内装のプロの自邸自分が好きなものを集めて
心地のいい空間を作る
窓をデザインし直す
家具&内装デザイナーの『mentha』の渋谷南人さんの自邸。
眺めの良いヴィンテージマンションの最上階を自らリノベーションした。
「眺望の良さは、家の心地よさを決める大切な条件だと思います」
新婚旅行で行ったスイスの湖畔の宿の眺めの素晴らしさに、こう気付かされたそう。
そして家族3人で快適に暮らせる広さがあることも大切なポイント。
以上を考え合わせて、眺めの良い最上階、光と風が抜ける角部屋、広さは75㎡以上、この3つの条件で物件を探し、2年かかって見つけたのがここだった。
家の中から外を眺めたときに目に入る、絵画でいうならフレームとなる“窓”のディティールにはかなりこだわった。
マンションの共用部分であるサッシは取り替えることができないので、部屋の内側に壁を作り、既存のサッシが隠れるように工夫した。
そして、フランスのアパルトマンで使われていたヴィンテージの両開きのドアを掃き出し窓に設置し、窓のある風景をガラリと変えた。
淡いベージュの壁色が、刻々と変化する空の色を優しく彩る。
建具にこだわる
「リノベのテーマのひとつに“建具”があります。ひとつひとつ気に入ったものを探し、建具はリノベの際にすべて変えました」
先に紹介したベランダに面したフランス製の両開きのドアに加え、リビングの重厚感のあるオーク製のドアは1900年代のホワイトスターライン社のもの。
廊下に面した部屋の建具もルーバードアに変えている。
床材は寝室を除き、全面薄いグレーのマーモリウムを全面に敷いた。
「我が家は木製の家具が多いので、床をフローリングにしてしまうと木の存在感が大きくなりすぎるので、床材はマットな質感のグレーのマーモリウムにしました」
マーモリウムはリノリウムの一種で、抗菌性と抗ウイルス性に優れている。天然素材なので経年劣化も楽しめる。
ジャンルレスで自分らしく
玄関を入ると、右手にオリエンタルな空間が現れる。ここは着物のスタイリングや着付けが仕事の大川枝里子さんのアトリエだ。
「将来的には壁を立てて、個室として使うことも想定しています」。
フランスのアパルトマンで使われていた両開き窓、イギリスの重厚なアンティークの扉、世界中から集まった小物たち、デザイナーの手による家具、石のような風合いの廊下の壁……。
“好き”と感じるものがジャンルレスに集まる、渋谷さんならではの心地のよい家が完成した。