角部屋のメリットを活かしてやわらかな曲線と明るい光
居心地よいオープンなワンルーム
子育てにふさわしい開放的な空間に
2面に開口のある角部屋。築23年のマンションの1室を、設計士の新里悟さんは約1年半前にほぼ即決で購入した。
「光がたっぷり差し込んで気持ちのいい空間でした。リノベーションにあたっては、この明るさを最大限に活かしたいと思いました」。
以前の3LDKの間取りに暮らしていた家主さんは、子育てを終えたご夫婦。妻・千夏さんと1歳半の長男・春君の3人で暮らす新里邸にバトンタッチとなった。
「世代交代だね、と仰ったことも印象的で。これから子育てがスタートする私たちにふさわしい空間にしつつ、今しかできないことを思いきってやりたい。子どもが伸び伸びと過ごせる、明るくて開放的なワンルームを目指しました」。
アールをつけてやわらかく
「部屋と部屋の区切りを極力減らした、ボーダーレスの家に住みたいと考えていました。ここは自分の家なので、実験的な意味も含めてやりたいことを実現しています」。
70㎡の空間に、LDK、コンパクトなベッドルーム、クローゼット付きの小部屋を、仕切りを設けずに配置。必要な時は、曲線を描くカーテンで緩やかに閉じることもできる。
「角をとった設計をコンセプトとしていて、所々アールをつけるようにデザインしています。過去の案件でトライしてみた時に空間がとてもやわらかくなったので、自邸でも取り入れたいと思っていました」。
緩やかにカーブした埋め込みタイプのカーテンレールは国内で入手できず、海外から取り寄せたそう。床の段差のアール、玄関框のアール、キッチンカウンターの端や水まわりのドアのアールなど、やわらかな曲線が自然素材の建材とともに優しさを演出し、居心地の良さを感じさせる。
北欧とミッドセンチュリーをMIX
「キッチンは対面式にするとスペースを取ってしまうので、壁付けで造作しました。腰壁を作って隠す場合もあるけど、キッチンも家具の一部として見せたかったので、主役と考えてデザインしました」。
横幅3m以上もあるダイナミックなキッチンは、面材に自然素材のリノリウムを使用しているので、小さな子どもにも安心。
「カラーは妻と一緒に悩んだのですが、結果良かったと思っています」。
家具などは、インテリアコーディネーターの仕事をしている千夏さんがコーディネートしたそう。
「かっこいいというよりはやわらかい空間にしたかったので、北欧とミッドセンチュリーをミックスさせました。カーブのあるデザインを活かして、優しい色味を加えて、居心地のいい雰囲気を演出しています」。
曲線を描くジョージ・ネルソンのバブルランプ、カール・ハンセンのダイニングテーブルは、空間に合わせて選んだもの。キッチンの対面には大人数で座れる大きなソファを造作し、その前に、あえて低い一枚板のソファテーブルを置いた。天井高を感じさせて、ゆったりと寛げる雰囲気を醸し出している。
今しかできない暮らし方を
これまでたくさんの物件を手がけてきた新里さん。
「この家では、今まで挑戦してこなかった新しいことをやってみたいと思って」。
床はなるべく細いフローリングにこだわり、70mmのオーク材を使用。一部はヘキサゴンの床材に切り替えてインナーテラスに。キッチンやトイレでは、タイルの貼り方も遊んでみた。
「トイレは思いきってピンクの塗装にしました。トイレって家の中で遊べる空間だと思うので」。
そんな実験を楽しみながら作り上げた、オープンで明るいワンルームのような空間。
「子どもが走り回るのを見ていると、良かったなと思います。その時々の暮らしに合った空間があると思うので、これがラストではありません。またリノベーションにチャレンジしたいですね」。