インテリアスタイリストの家 プロは住みながら 部屋を変化させる

インテリアスタイリストの家プロは住みながら
部屋を変化させる

小さな違和感を楽しむ

インテリアスタイリスト/CIRCOWORKS(チルコワークス) の守 真史さんの住まいは、1970年代に建てられた目黒区内のヴィンテージマンション。
広々としたルーフバルコニーと、前のオーナーが隣り合う2戸を内部の仕切り壁を取り払って1戸にしたユニークな造り、リノベーション前提の状態で売りに出ていたことなどが購入の決め手になった。ここに大学の建築学科で知り合った奥様と、7歳と2歳の2人のお子さんの家族4人で暮らしている。

9年前にここに越してきてから、何度も気分に合わせてDIYを楽しんでいる。
「リビングの棚をDIYで作ったり、壁の色は紫、カーキ、グリーン、イエローと何度も塗り変えています。天井は入居当初はコンクリート現しでしたが、部屋が明るく感じる白に塗り替えました」

全部がまとまりすぎないよう、色のトーンを合わせつつ、ドキリとする遊び心を加えて楽しむ。
「DIY感のあるRAWな棚に、ギラギラの鏡を合わせたり、妖しさを感じるグリーンのライトを置いています。
小さな違和感を敢えて試してみて、意外にハマるととても楽しいです」

テラスに面した4連の窓をひとつつぶしてL字型の棚をDIYし、ゆったりとくつろげるコージーなリビングを作った。アーティスティックな大型のミラーを置くことを想定して棚をデザイン。ソファは三脚ともカッシーナ。三代目となるラグは白をチョイス。「子どもが小さいので白はリスキーかなと思ったのですが、思い切りました (笑) 。無染色のウールそのままの色です」

テラスに面した4連の窓をひとつつぶしてL字型の棚をDIYし、ゆったりとくつろげるコージーなリビングを作った。アーティスティックな大型のミラーを置くことを想定して棚をデザイン。ソファは三脚ともカッシーナ。三代目となるラグは白をチョイス。「子どもが小さいので白はリスキーかなと思ったのですが、思い切りました(笑)。無染色のウールそのままの色です」

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赤い電球のホログラムを使った照明器具はインゴ・マウラーのデザイン。中央のライトはアッキーレ・カスティリオーニ。「部屋のコーナーにポイントを作ると、そこに視線が集まり、自然と空間に広がりが生まれます」

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目の高さのオープンな棚に、インテリアのスパイスとなる小物を飾っている。建築的な要素を持つバッグは守さんのデザイン。

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前職のカッシーナ・イクスシー時代に購入したリートフェルトのアームチェア。「初めてのボーナスで買いました。思い出がたくさん詰まっている一脚です。実際に座ると包まれるような座り心地です」

曲げガラスの花瓶など、友人のフォトグラファーの作品の前に、守さんがデザインしたオブジェが飾られている。

曲げガラスの花瓶など、友人のフォトグラファーの作品の前に、守さんがデザインしたオブジェが飾られている。

アートを飾るように照明器具を選ぶ

壁の色、照明器具、棚やソファ……。インテリアのマイナーチェンジを楽しんでいる守さん。
「完璧に作り込まず、余地や抜け、手を入れる隙を作っておきます。間取りは変わらなくても、部屋の雰囲気をガラリと変えることができます」

ダイニングテーブルの上の照明器具は2代目。
「照明器具はアートに近い存在感を持っています。
特にインゴ・マウラーの照明が大好きで、リビングやトイレにも使っています」

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チェリー材にブロンズメッキのスチールの脚を組み合わせたオリジナルのダイニングテーブルは、1200×2200mmと大型サイズのものを製作。「特に奥行きに余裕があるテーブルは、空間をゆったりと感じさせます」

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ダイニングテーブルの上の照明はオルーチェのPleateau-478。穴の空いたアクリル版の上にボール状の照明を載せるユニークなデザイン。ボールを置く場所は自由に変えられる。

立体感のあるラグ。「ネットで頼んだのですが、実物を見て初めて、こんなにボコボコしていることがわかりました (笑) 」

立体感のあるラグ。「ネットで頼んだのですが、実物を見て初めて、こんなにボコボコしていることがわかりました(笑)」

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エントランスを入ると正面に抜けの良い景色が広がる。部屋の広さが86㎡、テラスが60㎡ある。

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天気がいい日には富士山を見渡せる広々としたルーフバルコニー。ウッドデッキやソファはDIY。デイベッドはマイオリ。色のトーンはグレーに。

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広々としたバルコニーでは三輪車の練習や、夏はプール遊びを楽しむ。

キッチンは異素材組み合わせの実験場


「僕にとって、自宅はある意味、仕事の実験場になっています」
キッチンは思い切ってデザイン。
「石、ガラス、木、ステンレスと、様々な素材を組み合わせています」
吊り戸棚は光沢感のあるガラス素材。キッチンカウンターの下は薄くスライスした石を使っている。

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5年前にキッチンにブラウンの吊り戸棚を作った際に、写真左の壁に掛けた自身で制作した作品の背景色も茶系に塗り直した。

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吊り戸棚の面材はガラス、下の扉にはサビ塗装を施した。「ブラウンの中でうまく濃淡をつけると、異素材の組み合わせでも不思議とまとまります」

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器のブランド『MORI』のコンセプターを務める。美しいデザインながら、デイリーに使えるのがうれしい。

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ガラス作家とコラボレーションして作った器。ガラスそのものの存在感が美しい。

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ワークスペースのシェルフは、ディーター・ラムスの名作ヴィツゥの606ユニバーサル・シェルビング・システム。「廊下は通路としての役割しか果たさないのがもったいないので、幅を広くとって書斎の機能を持たせました」

風が通るベッドルーム

ベッドルームとリビングルームの間の壁は黒のルーバーに。
「ベッドルームの明るさをワントーン落としたかったのと、ソリッドな壁を作りたくなかったのでルーバーの仕切りにしました。風通しがいいので、ベッドルーム用のエアコンは不要です。朝はルーバー越しにゆっくりと明るくなるのもいいですね」
ベッドルームの天井には照明器具をつけていない。低い位置にブラケットライトをつけることで落ち着いた雰囲気に。



「リノベーションした時が完成ではなく、気分に合わせて壁や天井を塗り替えたり、家具を入れ替えたりソファの色をチェンジしたりと、住まいをもっと楽しんでみるのはいかがでしょうか」

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色のトーンを合わせながら、遊び心を加えるのが守さん流の仕事術。

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黒のルーバーの建具の奥がベッドルームになっている。ルーバーの角度はリビングからの視線を考慮しつつ、光と風が通り抜け、ゆるやかにつながる。

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リビングとベッドルームをルーバーで仕切ることでほどよい暗さに。ベッドはヘッドボードが柔らかなクッションでできたカッシーナのもの。

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ベッドルームの奥にウォーキングクローゼットがある。パンチングメタル素材で仕切り、風通しがよい。

トイレの壁のペイントはDIY。照明はインゴ・マウラー。「閉ざされた空間であるトイレのインテリアは、より自由に遊ぶことができます」

トイレの壁のペイントはDIY。照明はインゴ・マウラー。「閉ざされた空間であるトイレのインテリアは、より自由に遊ぶことができます」

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イサム・ノグチの『AKARI』で出迎えてくれるエントランス。玄関ドアに貼られた家族写真から、この家の変化の歴史を知ることができる。

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