人が集い、輪が広がる北欧にインスパイアされた
上質で普遍的な暮らし
緑豊かな都心の静謐空間
国立の施設や広大な公園が点在する都心の一等地。広い空と深い緑に囲まれたエリアに建つ築40年超のマンションの1室を、森藤さんご夫妻は1年半程前にリノベーションした。
「もともと社会人になったら家を持ちたいと思っていました。資産性のことを考えて中古マンションを検索し、35軒ほど内見したのですが、その中で気に入ったのは3軒。ここはそのうちの1軒です」と夫。
3面に開口があり、隣地の庭が借景になる83㎡の空間だ。
「2階なのですが、建物が隣接せず閉塞感がなかったことなどが決め手でした。春は桜、冬は寒椿が眺められてきれいなんですよ」と妻。
リノベ済み物件含めてたくさん内見する中で、リノベ前の現況の部屋を見るのが特に楽しみだったそう。
「色々と暮らしを思い描くのが楽しくて。ここも事務所として使用されていて、初めはボロボロで暗い空間でした。でも廊下をなくしたらよくなりそうだな、などイメージが膨らんでいきました」(妻)。
北欧の豊かな暮らしに憧れて
とはいえ、予算はオーバーしていた。
「それなら逆にお金をかけて、ハウススタジオとして貸し出すことで家にも稼いでもらおうと考えました。借り手に選んでもらうためには、他と差別化できないといけないので、全てにこだわりを持って計画しましたね」。
物件購入から設計施工までをワンストップで任せられるグローバルベイスにリノベーションを依頼。
「インスタグラムを参考にしていたのですが、気になった物件はグローバルベイスさんのものが多かったんです。その中でも、ユナイテッドアローズ社が関わるプランを選択しました。好みのインテリアを集めてつくると、どこか手作り感で出てしまうと思うんです。そんなに自分のセンスを過信していないし(笑)、自分たちの家としてもハウススタジオとしても、プロに監修してもらいたいと思いました」(夫)。
ユナイテッドアローズ社のプランの中で、北欧をテーマとしたコンセプトのPLAN Cに釘づけになったのが妻。
「学生時代からよくデンマークに行っていて、北欧の暮らしのあり方に魅了されていました。古いものを普遍的に大切にする考え方や、長い冬を自宅で家族とゆっくり過ごすことなど、まさに私が理想とする北欧の暮らし方がコンセプトに書かれていて。もうこれしかないと思いましたね」。
“家族が自然とつながり、心豊かに暮らせる家”をベースに、カウンセリングを繰り返しながらカスタマイズしていった。
コミュニケーションを生むLDK
「1LDKにすることは、初めから決めていたんです。ふたりとも田舎で育ったので、LDKが狭い東京の住まいには違和感があって」。
40㎡を占めるLDKには、2m90cmもの大きなペニンシュラキッチンが構える。
「前の家は壁付けキッチンでリビングから離れていたのですが、ペニンシュラにしたことで会話をしながら調理ができるようになりました。人を呼んだときも、交流できるのがうれしいです」。
完全造作のキッチンには、スウェーデンのASKOのガスコンロ、オーブン、食洗機を指定。天板や壁にあしらわれたサイルストーンの大きな石目模様が、広々とした空間にマッチしている。
「床のヘリンボーンや、腰壁とドアのモールディングなど、自分たちでは思いつかないことも提案していただきました。初めはもっとモダンな北欧テイストが提案されるかなと思っていたのですが、伝統的なヨーロッパの雰囲気が出て、良かったと思っています」。
ピンタレストなどを参考にコーディネートしたリビングは、洋書の1ページのようだ。
「実家から茶系のソファを持ってきたのですが、大きくて存在感があるので、リビングのカラーコードはこれに合わせて茶・白・シルバーに統一しました。ほっこりした感じになりすぎず、ちょっとスタイリッシュさが感じられるように意識して、コーディネートしています」。
家にいる時間が幸せ
ヘリンボーンの床は、バスルーム前の廊下を通ってベッドルームまで続いている。コストはかかっても、空間全体に統一感を持たせることにこだわった。
「スタジオ貸しをするときに、奥の部屋に鍵をかけられるように扉を2枚にすることをリクエストしました。モールディングが施された造作のドアも、ずっしりとして重厚感が感じられるのがいいですね」。
ベッドルームにはウォークインクローゼットとワークスペースを併設。ふたりで在宅ワークするときは一人だけここに籠って、ほどよく距離を取ることもできる。ベッドルーム側にまとめられたバスルーム、洗面などの生活インフラにも、ホテルライクな雰囲気が流れる。
「洗面には“見せる収納”は絶対設けたくないとお伝えしたところ、正面から見えないように棚を設けて下さいました。収納には微妙なニュアンスのピンク色の面材を使うなど、プロならではの細かな提案もありがたかったです」。
非日常感がありながら、ベーシックで飽きのこないインテリア。この空間で過ごすようになってから、暮らし方も変わっていった。
「最近はハウススタジオというよりも、プライベートで人を呼ぶことが多いですね。定期的に行っている華道教室だけでなく、料理教室、金継ぎ教室、チャリティーイベントなどを開いていて、興味のある人達が集まってくる場になってきました。今は自分たちの心が向くものに対して、この家を提供していくことが楽しくて。家が心にも豊かさを与えてくれています」。