50㎡未満のお一人様リノベのべ150人のDIYで作り上げた
人の集まる場所“マリコテ”
150名で作り上げた場所“マリコテ”。
空間設計士の水村真理子さんは、1年前に築45年のマンション物件を購入した。1LDKだった間取りを、小上がりスペースのある開放的なワンルームにリノベーションして暮らしている。
「仕事柄、人のために設計することはありますが、自分のために設計をしたことはなかったです。いつかは自分で設計した家に住みたいと思っていました。そんな時にたまたま友人がインスタグラムに投稿した物件情報を目にして、ここいいかも!と、すぐに内見を申し込みました。以前ここに住まれていた方がインテリアデザイナーをされていたようで、内見したときのインテリアがすごく素敵だったんですよね。そういう方の住まいを受け継げるというのも嬉しかったです」と話す、水村さん。
水回りや床など、自分ではできない大掛かりな工事は業者に依頼。壁や建具は下地のまま引き渡しをしてもらい、仕上げの塗装や家具はDIYで仕上げた。
「この貴重な体験を独り占めしてはもったいないと思い、SNSでDIYの過程を公開することにしました。すると興味をもってくれた友人たちが、DIYを手伝いたいと集まってくれ、人が人を呼び、結果的にのべ150人もの人が家づくりに参加してくれました。平日は仕事終わりから終電まで、休日は昼から夕方まで、みんなで家を作り上げた時間はとても楽しかったです」
当初、水村さんの名前からとって“真理子邸”と呼ばれていたこの場所は、いつしか略されて“マリコテ”に。専用のInstagramアカウント『@malycote』を立ち上げて、家づくりの過程を少しずつ公開している。
リノベのテーマは、“人を招くための家”。
「以前暮らしていた賃貸物件は狭くて、なかなか人を呼べませんでした。だからこそ、みんなが気軽に集える場所をつくりたいと考えていました」
そう話す水村さんは、家の至る所にゲストがリラックスして過せる工夫を施した。
まずは床に敷いた羊毛製のカーペット。大阪『堀田カーペット』でオーダーしたこだわりのウールのカーペットだ。夏は通気性がよくさらりと、冬は保温性がありほっこりと温かい。
「思い切って玄関から敷いたのは正解でした。ずっと椅子に座っているのは案外疲れるから、みんな時間が経つにつれて、下へ下へと重心が下がっていき、最後は床に座ってくつろいでくれます。裸足になってリラックスする人や、おもむろにストレッチを始める人もいるんですよ」
そしてLDKの中心には、DIYで作った大きめの円卓を置いた。
「スツールを使えば、最大8人までテーブルを囲むことができます。角がないので、好きなところに自由に椅子を置いて使えるのは、円卓ならではの魅力だと思います」
さらに、LDKには畳の小上がりを設けた。夜は寝室としても使っている。
「夜にしか使わない個室の寝室って、もったいないなと以前から思っていました。間取りはワンルームですが、畳の小上がりを1部屋にカウントして、1LDK の感覚で使っています。小上がりの横に設けたデイベッドは脚を伸ばして寝転べるサイズなので、人が泊まりにきた時にはセカンドベットとして使っています」と続けた。
畳やアンティーク家具の合う、ピンクベージュの壁。
「何年も前から住んでいたかのような空間を目指しました。畳やアンティーク家具の合う空間をつくっておけば、どんなものを置いても前からあったように馴染んでくれるんです」と、話す水村さん。
造作家具やフローリングは、古材風になるようダークブラウンに染色。その色に合うよう、リネンのカーテンや濃い緑の観葉植物を選んでいった。壁の塗装には少しピンクを利かせて。
「リネンの生成りと、家具のダークブラウンを繋いでくれるように、壁はピンクを混ぜたベージュにしました。一般的には壁のDIYは塗るだけが多いと思いますが、その前からやりたかったので、下地の状態から引き継ぎました。目地をパテで埋めてヤスリで擦って‥‥その工程を繰り返して、やっと塗装まで辿り着きました(笑)」
今後はその壁で映画などを観られるよう、小上がりにプロジェクターを設置する予定だ。
「DIYの様子を動画で記録していたので、近いうちに編集して上映会をやりたいんです。それ以外にも、お茶会やソイキャンドルづくりなどのワークショップを企画していて。みんなの得意なことや、やってみたいことを実現しながら、自分でもこの家のいろんな使い方を見つけていきたいです」と笑顔で締め括ってくれた。