
照明デザイナー夫妻の住まい家族の暮らしを包み込む
繊細で美しい光
便利な立地のマンションをフルリノベーション
大型商業施設と昔ながらの商店街が共存し、子育てしやすい街としても人気の武蔵小杉。Hさま夫妻は、武蔵小杉駅から徒歩5分、築25年で78.62㎡のマンションを購入し、フルリノベーションして5歳の息子さんと3人で暮らしている。
「以前は数駅となりの賃貸マンションに住んでいました。武蔵小杉には家族でよく食事や買い物に来ていて、駅近に住めたらとっても便利だろうなあと考えていました」(奥さま)。
Hさま夫妻は、ともに照明デザイナーとして活躍(ご主人の会社ホームページはこちら)。住宅、商業施設、オフィス、ホテルなどさまざまな空間を光で彩り、美しさや心地よさを創出している。中古マンションを購入してリノベーションで自分たちらしい住まいをつくりたいと考えていたご夫妻は、株式会社FINDの設計担当・笠原圭一郎さんに物件探しとリノベーションを依頼。そこには、絶対の信頼があったという。
「FINDさんが手がけた住宅の照明デザインをやらせていただいたことがきっかけで、笠原さんとはお付き合いが続いていました。仕事柄、施工関連の知り合いはたくさんいますが、お客さまの暮らしに一番寄り添っていると感じたのがFINDさんだったんです。このマンションもFINDさんが見つけてくださったのですが、立地も眺望もすばらしくて即決しました」(ご主人)。

家族全員が一番気に入っているというリビングダイニング。元は和室と洋室の2部屋だったのをつなげ、約15畳の空間をつくった。「イサムノグチ」のコーヒーテーブルはご夫妻が長く愛用しているもの。「Minotti」のソファはご主人のお客さまが譲ってくださったそう。

「玄関はとにかく広くしたかった」と話すHさま夫妻。元はドア幅くらいだったのを広げ、ベンチ、シューズクローゼット、コートラック、ロボット掃除機の居場所などをつくった。

玄関横の個室はご主人の書斎に。「玄関を広くした分、この部屋が狭くなりましたが、秘密基地感があって気に入っています」(ご主人)。

玄関からリビングダイニングに向かう廊下。天井に埋め込まれたライン状の照明が、家族やゲストをやさしく誘導する。
同じ3LDKでも、自分たちらしい3LDKに
最初から大規模なリノベーションをするつもりだったというHさま夫妻。空間デザインのプロフェッショナルであるお2人は、内見をした後すぐに、新しい間取りを頭の中で組み立てていった。
「リビングダイニングは西側から南側に移動、玄関は広く使いやすく、キッチンはクローズドタイプから対面式に。『ここがこうだったらいいのに』という部分を、全部直していきました」(ご主人)。間取りを大きく変えた背景には、家族の暮らしへの視点が込められていた。
「将来の子ども部屋はリビングを通らないと入れない場所にして、家族が自然につながるようにしました。また、買ってきた食料を玄関からキッチンに運びやすい動線もつくりました」(奥さま)。
結果、3LDKという部屋数は以前のままだが、水回りの位置以外はガラリと変えたプランが誕生。「FINDさんに『こうしたい』と伝えたら、『いいですね。やりましょう!』と快諾してくださって、心強かったです」(ご主人)。
また、内装デザインは、白、木、グレーを基調に色味をおさえてすっきりと。さらに奥さまの希望で、ドアや一部の壁に深いグリーンのアクセントカラーを取り入れ、洗練された空間をつくりあげた。

ダイニングからリビングを見る。テレビの背面の壁は深い緑色にして空間を引き締めた。テレビボードとリビング収納を兼ねる棚は、仕事で繋がりのある施工会社の方が引っ越し祝いにつくってくれたそう。

リビングからダイニングを見る。奥の扉は右が主寝室、左が将来の子ども部屋につながっている。「リビングダイニングを中心に生活がしやすい間取りにしています」(奥さま)。

