心地よい自然素材と優しい灯りこれからの暮らしを考えた
20年目のリノベーション
家時間を心地よく過ごすために
2000年竣工のマンションの1室に、新築時から入居。20年以上暮らして、Kさんご夫妻はこの度フルリノベーションを完了した。
「この先、年を重ねていった時に住み替えるかどうかと考えると、まわりの環境やマンションの管理状況から、やっぱりここに住み続けたいと思ったんです。家で過ごす時間も長くなったので、先々の生活を見越しつつ、心地よい空間にしたいとリノベーションを選びました」。
新築入居時には和室を改装して3LDKから2LDKに変えたり、数年経って水回りをリフォームしたりもしていた。
「その際に感じたのは選択肢が限られていたこと。決められた中から選ばなければならなくて、自分のイメージになかなか近づけない感じがありました。そこで今回は事例を集めるなど色々調べて、アトリエ橙(だいだい)さんに依頼することにしたんです」。
ポイントだったのは、これまでの施工事例が、自然素材を使った住みやすそうな家だったこと。夫婦ふたりがこの先を心地良く、楽しんで暮らせるよう、プランニングをスタートした。
素材感のある空間を、灯りで演出
「おふたりの暮らし方を拝見したりヒヤリングしたりして、ライフスタイルを邪魔しないよう意識しました。海外旅行によく行かれるご夫妻なので、その暮らし方を設計に活かしています」と、アトリエ橙の奥山裕生さん。
室内には、アジア、アフリカなど旅先で買い集めてきたアートや雑貨が、テクスチャーのある珪藻土仕上げの空間になじんでいる。
「初めに木のコテで荒らし、さらに上から金ゴテでならす方法で仕上げています。均一に塗ると折角の素材感が失われるので、荒らして凹凸を出すのですが、それだけだと住宅としては荒々しすぎるので、さらにならして落ち着いた感じに仕上げています」(奥山さん)。
天井まで珪藻土に包まれて、静寂な雰囲気が漂うリビング。一部にはタイルがあしらわれ、アクセントになっている。
「プランニング前に奥山さんの自宅に伺った時に見て、ぜひ同じものを取り入れたいとリクエストしたんです」。
凹凸感のあるタイルは、上から間接照明を当てることによって、さらに陰影が出せるそう。
「照明は、設計において大事なポイントなんです。部屋全体を照らすことはせず、灯りが欲しいところと暗くてもいいところをはっきりと分けるようにしています。必要なところに必要な明るさがあれば、生活に不便はありません」(奥山さん)。
使いやすい間取りに変更
間取りは2LDKをスケルトンにして、1LDK+ウォークインクローゼットに。
「以前の造りで決定的に嫌だったことはなかったんです。唯一、キッチンが独立型で狭かったので、広くしてほしいとお願いしました。夫も料理をするので、ふたりで一緒に立てる広さが欲しかったですね」。
壁で囲われていたキッチンをオープンにして、回遊できる間取りに。玄関からパントリー、キッチンを通ってLDKへと抜けられる動線を確保した。さらに廊下や洗面、トイレなどは使いやすいよう、広々とスペースを取った。
「扉は全部引き戸にしてもらいました。開き戸だと開いた時に場所を取るし、介護を経験して、将来、危険な面もあるなと気づいたんです」。
ベッドルーム、一部屋分を使ったウォークインクローゼットの入り口も引き戸に。取っ手のないドアは、閉めると1枚の壁のようになる。
「ウォークインクローゼットをたっぷり取ったので、ベッドルームには収納は設けず、代わりにワークスペースを設けました。これからふたりで家にいることが多くなるのですが、それぞれ何か作業をしたいときは、リビングとベッドルームに分かれて、ほどよい距離感で机に向かうことができます」。
この先の暮らしを見据えて
「全体に木の色に包まれているので、キッチンの面材にはあえて赤色を選んだり、トイレの壁紙で遊んでみたりしています。ショールームを回って、色々探したのがいい思い出ですね」。
今回のリノベーションに当たって、これまで買い集めてきたものもいくつか手放したそう。
「奥山さんには何度も話を聞いて頂いて、どの家具を残すのかを相談しました。リノベーションしなければ整理できなかったものもあるけれど、今回、何を選び、何を残していくかを考えるきっかけにもなりましたね。この先、夫婦ふたりで心地よく過ごしていけそうです」。