
マンションの中にガレージをやりたいことから考えた
趣味を楽しむリノベーション
自分たちの暮らし方に合わせて
木々が茂る中庭を挟み、何棟もの建物が立ち並ぶマンションの1室。Oさんご夫妻は2年半ほど前にリノベーションを完了した。
「以前は同じ敷地内の別の賃貸棟に住んでいて、ここは3軒目なんです。住み慣れていたし、希望に合う部屋に出会えたので決めました」
マンション内にはリノベ済み物件も何軒か販売されていた。
「オープンルームを見に行ったのですが、完成されたものだと、全てを丸ごと受け入れなければなりません。ここは理想的なのだけどここは違うな、ということが多くて」
そこで、無料相談会に足を運び、担当者との話が弾んだ「リノベる。」に、リノベーションを依頼することに。
「昔、フィンランドの会社に勤めていて、何度か現地を訪れたのですが、向こうの家はどこも素敵で、間取りなどもバラバラなんです。日本の住宅は決められていることが多いけれど、もっと自分たちの暮らしに合った空間を自由につくりたいな、と思いました」と奥様。

1993年築。2LDKの73㎡をスケルトンにして1LDK+土間のガレージに。LDKの中心にカウンターキッチンを置いた。

ベッドルームは、室内窓と扉にガラスを採用して仕切った。
半屋外のようなガレージを設置
“暮らしに合った家”を軸に考えた時、第一の希望は“広い土間を設けること”だった。玄関を入るとすぐに現れるのは、自転車の置かれたガレージのような土間。
「本来、家の外でやるようなことを、マンションの室内でやりたいと思っていたので、外のような雰囲気をイメージしています」
外壁塗装材のジョリパッドで仕上げた壁に、外灯用のライト。広々とした半屋外のような空間で、ご主人が趣味である自転車のメンテナンスをしたり、DIYで家具などを造ったり。
「自転車が分解できるくらいの広さにしたかったんです。床は、汚れを拭き落としやすい塩ビシートを敷いています。塗料を洗い流すための小さな手洗いも設けました」
土間に接続して、アウトドア用品や備蓄品を収納するストレージ、電動工具などを置いた工作室も。木製の棚や引き出し、シューズラックなどは、すべてご主人がDIYしたものだ。
「もともと工作が好きだったのですが、以前の賃貸では思う存分できなくて。ここに引っ越してきてから爆発してしまい、工具もどんどん増えています(笑)」
作業をするだけでなく、時々椅子を持ってきて、ここでお酒を飲んだりすることもあるそう。
「北側の暗くて寒い部屋を、うまく使えないかと考えて土間にした経緯もあります。室内なのだけど半分アウトドアの気分が味わえて、家の中とは違う過ごし方もできる。玄関が趣味部屋に生まれ変わりました」

