ハンドメイドの温もりを作り手の顔が見える
味わい豊かな空間
現在築39年の3階建てのマンションを、8年程前に購入した清水さん夫婦。
「落ち着いた住宅街にあって日当りもいい。ゆとりのある造りも気に入りました」。
まわりはのどかな低層住宅街。廊下や階段など共有スペースにも余裕があるマンションの一室は、1日中光が差し込んで明るい。
「もともと天井も高かったのですが、さらに天井を抜いて20cm程上げたんです。ダイニングとリビングを分けていた仕切りも取りました」。
壁紙をはがし天井までむき出しにしたコンクリートに白いペンキを塗り、床は無垢のパイン古材で。半分は大工さんに、半分は夫婦ふたりのDIYでリノベーションしたのだそう。
「当時はまだリノベーションってメジャーではなくて。そのまま住めるくらいきれいな部屋だったのですが、自分たちで好きなように変えたかったんです。リフォームされてなくて僕たちにはちょうど良かったですね」。
古材の温もりを感じる部屋に
夫の大輔さんはアメリカやヨーロッパから輸入した看板をアレンジして販売する「LETTERS8」を経営、妻の麻由子さんは工作家。ふたりに共通するのは人の手の温もりが感じられるものが好きだということだ。
「僕は以前、古材を売る会社に勤めていて、妻は今、古材を使って作品を作っているんです。だからこの部屋はまず古材の床ありきでした。実際に自分たちで使ってみて確かめたいと思ったんです」。
LDK、仕事部屋の床はパイン材の古材で、洗面所は水に強いチーク材をトリプルに並べたヘリンボーン張りで敷き詰めた。
「トゲがささることもあるけど(笑)、裸足で歩いても気持ちがいいですね。旅行から帰ってきても、ほっとして落ち着くんです」。
リビングとベッドルームを分ける壁は、もともと石膏ボードの壁だった。
「ここに板を張ったらビスも打てるし、面白いんじゃない?と。古材にペンキを塗り、エイジングをした材を大工さんに貼ってもらいました」。
その壁には、大輔さんが扱うアルファベットの”LETTERS”がふんだんにあしらわれて、家全体のアクセントとなっている。
ストーリーのあるものと暮らす
「もともとアメリカンカルチャーが好きで、仕事でアメリカに買い付けに行くたびに色んな雑貨を買い集めていたんです」。
白い箱の中に、ラグ、ブランケット、雑貨などがポップな雰囲気を添えている。存在感のあるダイニングテーブルは、この家に合わせてカスタムメイドしたものだ。
「アメリカのガソリンスタンドの看板を使って友人のアイアン作家に作ってもらいました。部屋の形に合わせてサイズも決めたんです」。
1脚ずつ違うイスはオランダの作家のものだったり、フランス軍のスツールだったり。
「イスは畳めたり、スタッキングできたりするものが好きで。どうやったらそういう形になるのか研究したくなるんです」と大輔さん。昔の活版技術も気になり、室内には古いポスターや看板がたくさん。
古材を使ったフレームに、アートのようなコラージュが施された作品は、麻由子さんの手作り。
「旅行先で拾ってきたものなどを使って作っています。素材はすべて腐って土に帰るものばかりですね」。
ベッドの枠や本棚、ハンガーラックなども手作り。なるべく大量生産品ではなく、作り手の顔が見えて理念が感じられるものを選びたい、というおふたり。人の手の温もりが、部屋に差し込む穏やかな日差しに溶け込んでいた。