シンプル&ミニマルを追求“隠す”をテーマに無駄をカット
細部まで計算し尽くした白い箱
リノベを経験しておきたかった
白&グレーのカラーと木目で統一された、無駄なもののないシンプルな空間。ここに暮らすのは、nuリノベーションでアドバイザーを勤める早見将秀さんと、その妻・理沙さん。
「結婚を機に、家を買うことを考え始めました。資産性の面もありましたが、自社のサービスを提供するにあたって、リノベーションを経験しておきたいと思ったんです」。
家族が増えたときの住み替えなども想定し、売却しやすい駅近・新耐震の物件を検索。初めて内見した当時築36年のマンションの1室を即決した。
「もともと住んでいたエリアだし、都心に近いのに商店街もあって暮らしやすいんです。LDKを正方形に近い形にできるな、と思ったことも決め手でした」。
学生時代は建築を専攻。「Casa BRUTUS」などを愛読していたこともあり、空間のイメージは固まっていた。
「決めていたのは極力シンプルな空間にすること。あまり作り込みすぎると飽きてしまうし、ミニマルに仕上げて、あとはその時々に、好きな家具や雑貨でコーディネートできたらと考えました」。
nuリノベーションの設計デザイナーと打ち合わせを重ね、3パターンのプランをベースに、こだわりを追求した。
家具として魅せるキッチン
「家にいる時間が長いのでリビングは広く取り、さらにL字型のソファを置くために、きれいな四角形のLDKを目指しました」。
17畳のLDKは白い箱のよう。シャープなラインで統一された、すっきりとした空間だ。
「壁の位置を検証しながら、ラインを揃えていきました。壊せない梁の高さに合わせて棚を設定するなど、細かく計算しましたね」。
壁付けキッチンは当初からイメージしていた。4mの1辺を使ってダイナミックに造作。
「キッチンは家具として見せることを意識しました。壁はタイルを選びましたが、“タイル貼ってます”みたいにはしたくなかったです(笑)」。
大判のタイルを使って目地をできるだけ少なく、さらに極力細く入れて、目立たせないように。
「キッチン台は当初、オールステンレスを考えていたのですが、メンテナンス面から妻が却下。代わるものを探していたときに、デザイナーから“ビールストーン”を教えてもらいました」。
住宅事例ではまだあまり使われていない“ビールストーン”に、実験的な意味でも挑戦。
「自分の好きな大きさや色の石を入れることができるんです。大きい粒だとうるさいし、黒い色味が入ると全然イメージと違うので(笑)、なるべく白とグレーっぽい色を混ぜてくださいと。サンプルを取り、現場で職人さんにひとつひとつ確認しながらつくってもらいました」。
ステンレスの水栓は、光の鈍いマットなサテン仕上げを。素材やパーツなどは、色々なショールームを回り、すべてスプレッドシートを作ってリスト化していたという。
ホテルライクにまとめた生活スペース
「内見時に玄関が狭いなと感じたのと、廊下や扉は要らないと思っていたことなどを、間取りに活かしました」。
当初の倍以上に拡げた土間を上がると、LDKへの通り道にオープンに設けられた洗面&ランドリーが。
「廊下は無駄だと思っていて、何か機能を持たせたいと思ったんです。入れたかったMieleの洗濯機の高さに合わせて、洗面台から天板をつなげ、全体がボックスになるようにデザインしています」。
鏡はサイズに合わせてワイドに造作。ライン照明に照らされたすっきりとした空間は、LDKにもバスルーム&ベッドルーム&WICにも、シームレスに接続している。
「ベッドルームは寝るだけでいいので、ダブルベッドを置けるスペースのみ確保しました。フレームを置いてしまうと圧迫感があるのでマットレスにして、その代わりに床レベルを15cm上げています」。
コンパクトにまとめられた生活インフラスペースは、ホテルライクに洗練されている。
「動線もいいので使いやすいし、朝の支度がラクになりましたね」。
余計なもののない空間の心地良さ
そもそものコンセプトは「stealth」。家電などはビルトインしてさり気なく隠すことで、スタイリッシュでありつつ居心地の良さも叶えた。
「例えば、エアコンは見えるとどうしても生活感が出てしまうので、WICの天井に隠すように取り付け、リビングに風を送るようにしました」。
キッチン脇の壁の上部にある近未来的な3つの穴は、エアコンの吐出口。コストが嵩みながらもこれは譲れなかったのだそうだ。
「天井には照明も付けたくないと思っていたところ、デザイナーから梁に沿わせるように細いライン照明を付けることを提案されました。すっきりとしていて気に入っています」。
余計なもののないラインの揃った空間は、空気の清涼感も感じさせる。テレワークが中心だという妻・理沙さんは、
「家で働くのが楽しくなりました。私からはキッチン台の素材と、洗面台などを高めに設定することをリクエストしたくらいで、後は夫がすべて計画しましたが、とても快適なので休日もソファでゆっくり過ごしています」。
友人を招くことも多く、大人数でキッチンに立ち、料理をすることも。モダンでスタイリッシュな空間で、都心での暮らしを満喫している。