空間をフル活用するリノベスカイツリーのお膝元で
デザインも居心地も満喫して暮らす
建築の審美眼で見つけた住まい
間近にスカイツリーを眺め、浅草寺も徒歩圏内というロケーションに建つ築20年ほどのマンション。「下町の雰囲気が好きで、これまでは両国や浅草橋などにも住んできました」と話すTさん一家は、約4年前にこちらのマンションに引っ越し、スカイツリービューを楽しみながら暮らしている。
中古マンションを購入してリノベーションしたいと考えていたTさん一家は、「リビタ」に相談してこちらの物件を見つけ、建築設計事務所「A+Sa(アラキ+ササキアーキテクツ)」の佐々木高之さんと共にリノベプランを練りながら、自分たちらしい住まいをつくりあげた。
Tさん夫妻は、同じ大学の建築学科出身。建物やデザインを愛する2人は、この部屋を選んだ決め手を、専門的な視点を交えて振り返る。
「内見にきたときの第一印象は、窓が大きくて日当たりがよく、スカイツリーがとてもきれいに見えるお部屋。間取りも内装も『普通』でしたが、平面形状が長方形ではなく正方形なこと、斜線制限で部屋の上部が斜めにカットされていること、バルコニーに面した窓が掃き出し窓ではなく床から少し立ち上がっていることが面白くて、大きく化ける可能性を感じました」。
個性の違う3つの空間が寄り添う
T氏邸の占有面積は約65平米とコンパクト。元々は空間が小分けになっていて、リビングダイニング、キッチン、2つの個室が独立していたのを、リノベーションで大きく変貌させた。
「まず、独立していたキッチンを中央のリビングスペースの中に取り込み、LDKの両側に、小上がりの和室とこもり感のあるラウンジスペースをつなげました。この他には、主寝室が一つだけ。3人暮らしにちょうどよい間取りにして、無駄なスペースが生まれないようにしました」と話すご主人に、「前の住まいは使わなくて物置になっている部屋があったけれど、今は全部の空間を大切に使えている満足感があるんです。65平米でも『広い』と感じています」と奥さまもうなずく。
暮らしにオリジナリティを添える小上がりの和室は、「使い勝手が良い和室が欲しい」という夫妻の希望と「窓の下枠のレベルに合わせて床を上げてみたらどうか」という佐々木さんの提案によって、生まれたという。
「子どもが自由に遊べたり、取り込んだ洗濯物を座って畳めたりして、とにかく便利です。畳の下は大容量の収納にしていただいたので、押し入れ代わりにしています」(奥さま)。
一方のラウンジ空間は、床にモスグリーンのカーペットを貼り、壁は落ち着いたトーンのグレーにして、ちょっと大人の雰囲気に。和室、LDK、ラウンジと、それぞれ雰囲気の異なる空間が直線上に並ぶプランについて、佐々木さんはこう語る。
「料理をしたり勉強をしたりリラックスしたり、家族みんなが違うことをしていても、心地よく一緒に過ごせるように提案させていただきました。空間ごとに仕上げを変えているので、気分も自然と切り替わります」。
キッチンは楽しくてオープンな場所に
「2人とも、美味しいお料理をつくったり、美味しいお酒を飲んだりするのが大好きなんです」と笑うTさん夫妻。リノベーションにあたっては、「キッチンをどうしたいか」をじっくり考えたという。そして出来上がったのが、リビングの中央に設けたオープンなキッチンだ。
「キッチンからもスカイツリーを眺めたい、娘やゲストとも一緒に料理をしたい、料理をする人が孤立しないようにしたいと考えて、佐々木さんに提案していただきました」(ご主人)。
暮らし始めると、理想通りの開放的なダイニングスペースになり、料理もいっそう楽しくなったという。
「我が家はお客さんや娘の友達がよく遊びに来るのですが、みんな自由にキッチンに入ってきて、冷蔵庫も勝手に開けて使うんです(笑)。そんな『みんなのキッチン』になったことが、本当にうれしいです」(奥さま)。
大好きなディティールを自宅に再現
「Tさんとの住まいづくりで印象に残っているのは、ディティールへのこだわり。建築のプロでいらっしゃるので、普通のお客さまが気にしないような細かいところまで、じっくりと打ち合わせをしたのが楽しい思い出です」と振り返る佐々木さん。ご主人にはかねてから温めていた希望が色々とあり、それを一つひとつ叶えていったという。
「鍵を置くためにつくったニッチの形状をル・コルビジェのロンシャン礼拝堂風にしたり、吉村順三が好んで使った堀商店のレバーハンドルをドアにつけたり、『全ネジ』というボルトでインダストリアルな雰囲気の吊り戸棚をつくったり、寝室へのドアを枠なしにしたり。“マニアック”なこだわりをたくさん実現できて、大満足です」(ご主人)。
間取りはもちろん、収納や細かいデザインまで、自身のスタイルにフィットするよう考え抜かれたT氏邸。「居心地の良さ」を体現した住まいで、家族の時間が紡がれていく。