愛犬家夫妻の団地リノベ 足場材を活かした 開放感あるくつろぎ空間

愛犬家夫妻の団地リノベ足場材を活かした
開放感あるくつろぎ空間

理想の住まいは静かな環境で

横浜の山下公園に近い市街地で暮らしたのち、山口県の古民家を借りて移住した愛犬家の松野さん夫妻。しかし、3年ほどで横浜に戻ることになり、新たな物件を購入しリノベーションをすることにした。「古民家暮らしで、都会よりも自然に囲まれた生活のほうに魅力を感じるようになっていたし、犬もいて既存の物件を探すのは大変かなと思って」とリノベーションをすることに決めた理由について話す妻の郁子さん。夫の裕史さんも、横浜に戻ってきた時に心境の変化があったと話す。「市街地の方が便利でいいと思っていたのですが、山口から来ると人も車も多い。犬の散歩をしていると余計気になっちゃって」。そこで市街から離れた丘陵地に建つ築53年、95㎡のスケルトン物件を購入し2LDKにリノベーションした。
「建物は団地で、中に入ると団地感がないというギャップも楽しめます」と笑顔で話す郁子さんの言う通り、ご自宅は足場板が敷かれたおしゃれな空間が広がる。
現在2匹の愛犬と暮らす松野さん夫妻。自分たちが暮らしやすいだけでなく、一緒に暮らす愛犬たちも快適に暮らせるようにという工夫が随所に見られる。
玄関側のリビングダイニング。北側のキッチンは視覚的な広がりを持たせ、南北に窓があることで風通しもいい。

玄関側のリビングダイニング。北側のキッチンは視覚的な広がりを持たせ、南北に窓があることで風通しもいい。

窓は南向きで採光は十分。奥に見える引き戸の先が玄関。

窓は南向きで採光は十分。奥に見える引き戸の先が玄関。

リビングダイニングの奥には、アクセントとなる躯体に直接塗装した白壁があり、ゴツゴツとした無骨感が柔らかすぎない空間を作る。右側にサンルーム、左側に寝室につながる扉がある。

リビングダイニングの奥には、アクセントとなる躯体に直接塗装した白壁があり、ゴツゴツとした無骨感が柔らかすぎない空間を作る。右側にサンルーム、左側に寝室につながる扉がある。

愛犬たちが自由に走り回れるよう普段からサンルームを開放している。南向きで景色もよく「夏は緑が、秋になると葉が落ちて海が見えますよ」と裕史さん。

愛犬たちが自由に走り回れるよう普段からサンルームを開放している。南向きで景色もよく「夏は緑が、秋になると葉が落ちて海が見えますよ」と裕史さん。

サンルームから見たリビング。当初予定していなかった裕史さんのワークスペースにもなっており、天井にダクトレールを多く設置したことで、照明による空間利用の制限が少ない。

サンルームから見たリビング。当初予定していなかった裕史さんのワークスペースにもなっており、天井にダクトレールを多く設置したことで、照明による空間利用の制限が少ない。

足場板を使った広々LD空間

夫妻は山口で暮らしていたため、手掛けたSHUKEN Reとの打ち合わせのほとんどがリモートで行われた。施工中は来ることができず、初めて自宅を見たのは引き渡しの時だったという。「図面を見て話しただけだったので凄いなと驚きました。大満足でしたね」と裕史さん。
玄関から廊下を抜けると、開放感のあるリビングダイニングが広がる。空間的な横の広がりと側面の窓が視覚的な広がりを印象付け、サンルームへ伸びる奥行きが開放感を演出する。広いリビングダイニングは、仕事でアメリカに駐在していた際に、現地の広いリビングを持つアパートメントが気に入った夫妻の要望だった。
床材には足場板を使用し、全体的に淡く不規則な色合いが周りの白壁と交わり柔らかな空間を作る。当初の予定と違った使い方をしていると郁子さん。「山口の古民家で使おうと購入したものでした。私たちで塗り直して色を統一したり、削ったりして綺麗にしていたんです。でもSHUKEN Reのプランナーさんが、塗っていない裏面を使いませんかと提案してくれて」。表面は艶があってワントーン暗く、全体のバランスを考えると変えて正解だったと振り返る。足場板は視覚的な効果だけでなく、愛犬たちにとって滑りにくいという愛犬家の夫妻にとって大事なメリットもある。さらに汚れや傷が目立ちにくく、椅子を引きずっても気にならない。
日当たりの良いリビングの奥には愛犬たちの部屋としてテラスを設けた。掃除がしやすいように床材にフロアタイルを採用。リビングダイニングとの間にある、黒のアイアンとガラスのパーテーションが白すぎない空間のアクセントにもなっている。また、山口での古民家で隙間風の寒さに苦しんだ経験を踏まえ、窓にはインナーサッシをつけて断熱と防音性能を上げた。築年数が50年以上だったこともあり、全ての窓に取り付けている。