床材はドイツの高級床材メーカー「Parador」のもの。「FINDさんが提案してくださって、とても気に入りました。彩度が低くてグレーっぽい色が理想通りでした」と奥さま。「実は廃盤が予定されている色だったので、国内商社に頼んですぐに在庫を抑えてもらいました」と笠原さん。

キッチンはグレーをチョイス。折り下げ天井にはウォールナット材を貼り、ぬくもりのある雰囲気に。新居に合わせて購入したウォールナットのダイニングテーブルは、福岡の木工家具ブランド「HIRASHIMA」のもの。

キッチンは、カウンター、通路、収納をたっぷり確保して作業しやすく。床は、意匠性が高く汚れに強い塩ビタイルにした。

将来の子ども部屋。正面の窓の上に、さりげなくライン状の照明が仕込まれている。
「なんだか心地よい光」をデザインして暮らす
リノベーションにあたって、Hさま夫妻が一番時間をかけて考えたのは照明デザイン。自宅なので、やりたいことをじっくりと詰め込んだと振り返る。
「最初に2人で決めたのは、奇をてらったり、デザインを見せつけたりする感じにはしないこと。空間に足を踏み入れたときに、『なんかいいよね』と感じる空気感を大切にしました」(奥さま)。
照明の位置、照らす範囲、照明器具、照度、光の色……。深い知識を持つ夫妻は、一人ずつ図面にプランを書き込んでお互いにプレゼンをした上で、照明をデザインしていった。お2人は「選択肢が多すぎて悩みましたが、自宅の照明をデザインする時間はとにかく楽しかったです」と声を揃える。
なかでもご主人が「どうしてもやりたかった」というのが、廊下、トイレ、リビングダイニング、子ども部屋、寝室、書斎とあらゆる空間に仕込まれたライン状の照明。「施工がすごく難しいのですが、見事な職人技で仕上げていただきました。やわらかい光を演出できて、大満足です」と話すご主人に、笠原さんは「Hさまが手がける空間は光がとても美しくて、勉強になります。今後もさまざまな事例をご一緒したいので、腕利きの監督と職人をそろえておきます!」と笑顔で頷く。
照明デザイナー夫妻が、心地よい生活空間を追求してリノベーションした住まい。「やりたいことを全て叶えることができました」と笑顔で振り返るお2人。最初は環境が変わる寂しさから引っ越しを嫌がっていた息子さんも、毎日のように「いいおうちだね」「引っ越してよかったね」と言いながら、お気に入りのリビングのソファでくつろいでいるそうだ。

リビングダイニングは、ライン状の間接照明と天井に取り付けたスポットライトでライティング。「夜は間接照明だけにしても、良い雰囲気になります」と奥さま。正面の梁には鏡を貼り、圧迫感を解消するとともに、光と空間が続いているように魅せた。

梁の鏡貼りは、予算的にも施工的にもハードルが高かったが、笠原さんから「それ、見てみたいです! できる限りの協力をします」と後押しもあり、実現したそう。

寝室にもライン状の間接照明。夫妻で「一つは名作照明を入れよう」と考え、「ルイスポールセン」のペンダントライトをチョイス。ヘッドボードに置いたのは、日本のポータブル照明ブランド「Ambientec」の「madco」。

廊下の照明の施工はとても難しく、職人さんが丁寧に細いスリットにおさめていった。「お客さまの現場で実験するわけにはいかないので、うちで試しました(笑)。成功してよかったです!」とご主人。

トイレにもライン状の間接照明を仕込み、ホテルライクな雰囲気に。

「キッチンのウォールナット天井はやや重たい雰囲気なので、丸い電球を並べてかわいらしさをプラスしました」と奥さま。カウンターの上に吊るされたバーも、実は照明。「イタリアの『wastberg』というブランドの棒状のスポットライトで、作業する時の手元を明るく照らしてくれるのに、顔はまぶしくないという優れもの。明るさも調整することができます」とご主人。

リビングの天井につけた埋込式のスポットライトは、「Modular Lighting Instruments」の「MINUDE」。向きを変えて照らす位置を変えることもできる。
