持ちビルをリノベーションセカンドライフを快適にする
ミニマルな一人暮らし
10年前に自分で建てたビルをリノベーション
都内のビルの一室に暮らす、Mさんを訪ねた。夫の他界をきっかけに義実家を出て、2012年に2人の子どもと住むためにこのビルを建設。1・2階を賃貸に、3階から5階までを居住空間にして、家賃収入でローンを払って暮らしていた。10年目になる年に、リノベーションを決意。
「息子も娘も結婚して、同居している娘夫婦には子どもが生まれました。今年2人目が産まれることがわかり、今の部屋では手狭になると思ったんです。同じタイミングで1階の入居者が退去したこともあり、私1人で1階へ引っ越すことを決めました。66歳になって、3階までの階段の上り下りも辛くなってきたんですよね」と話す、Mさん。
ビルの建築当初から、1階の部屋はいずれ自分で使おうと考えていた。実際に住むとなった今、もっと快適な部屋にしたいと感じるように。このビルの建築を担当した増田政一氏にリノベーションの設計を依頼をした。
部屋全体の収納量を倍以上に。
リノベーションで最もこだわったのは、収納とキッチン。たくさんある持ち物に対応できるよう、部屋全体の収納量を倍以上に増やした。たとえば、玄関には天井まである靴棚を用意。
「リビングの引き戸を引くと、靴棚が壁の中に隠れてスッキリと収納できる仕組みです。自分のもっている靴の量から逆算して、すべて収納できるように作っていただきました」
ほかにも玄関の正面には、小物を飾れるスペースのついた造り付けの棚を設け、趣味のゴルフ用品やカバンなどを収納している。
そして、普段からキッチンにいる時間が長いという料理好きのMさん。1口だったIHコンロを3口に増やし、IKEAの既製品と組み合せてキッチンカウンターを造作した。一部に既製品を使うことで、造作のコストを大幅にカット。料理中は作業台として、来客時はテーブルとしてあらゆる使い方が可能だ。
「食後は棚からティーセットを出して、お茶を淹れるテーブルにもなります。このカウンターは友人たちからも好評です」
定年後の一人暮らしはミニマルに。
寝室には壁付のクローゼットを2つ新設した。ベッドと一体型の収納と合わせると、かなり大容量の収納だ。天井まである壁付け収納を寝室、靴棚、玄関と3箇所に設けることで、51㎡という限られた空間でもスッキリとした暮らしが実現した。
そしてLDKと寝室を繋ぐ廊下には、浴室、トイレ、洗濯機がまとめられている。洗濯機は廊下の扉を閉じると、目隠しになるユニークなデザインだ。
「私くらいの年齢になると、これくらいシンプルなほうが暮らしやすいと思います。一人暮らしになってから、お友達を呼ぶ機会も増えましたね。友人を招いて、得意の中華料理を振る舞う時間が楽しいです」
同居していた娘夫婦とは、別々の住まいになったとはいえ、今も変わらず同じ建物に暮らしている。
「わたしが孫の面倒をみたり、反対に困った時には娘夫婦に頼ることができたり、お互いになにかと安心です。前よりも心地いい距離感になったのかもしれないですね」と続けた。
これまで42年間、障害者の支援施設に勤めていたMさん。一昨年に定年退職し、今は週に3日ほど保育の専門学校の講師をしている。
「週3日の仕事になって、平日にも自分の時間をもてるようになりました。ご近所に定年退職した仲間ができて、平日にゴルフに行ったときには幸せを感じましたね。ライフステージとしては非常にいい感じ。これからの人生も楽しみです」と笑顔で締め括ってくれた。