クリエイター夫婦のフルリノベ家族3人がゆるやかに繋がる
アトリエのある家
安心して作業に集中できるように
今崎家はデザイナーのご主人と布作家の妻なつきさんというクリエイター夫婦。5年前、長女のこころちゃんが生まれたことを転機に、新居への引っ越しを考えはじめたという。
「以前の住居では、リビングに置いた作業用のテーブルで交互に仕事をしていました。テーブルはその一つしかなく、作業に使う縫い針やハサミに幼い娘が手をのばすこともしばしば。度々ひやっとさせられていました」と話す妻なつきさん。夫婦それぞれの作業机に加え、家族で使える大きなキッチンテーブルを置ける間取りを実現するために、今崎さん夫婦が選んだのは中古マンションのフルリノベーションだった。いまでは念願だった布を広げてもシワにならない大きな作業机で思う存分仕事に集中している。
互いの気配を感じられるカーテンの扉
この物件の一番の決め手は、南向きの大きなガラス窓からの景色と日当たりだった。すぐ隣が小学校ということもあり、互いの建物を隔てる部分は広く芝の植え込みになっている。
「内見に来たとき、青々と生い茂った緑がキラキラと輝く光景に心を奪われました。陽が差し込むと芝が日光に照らされて、部屋の中までエメラルドグリーンの柔らかな光が届くんです」となつきさん。そしてその光を優しく包むのは、なつきさんが手作りしたカーテンだ。
またそれぞれの部屋の仕切り代わりにも、なつきさんの生成り布が活躍している。たとえば寝室は、この物件にもともとあった障子の組子を再利用し、そこに大きな布を被せて空間をゆるやかに仕切っている。
「家族がそれぞれ別の部屋にいても互いの気配を感じられるよう、ドアや扉はなるべく付けないようにしました。仕事、食事の支度、お絵かきと別々のことをしていても、常に家族のぬくもりを感じられる空間で子育てをしたいと思って」とご主人。
気兼ねなくモノづくりに打ち込める環境
DIYも趣味のひとつという今崎家では、床のモルタル塗りやテーブルのオイル塗装、壁の塗装も自ら行ったという。DIYや制作活動で汚れてもいいように、床にはあえて室内用ではない杉の古材を選んだ。また、流し台とダイニングテーブルの二役を兼ねる大きなキッチンテーブルには、木材を寄せ集めた集成材を使用。リーズナブルな上に一枚板のように反ったりせず扱いやすいのが利点だ。アトリエのような空間づくりを目指すことで、結果的に費用面でも使いやすさの面でも満足いく仕上がりになった。娘のこころちゃんも三輪車を乗り回したり落書きをしたり、のびのびと過ごせるこの家が大好きなようだ。
そして部屋のインテリアには、2人の制作活動の歴史が散りばめられている。たとえばご主人がデザイナーの道を志すきっかけとなったフィリップ・スタルク氏の作品、まだ美大生だったときに描いた絵、妻なつきさんが最初の個展で使った案内板など。
「人生に大きな影響を与えてくれた人たちや学生時代の作品は、見るたびに初心に戻してくれるんです」