストなものを追求。ドアノブ1個に至るまで、細かなところをこだわり抜いた。
「ものを選ぶときは吟味して選び、長く使います。アイランドにしているラワンの棚も、昔、知人の大工さんに作ってもらった靴箱を再活用しているんです。同じサイズのものを2つ、背中合わせにして置いているのですが、収納にもカウンターにもなって重宝しています」。
ダイニングからキッチン方向を眺める。構造壁だけを残し、仕切りは取り払った。壁に掛かったマスクは絵里加さんの作品。

ダイニングからキッチン方向を眺める。構造壁だけを残し、仕切りは取り払った。壁に掛かったマスクは絵里加さんの作品。

土間のようなモルタル敷きのキッチン。アイランドにしている中央の棚が、以前知人の大工さんにオーダーして造ったもの。

土間のようなモルタル敷きのキッチン。アイランドにしている中央の棚が、以前知人の大工さんにオーダーして造ったもの。

キッチンはシンプルで使い勝手の良いものを目指した。コンクリートの荒々しさを素朴なラワンの雰囲気が和らげる。コンロ、シンクを指定し、収納の使い勝手を考えてオーダー。

キッチンはシンプルで使い勝手の良いものを目指した。コンクリートの荒々しさを素朴なラワンの雰囲気が和らげる。コンロ、シンクを指定し、収納の使い勝手を考えてオーダー。

キッチンからも通りの緑が眺められる。古道具の什器にお気に入りの作家さんの作品を飾る。 

キッチンからも通りの緑が眺められる。古道具の什器にお気に入りの作家さんの作品を飾る。 

中央の造作の棚の隣には、古道具の棚をコーディネート。本や食品、ストック食材をアイランドに収納。

中央の造作の棚の隣には、古道具の棚をコーディネート。本や食品、ストック食材をアイランドに収納。

木のお皿を風通しのいい窓際に。普段使うご自身の作品のほか、益子などの作家ものもたくさん揃えている。 

木のお皿を風通しのいい窓際に。普段使うご自身の作品のほか、益子などの作家ものもたくさん揃えている。 

吊るして収納できるよう壁にバーを設置。「お気に入りで揃えると、素材が違っても統一感が生まれます」。

吊るして収納できるよう壁にバーを設置。「お気に入りで揃えると、素材が違っても統一感が生まれます」。

細部までこだわり抜きたい

「窓を開けるとまるで外にいるみたいなんです。朝は鳥の鳴き声で目が覚めるんですよ」。
窓越しに森のような緑が広がるベッドルームは、ベッドと造り付けのオープンクローゼットのシンプルな空間だ。
「ベッドは無印良品のフレームですが、マットは空間に対してボリュームが出すぎないよう低めのものを探しました。クローゼットは、予め収納するものを想定してサイズを細かく計算し、造作しています。サイズに関しては既製品だけだとどうしても難しい場合があるので、合うものがない場合はオーダーしたり自分たちで作ったりすることも多いです」。
自らの作品や、ペットのように育てているグリーンが飾られた日当りのいいリビングで、たくさんのこだわりを語ってくれた絵里加さん。
「最近、リビングとダイニングの配置を入れ替えたんです。色々とやってみたいことが出てきて、空間を創ることが好きだと改めて気がつきました。今後も少しずつ手を加えていけたらいいなと思っています」。
森の中の別荘にいるようなベッドルーム。ベッドの高さを抑えることで天井高を確保している。

森の中の別荘にいるようなベッドルーム。ベッドの高さを抑えることで天井高を確保している。

オープンなのに絵になるクローゼット。上段には無印良品のポリプロピレン収納がぴったり収まっている。

オープンなのに絵になるクローゼット。上段には無印良品のポリプロピレン収納がぴったり収まっている。

前の住人から譲ってもらった引き出しを利用して、テレビ台をDIYで制作。上にはご自身や友人の作品などを飾っている。

前の住人から譲ってもらった引き出しを利用して、テレビ台をDIYで制作。上にはご自身や友人の作品などを飾っている。

庭に面した日当りのいいリビングの一角で、サボテンや多肉植物を育てている。中央は絵里加さんの作品。

庭に面した日当りのいいリビングの一角で、サボテンや多肉植物を育てている。中央は絵里加さんの作品。

「SŌK」として活動する陶芸家・鈴木絵里加さん。ソファーはご実家に眠っていたCassina ixc.のもの。TIME&STYLEで購入した和紙のランプシェードは、横に入ったワイヤーのピッチにこだわってセレクトしたもの。設計施工はスマサガ不動産に依頼。

「SŌK™」として活動する陶芸家・鈴木絵里加さん。ソファーはご実家に眠っていたCassina ixc.のもの。TIME&STYLEで購入した和紙のランプシェードは、横に入ったワイヤーのピッチにこだわってセレクトしたもの。設計施工はスマサガ不動産に依頼。

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