10畳ほどのスペースを割いた土間兼ガレージ。石のようなテクスチャーの壁が、室外の雰囲気を出す。右手の奥が工作室で、左手奥がストレージ。

外灯用のライトにステンレスの手洗い。屋外で作業をしている雰囲気に。

バイクのウエアなどをかけておくコーナー。棚はDIYで。

ストレージ内。ご主人の衣類と日用品、備蓄品、リビングに置きたくないプリンターなど、生活に必要なもの全てをまとめておけるようにした。

DIYしたシューズラック。旅行で訪れた広島で購入した足場板を使っている。

DIYを楽しむ工作室。リモートワークもここで行う。机は、作業しやすいよう自ら補強した。

外灯ランプが凹凸のある壁面を照らし、陰影を生む。

工作室の引き出しもDIY。工具を収めやすいよう浅めに設計し、ソフトクローズにこだわった。

リビングにあるベンチは、加工した木の板に、鉄工所にオーダーした脚を取り付けてガレージで自作。プロジェクターを投影できる高さにこだわった。鳥かご下の、収納ボックスもDIYしたもの。
窓際にカウンターキッチンを
もうひとつの希望は、“ LDKを広く取る”というもの。南側の開口に面した開放的なLDKには、カウンターキッチンを中心に、明るい日差しが差し込んでくる。
「家の中でいちばんいい場所にキッチンがあると思うんです。窓側にキッチンがあるのは珍しいし、普通はここに持ってこないんじゃないかと(笑)」
カウンターは調理する人が開口を背にして立ち、座る人が開口側を向いて、外の景色を楽しめる配置に。カフェのようなメニューも用意されていて、お店でもてなされるかのような気分になれる。
「カウンターにすることを決めたときに、シンクとテーブルの高さをフラットにしたり、調理する人と座る人の目線の高さが揃うようにすることなども考えました。お酒が好きでカクテルにはまっていた時期もあり、ここで過ごす時間が楽しみなんです」
料理は主にご主人が。ゴミ置き場も、引渡し時にはスペースだけを開けておき、ゴミの量や使い勝手を考えて、後からゴミ箱をDIYしたのだそう。
「窓際には天井に梁の出たスペースがあって、ここをどう使おうかと悩みました。窓から見える景色が、この部屋を購入した決め手でもあるので、ここには椅子を置き、リラックスできるスペースにしました」
パーティー好きのため、たくさん揃えている食器を収める棚も、設えたようにぴったりと収まった。ケヤキの木が美しい中庭の景色が目線の先に広がる、癒しのコーナーができあがった。

ベッドルームを仕切ったガラスが、広がりを感じさせるリビングダイニング。ユニークな形のテーブルは柏木工。

日溜まりに配置されたカウンターキッチン。目線が揃うよう、作業側は1段下げられている。天板には水に強いメラミン化粧板を使った。

ご主人がショールームで選んだキッチンは、クリナップのCENTRO。調理しやすい高さにもこだわった。

造作したカウンターにはタイルをあしらった。ペンダントライトは目黒のPOINT NO.39で購入。

板を研磨し、DIYした食器棚。予め壁に下地材を入れてもらった。

奥行きを活かすためにDIYした棚。棚板が引き出せる便利な仕様。

さり気なく置かれたカフェメニュー。紅茶缶を花器にアレンジ。

使いやすさを考えて、入居後にDIYしたゴミコーナー。オーブンのトレイ、ゴミ袋専用のスペースなど、設計が細やか。

中庭に面した窓辺のリラックスコーナー。IKEAの食器棚が奇跡的にぴったり収まった。iittalaなど、奥様が好きな北欧の食器を愛でる。
一人の時も二人でも、充実する間取り
室内窓の向こうのベッドルームは、一面をブルーグレーの壁紙に。
「奥行きが出て広がりが感じられると思います。リノベーションの大まかなところは主人が決めましたが、色や素材、デザインなど細かなところは、私が決めました」
という奥様の好みが反映されたのは、土間から続く廊下のスペースを活かした洗面。お気に入りのタイルをヘリンボーン状に貼ったデザインが印象的。
「私の好みを活かすと、少しかわいくなってしまって。そこでベッドルームとウォークスルークローゼットの向こうにある個室は自分専用にして、好きなテイストで統一しました」
窓がない個室を明るく見せるため、ややピンクがかった壁紙を採用。モールディングを施して、少しクラシカルな雰囲気に仕上げた。
「ここだけは自分好みにさせてもらっています。逆に土間がインダストリアルなので、LDKはオーソドックスに。家具や小物でアレンジできればいいと思いました」
土間ではご主人が趣味を、個室では奥様がリモートワークや過ごしたい時間を。それぞれの居場所を確保しながら、広々としたLDKでともに食事を楽しんだり、人を招いたり。充実した暮らしぶりが想像できる。
「基本的に生活が好きなんです。料理もお酒も好きだし、それぞれが趣味にふける時間も大切にしたい。やりたいことが実現できるように考えた空間なので、我慢することがないのが、いちばん大事なポイントですね」

ベッドルームには、一面にブルーグレーの壁紙を。マティス展で購入したポスターが映える。

昼間はLDKから光が入って明るい。

ベッドルームから続くWTC。ここには奥様のものだけを収納している。

WTCの向こうの奥様の個室。手前の壁付けのドレッサーもご主人がDIY。廊下側にも回遊できる。

名古屋モザイクで選んだタイルをヘリンボーン貼りにした洗面。常に花を飾るのを欠かさない。
