デザイナー夫婦の北欧リノベ 教会の待合室をヒントに。障子が柔らかな光を呼び込む。

デザイナー夫婦の50㎡台リノベアーチ型の天井と障子が生み出す
光のグラデーション。

イメージソースは北欧の教会や墓地。

今年で結婚14年目を迎える衛藤家は、夫婦でデザイン事務所を営んでいる。6年ほど前に勤務先から独立するタイミングで、約53㎡あるマンションを購入。フルリノベーションをして現在2人で暮らしている。
「グラフィックデザインの事務所に勤務していたのですが、空間をデザインする仕事にも関わっていたので、家を買うならちゃんと作り込みたいと思っていました」と話すのは、夫の隆弘さん。
リノベーションの設計は「アオイデザイン」に依頼した。
「何社かリノベ会社の説明会へ行ったのですが、当時、多くの会社のプランはある程度できることが限られていました。そんな中でアオイデザインさんは、ゼロベースから細かく作り込んでくださる印象を受けました」
デザインのイメージソースとなったのは、北欧諸国の建物が多かったという。その一つが、世界遺産としても有名なストックホルムの『スクーグスチルコゴーデン(森の墓地)』だ。
「実際に自分で訪れたときにすごくいい空間だなぁと思って、家づくりの参考にしました」と続けた。
築53年、総面積は約53㎡。

築53年、総面積は約53㎡。

床はフレンチオークスマートヘリンボーン。

床はフレンチオークスマートヘリンボーン。

天井の隅は緩やかなカーブを描く。

天井の隅は緩やかなカーブを描く。

窓際の障子からは柔らかな日光が差し込む。

窓際の障子からは柔らかな日光が差し込む。

真ん中の壁に全ての障子が収まる仕組み。

真ん中の壁に全ての障子が収まる仕組み。

壁は温かみのある質感が特徴のジョリパットで仕上げた。

壁は温かみのある質感が特徴のジョリパットで仕上げた。

カイ・クリスチャンセンの一人掛けペーパーナイフソファ。

カイ・クリスチャンセンの一人掛けペーパーナイフソファ。

フリッツハンセンのスーパー楕円テーブル。

フリッツハンセンのスーパー楕円テーブル。

エアコンは天井に埋め込んで、すっきりとした印象に。

エアコンは天井に埋め込んで、すっきりとした印象に。

障子紙で光の印象を操って。和室に見せない工夫とは?

家をデザインする上で特にこだわったのは、光の印象と天井のアーチだ。
まずは光の印象。日光の差し込む南向きの窓ガラスには、全面に障子の引き戸が完備されている。
「障子紙を通すことで、部屋全体に均一なやわらかい光が回ります。この家は一面にしか窓がないので、あまり多くの日光が入ってきません。だから光の量ではなく、質をコントロールしようを考えました(隆弘さん)」
「和室にしたかったわけではないので、障子には工夫を施しました。たとえば、障子の格子は割りをできるだけ大きくしたり、格子を壁と同色のグレーに塗ったり。和室に使われる障子とは異なる印象を目指しました」と、妻のあゆ美さんが続けた。
合計5枚の障子は、リビング中央の壁面にすっきりと収納できる。開けはなてば、日光のさす明るい空間に。障子を立てれば、やわらかな光に包まれた優しい空間に。
壁付けと対面カウンターを組み合わせたキッチン。

壁付けと対面カウンターを組み合わせたキッチン。

キッチンの壁は汚れを考慮して大判のタイルに。

キッチンの壁は汚れを考慮して大判のタイルに。

キッチンは「ekrea」でオーダーしたもの。

キッチンは「ekrea」でオーダーしたもの。

カウンターの横に壁を立てて、冷蔵庫を目隠し。

カウンターの横に壁を立てて、冷蔵庫を目隠し。

引き出しの扉は手をかけられるよう斜めにカット。

引き出しの扉は手をかけられるよう斜めにカット。

大きめの割付にした障子の桟はグレーに塗装。

大きめの割付にした障子の桟はグレーに塗装。

障子を開けると、夫婦の寝室が現れる。

障子を開けると、夫婦の寝室が現れる。

天井の角をなくして、おおらかな印象の空間に。

もう一つのこだわりが、天井のアーチだ。衛藤家の南北方向につながる天井には角がなく、湾曲したアーチ状になっている。これによって南側の窓から差し込む光が天井面に拡散して、暗くなりがちな奥にまで光が回り込む。
「もともとの計画では円を1/4にカットした曲線だったのですが、もっと柔らかな線を出すために有機的なアール型にしました。自分で角度を計算しながら作った型紙を、現場の職人さんに渡して作って頂きました(隆弘さん)」
「リビングと寝室の間にある大きな梁の存在感を弱める狙いもあります。アオイデザインさんが提案してくれました(あゆ美さん)」
アーチの中には梁があり、カーブの部分のみ天井をふかしている。天井のアーチに合わせて、ダイニングテーブルも有機的なカーブのものを選んだ。
収納のための置き家具を置かないのも、衛藤家の空間づくりのポイントだ。
「キッチンやリビングには食器棚やキャビネットを置かず、造り付けの収納棚にしました。壁に埋め込んだり、素材を揃えたりすることで、部屋に自然と溶け込ませています(隆弘さん)」
たとえばリビングのテレビが置いてある壁面。柱にあわせて壁をふかし、収納棚や埋込型のエアコンを設えた。収納棚の上は、ふかした壁をくり抜くような形でテレビや花瓶を置くスペースに。
キッチンには、冷蔵庫を囲うようにパーテーションを立てて目隠しに。さらに隣にあるキッチンカウンターと冷蔵庫の囲いを一体化させた。
「カウンターの木材を冷蔵庫のある部分まで伸ばすことで、冷蔵庫がより目立たないようにしました。カウンターには木材の扉が付いていて収納になっていますが、冷蔵庫の部分はダミーの板です (あゆ美さん)」
色や素材はもちろん、光や曲線までを意識して作られた衛藤家。デザインの仕事に長く従事してきた夫婦ならではの着眼点で、唯一無二の空間が完成した。
キッチンの背面にはワークスペースを設けた。

キッチンの背面にはワークスペースを設けた。

玄関を入ると、目の前にワークスペースがある。

玄関を入ると、目の前にワークスペースがある。

壁を立てず、パーテーションが空間を分ける。

壁を立てず、パーテーションが空間を分ける。

天井には解体時に出てきたコンクリート壁の一部が残っている。

天井には解体時に出てきたコンクリート壁の一部が残っている。

ワークスペースの背後には洗面所がある。

ワークスペースの背後には洗面所がある。

靴の収納棚から洗面所、寝室まで一直線で続いている。

靴の収納棚から洗面所、寝室まで一直線で続いている。

パーテーションに木材の引き戸をつけた洗面所の入り口。

パーテーションに木材の引き戸をつけた洗面所の入り口。

玄関からリビング方向への眺め。

玄関からリビング方向への眺め。

リノベーションの設計は「アオイデザイン」に依頼。

リノベーションの設計は「アオイデザイン」に依頼。

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