寝室を洞窟のようになめらかな曲線に包まれた
プレーンで彩り豊かな60㎡
間取りは自由に決めたい
南向きのベランダの向こうに、運河が流れる築41年の集合住宅。60㎡強の1室を、Sさんご夫妻は昨年リノベーション。大きな開口からバーチカルブランドを通して、明るい光がリビングに差し込んでくる。
「都内の色々なエリアで探していたのですが、広さや予算といった条件にここがいちばん合っていたんです。部屋数が多く管理がしっかりしていること、将来、近くに地下鉄が通ることなど資産性も考えて購入を決めました。目の前に運河があるのも、決め手のひとつでしたね」
時々、舟も通るというのんびりとした風情のあるロケーション。ネットで検索してデザインに惹かれていたnuリノベーションに、物件探しから相談して進めた。
「家を買うのなら自分たちが好きな空間にしたい、と思っていたので、リノベーションすることは決めていました。壁を取って間取りを変えられるかどうかなども、アドバイザーさんに確認しながら物件を探しました」
寝室をLDKの一部に
廊下で分かれていた3LDKをほぼ個室のない空間に。ベランダ側の一室を取り払ったことで、開口を最大限リビングに活かすことができた。
「リビングを広くしたいということはお伝えしていました。3パターンのプランを出して頂いたのですが、寝室をリビングの一部のようにしてしまう案が斬新でした」
13.4畳のLDKにオープンに接続した寝室は、奥の一面だけ深いブルーの壁紙があしらわれていて、洞窟のような佇まい。
「リビングの1カ所にベッドスペースをつくるという案もあったのですが、最終的に半個室にしました。ひとりがリビングにいても、寝室だけ照明を落として休むことができるので正解でしたね。一応カーテンレールも設置しているので、カーテンで仕切ることも可能です」
このLDKに洞窟をつくるスタイルは、nuリノベーションでも初めてのプランだったそう。R形状の低めの垂れ壁が設けられていることで、穴蔵に潜り込んでいくかのような雰囲気が感じられる。
「リビングの中で寝ることに、最初は若干不安もあったのですが(笑)。でもお籠もり感があってリラックスできるし、ぐっすりと眠れています」
曲線をあらゆる場所に取り入れる
Rの形状は土間の玄関から始まる。リビングに続く廊下の壁やキッチンの仕切り壁など、通常は直角になる部分にRをつけて、緩やかな曲線を描いている。
「ネットで海外のインテリアなど様々な事例を検索しているうちに、コブハウスを見つけたんです。四角いシャープなラインではなく、丸みのある自然で有機的な雰囲気がいいなと思い、設計デザイナーさんに相談しました」
LDKの天井を見上げると、そこにも曲線が。天井に埋め込まれたライン照明が、緩やかな曲線を描いて一周している。
「これもnuさんで初めての試みだったそうです。光量が心配だったようなのですが、夜はダウンライトをつけなくても、これだけで明かりを確保でき、とてもいい雰囲気になります」
広々とした土間には、トイレまでの動線を渡り廊下で確保。モルタルの土間の上に浮く、島のような渡り廊下を通ってトイレへ。ユニークなアイデアがあちこちに散りばめられている。
「これも提案していただいて実現しました。土間も広く使えるし、靴に履きかえなくてもいいし、気に入っています」
家具や雑貨で個性を出したい
白塗装の壁と無垢の床、やわらかなR曲線。静謐な空気感が感じられる空間だが、カラフルな家具やユニークな形状の雑貨などが、独創性を加えている。
「ちょっと遊びのあるものや見たことのないものが好きで飾っているんです。キャラクターものに弱くて、雑貨屋さんや蚤の市などで見つけては、よく買いますね」と奥様。ご主人は、
「ものに溢れた感じのインテリアにしたいんです。ミッドセンチュリーが好きで家具も購入しましたが、それだけで揃えるのも嫌で。“THE MID CENTURY”にならないよう、あえて統一感を出しすぎず、ミックスされた感じを楽しみたいです」
家のほぼ中央にあるキッチンでは、主にご主人が料理しているそう。ステンレスで造作した業務用のようなキッチンに立つと、R形状の垂れ壁の向こうに、広々としたリビング、その向こうにキラキラと水面が光る運河が望める。
「まだまだインテリアに手を加えていきたいと思っています。あまり整えすぎず、好きなものを取り入れて自分たちらしい空間にしていきたい。リノベーションで箱を手に入れたことで、楽しみが広がりました」