
同性カップルのマンションリノベ事情暮らしのコンセプトを突き詰めて、
納得できる形をリノベで実現。
コロナ禍を機に賃貸同棲から、マンション購入を検討。
TさんとHさんは、同性パートナー。2023年にこのマンションを購入し、フルリノベーションして暮らしている。ここへ越して念願だったシェットランドシープドッグのリッカちゃんをお迎えした。
「以前は賃貸アパートで同棲をしていました。しかしコロナ禍を機にリモートワークが常態化すると、50㎡での2人暮らしに限界を感じるようになったんです。お互いのオンライン会議が重なる日は、どちらかが浴室で仕事をするなんていう事もありました」と話すのは、Tさん。
今よりも広い家に越すなら、家を購入する方が良いと考え、戸建てや新築マンションを検討しはじめたそう。
「会社の同僚から、インテリア好きの私にはリノベーションが合うのでは? とアドバイスをもらったのがリノベのきっかけです。建売戸建てや新築マンションにしっくりきていなかったこともあり、リノベだったら自由にやりたいことができるかも?と思いました。そこで、Instagram上で相互フォローだったリノベ会社『リノベる。』さんにお話を聞いてみようとお伺いすることに」
実際に話を聞いてみると、物件の広さや駅近などの条件から入るのではなく、暮らしのコンセプトを固めていくところからプランニングする同社の進め方に深く共感したそう。
「どういう場所で暮らしてどんな気持ちになりたいのか?誰とどんな風に時間を使いたいのか?など、丁寧にヒアリングしていただきました。そこから理想の暮らしを叶えるために、必要な条件へと落とし込んでいきました。その進め方が僕たちにはとても合っていたんですよね」と話すのは、パートナーのHさん。

築13年、総面積は約73㎡。

寝室を背に、部屋全体を眺めて。

3方向に窓のある、明るいリビングダイニング。

ダイニングテーブルは「HAY」で購入。

食器棚は「ACME FURNITUIRE」のもの。

リビングの窓際にL字型のベンチを造作。

ベンチの内部は収納になっている。
婚姻関係にないパートナーと、
住宅ローンを組む手法。
同性パートナーの立場で家を買うには、想像以上にハードルが高かったと話すお2人。まず立ちはだかったのは、「ペアローンは組めるのか?」という問題。日本では法律上、同性パートナーは婚姻関係にある夫婦として認められていないため、金融機関によってはペアローンを利用できないこともある。
「ペアローンが組めるかどうかは、特に悩ましかったです。そんな中で『リノベる。』さんは、私たち2人の関係性にしっかり向き合ってくれて、任意後見契約を活用したペアローンの道筋を探ってくれたんです。ここまで自分たちに寄り添ってくれるなんて、本当に信頼できる専門家だと思いました(Tさん)」
任意後見契約とは、本人が将来の判断能力低下に備えて、信頼する相手を後見人として指定する制度のことだ。これを利用すれば、法律上の親族関係がなくても、金融機関によってはローン審査を受けられることがあるという。同社はその制度の活用を提案し、専門家とも連携しながら、2人が安心して住宅ローンを組めるよう尽力してくれたそう。

料理をしながら会話を楽しむため、オープンキッチンに。

キッチン奥の通路の先は、左が浴室とトイレ、右がクローゼット。

キッチン腰壁と同じラワン材で、バックカウンターを造作。

キッチンは「LIXIL」のRICHELLEを採用。

ペンダント照明は「FLOS」のGlo-ball。

Tさんの作る朝食を撮影し、1冊にまとめたZINE。Instagramアカウント@hokorobu_flowersにて日々の暮らしを発信中。

シェットランドシープドッグのリッカちゃん2歳。ちょっと人見知り。

寝室の上部にガラス窓を設置し、開放感を演出。

グレイッシュな壁と床で統一し、落ち着いた印象に。
2LDKから1LDKへ。
週末はホームパーティー、平日は在宅ワーク。
週末は友人を囲んで賑やかにホームパーティーをする一方で、平日は在宅ワークに集中できる静けさを求めた。その両面を兼ね備えた家づくりが今回のリノベーションの大きなテーマとなった。これを実現するために、元々2LDKだった空間は1LDKへと再構築された。
「家の中心にオープンキッチンを据えました。休日に複数人のゲストが集まった時には、キッチンで料理をする人とリビングでくつろぐ人が、みんなで一緒に会話できる空間づくりを意識しました(Hさん)」
また、35㎡ほどの開放的なLDKには、ゲストが各々の時間を好きに寛げる工夫が随所に施されている。
「7〜8名が集まっても窮屈さを感じさせず、食事や会話を自然に楽しめるLDKを目指しました。ダイニングテーブル、ソファ、ベンチ、キッチンと、色んな “居場所” でゲストが自由に寛いでくれるのが嬉しいです(Tさん)」
そして平日は2人とも在宅勤務のため、週のほとんどをこの家で過ごす。玄関を入ってすぐのところには、2人でデスクを並べられる5㎡ほどのワークスペースを設けた。
「お互い仕事に集中したいので、どちらかがワークスペースを使って、どちらかはLDKで作業することが多いです。そういう意味でも、家に居場所が多くあるのはありがたいです(Hさん)」
暮らしに合わせてオンとオフの切り替わる空間設計が、2人の生活にしっくりと馴染んでいる。

寝室横は、2人のワークスペース。

3mの板を渡したデスクと、その背面には本棚を造作。

天井まで壁を立てずに寝室と空間を繋げることで開放感を演出。

USMハラーの棚には、季節の花やお気に入りの絵葉書を飾って。

玄関スペースはモルタル敷きに。コンパクトな靴棚を設けた。

洗面スペースの奥には、ウォークインクローゼット。

セージグリーンの壁は、家の中で唯一採用したアクセントカラー。

きちんと整列された脱衣室の収納はHさん担当。

浴室の横にはシンプルに設えたトイレ。