スケルトンの物件だったため、希望した奥行きのある広いリビングダイニングが実現。躯体の存在が天井の高さを際立たせる。

スケルトンの物件だったため、希望した奥行きのある広いリビングダイニングが実現。躯体の存在が天井の高さを際立たせる。

直接塗装された天井の躯体がアクセントになっている。郁子さんが椅子好きということもあり、カッシーナやフリッツ・ハンセンなどの名作が並ぶ。ダイニングにはイームズのシェルチェア。

直接塗装された天井の躯体がアクセントになっている。郁子さんが椅子好きということもあり、カッシーナやフリッツ・ハンセンなどの名作が並ぶ。ダイニングにはイームズのシェルチェア。

窓側にはミーレ社製のオーブンを取り付けた造作のカップボードを設置した。

窓側にはミーレ社製のオーブンを取り付けた造作のカップボードを設置した。

愛犬たちが回遊できるようにとキッチンと寝室にも扉を設けた。空間全体の風通しを良くし、空調効果を高めるメリットもある。

愛犬たちが回遊できるようにとキッチンと寝室にも扉を設けた。空間全体の風通しを良くし、空調効果を高めるメリットもある。

北側に位置する寝室の窓にもインナーサッシを取り付けている。ベッドでくつろいでいるのは愛犬のルナくん。

北側に位置する寝室の窓にもインナーサッシを取り付けている。ベッドでくつろいでいるのは愛犬のルナくん。

ステンレスキッチンをアクセントに

愛犬への愛情はキッチンにも見られる。寝室の扉はリビングダイニングの奥にあるが、愛犬たちが回遊できるようにとキッチンにも寝室に繋がる通路を設けた。「基本的には開けっぱなしです」と裕史さん。空気の循環にも役立ち、特に調理中のキッチンは熱がこもりがちだが、空気の流れを作ることで解消された。白壁や足場板によって全体的にほっこり感がありつつも、ステンレスキッチンの存在がソフトなインダストリアルの雰囲気も持たせる。
郁子さんは山口での生活で、害獣として駆除された鹿や猪のほとんどが活かされず処分されていることを知り、犬のおやつとしてジビエを有効利用する活動をしている。「キッチンを広めに作っていたので、おやつ作りに使うスライサーなどの機材も置けて便利です」。活動が大きくなるにつれて、裕史さんのワークスペースを想定し設けた部屋は、活動に使うものや在庫を置くユーティリティスペースに。元々テレビがあったリビングダイニングの一角が裕史さんの仕事場になった。家族の“今”に合わせ空間の使い方を柔軟に変えることができるのも、広いリビングダイニングがある松野邸だからこそ。
夫妻のお気に入りはリビングダイニングのソファに座ってくつろぐこと。「座って空間の広がりを楽しんでいます。昔は便利な市街地がいいと思っていましたが、静かな方がいいなと今は思いますね。家にいると落ち着きます」と裕史さん。賑やかな大都市の中心地から地方へ移住した経験や、これまで一緒暮らしてきた愛犬たちとの思い出が、今の住まいに詰まっている。

広めのシューズクロークは玄関と地続きになっており、クロークの下は土間として使うことができる。

広めのシューズクロークは玄関と地続きになっており、クロークの下は土間として使うことができる。

玄関から続く足場床がリビングダイニングへ空間をつなげる。躯体によって天井高が低いリビングドアを抜けると、左右、高さ、奥行きと一気に視界が広がる。

玄関から続く足場床がリビングダイニングへ空間をつなげる。躯体によって天井高が低いリビングドアを抜けると、左右、高さ、奥行きと一気に視界が広がる。

足場板の床は見た目で楽しめるだけでなく、愛犬たちにとって滑りにくく、汚れや傷が目立ちにくいという実用的なメリットがある。一緒に写っているのは愛犬のマルくん。

足場板の床は見た目で楽しめるだけでなく、愛犬たちにとって滑りにくく、汚れや傷が目立ちにくいという実用的なメリットがある。一緒に写っているのは愛犬のマルくん。

貰い手のいない犬を引き取って育てている松野夫妻。恵まれない環境にある犬たちと関わるようになりブランドを立ち上げた。

貰い手のいない犬を引き取って育てている松野夫妻。恵まれない環境にある犬たちと関わるようになりブランドを立ち上げた。

郁子さんが手がけるドッググッズブランド“The Moonlight Dog & Co.”。山口県産のジビエや魚を使ったドックフードなどを取り扱う。

郁子さんが手がけるドッググッズブランド“The Moonlight Dog & Co.”。山口県産のジビエや魚を使ったドックフードなどを取り扱う。

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