
シームレスに暮らす50㎡無機質な空間に彩りを加えた
“帰りたくなる家”
事例を参考に、念願のリノベーション
都心に近い築46年のマンション。住み慣れたエリアで見つけた角部屋の50㎡強を、Mさんご夫妻は半年ほど前にリノベーションした。
「私がリノべーションをしたくて、結婚するならリノべ!と、ずっと思っていました(笑)」。
というのは、ハウスメーカーに勤務する奥様。
「子どもの頃から間取り図を描いたりするのが好きで、インテリアにも興味があったんです。最初からスタイルを決めていたわけではないのですが、設計を依頼したnuリノベーションとの打ち合わせのために、色々な事例を集めていくうちに、だんだんイメージが固まっていきましたね」
雑誌で見たnuリノベーションの施工物件や、TO KO SIEのお気に入りの記事を参考にして進めたそう。2LDKから1LDKに変更し、広々とさせたLDKは、2面にある開口の向こうに都心の景色が広がる。
「家に人を呼んで食べたり飲んだりするのが好きなので、LDKはなるべく広くするのが希望でした。これまでは外食が多い暮らしだったので、“自炊したい”、“早く帰りたりたい”と思えるような家をつくりたい、と思っていました」

1978年築のマンション。50.44㎡を開放的な空間に。

家具は最低限に揃え、シンプルに徹した。

パントリーや冷蔵庫は、リビングから死角の位置に収まっている。

お気に入りの場所で。2面採光で明るい。
家具のようなキッチンを主役に
玄関三和土から始まりLDKまで、ベッドルームを除いて、床にはベージュ系のモールテックスが塗装されている。
「大判のタイルを敷きたかったのですが、割れる可能性があるということで他の素材を薦められ、最終的にモールテックスに落ち着きました。グレーが一般的だと思うのですが、冷たい感じが出てしまうので、ベージュにしています」
とご主人。赤みのあるチーク材を使ったキッチンや建具と調和して、シンプルでモダンな空間に温かみを添えている。
「LDKを広くとるため、キッチンは対面式から壁付けに変えて、友人が来たときも一緒に調理ができるよう3m近いワイドなサイズにしています。天板の厚みは薄くして、取っ手やタオルかけを付けないなど、デザインも細かく指定し、家具のように造作してもらいました」
キッチン台の角にはR加工を施し、接続する形でベンチも造作。壁には白いタイルを貼って、目地にブルーを入れた。ここで週1回リモートワークを行う奥様は、
「キッチンがいちばん好きな場所ですね。ベンチのクッションも厚みや固さなど、こだわって作ってもらったので、座り心地がいいんです」
LDKと廊下の間のガラス戸は、キッチンと同じチーク材をあしらい、Rの意匠を取り入れて造作。ガラスを通して、家中を光が通り抜ける。

ベージュのモールテックスの床に、チークのキッチンが調和する。

家具のようにデザインした美しいキッチン。壁面には吊り収納や棚板なども設けずすっきりとさせた。壁付けの照明はtoolboxで。

家電製品など、生活感を感じさせるものは奥のパントリーに。

縦にラインを入れて観音扉に見せつつも、中は使いやすい引き出し式。デザイン性と使い勝手が両立されている。

業務用っぽいリンナイのガスコンロに、真四角のレンジフードを指定。天板も薄く仕上げてもらった。

Rを描くコーナーから、ベンチへと流れるように接続。

引き戸は、ガラスのまわりにR加工を施したチーク材をあしらった。
シームレスな設計で開放感を
玄関に近いベッドルームは、既存の壁を取り払い、オープンにするという大胆なプランに。
「廊下はなるべくつくりたくない、とお伝えしたところ、設計デザイナーさんに提案されました。壁を壊すことは少し迷ったのですが、結果的に正解でしたね」
壁の替わりにローキャビネットと吊り下げ収納で緩やかに仕切り、カーテンレールを設置しカーテンで閉じることもできるようにした。
「ベッドルームには落ち着いた無垢のオーク材を敷いているのですが、床と天井が揃うようにコーナーにRをつけてもらった点も気に入っています。普段は服をかけることで視覚的に区切っていますが、カーテンを閉じた時も、窓からの光が微妙に通り抜けて、光の具合がとてもきれいなんです」
廊下には洗面がオープンに設置されている。
「リノべ前は脱衣所に洗面台があったのですが、狭いし使い辛そうだったんです。朝、ふたりで並んで使うことができるようにと、広めにリクエストしました」
壁にはキッチンと同じ白いタイルをあしらいつつ、目地はイエローに。壁出しの水栓を絶対条件に、置き型のシンクなどひとつひとつセレクトして完成させた洗面は、廊下にあっても美しく、かつ実用的な場所になっている。

玄関を入ると、視界が奥のLDKまで通り抜ける。ローキャビネットと吊り下げ収納を緩やかな仕切りに。

ベッドルームに窓があることも、マンション購入の決め手になった。抜け感のあるカーテンはieno textile。吊り下げ収納は、普段着る服のほか、洗濯物を乾かすのにも便利。

無駄なラインがなく箱のように見えるローキャビネットは、畳んだ服がぴったり収まるように設計されている。

ベッドルームに接続して、WICとワークスペースを設けた。ご主人がリモートワークを行う。

玄関三和土もベージュのモールテックスで。靴箱は設けず、無印良品のラックを使うことでコストカット。

床と天井にRのカーブをつけて、廊下とベッドルームをゾーニング。“ホテルのようにしたい”と、全身が映る鏡を壁付けに。

LDKへの引き戸前に設けたオープンな洗面台。照明はtoolbox。
遊び心もほどよく加えて
ご主人のお気に入りは、躯体現しにして白塗装をした天井。
「リノべ感が出ているのが好きなんです(笑)。もともとは天高が低かったのですが、天井を壊したことで実際の面積よりも広く感じられるようになりました」
街道や高速道路に面しているため、気になっていた騒音は2重窓にすることでクリア。無機質で開放的な空間を、家具や小物で彩り、インテリアも楽しんでいる。
「シンプルにデザインしたので、遊び心が足りないかなと。色を使ってちょっと個性を足しています」
以前から持っていたブルーとイエローのイスに合わせて、HAYで購入したダイニングテーブルは、丸い形がRの意匠ともリンクする。
「インスタグラムで見つけた海外のショップでアートを購入したり、都内のインテリアショップで小物を見つけたり。基本的にシンプルが好きなのですが、ミニマリストまではいかなくて、もっとインテリアを楽しみたいですね。家具も配置を変えてみることなど、いろいろ考えて楽しんでいます」
引っ越して半年強。まだまだ近隣の開拓で外出することも多いそうだが、家にいること自体を楽める、そんな空間が完成した。

引っ越し前から持っていたイエローのイス(HAY)、ブルーのイス(IDÉE)に合わせて、新たにHAYでダイニングテーブルと照明を購入。

ソファはデンマークのeilersen。クッションを移動させて寛いだり、ベッドにしたりもできて便利。

JOURNAL STANDARD FURNITUREで、一目惚れして購入したチベタンタイガーラグ。

友人が描いた絵。イエローとブルーのカラーが、この家にぴったり!と譲り受けた。

ユニークな招き猫の作品は、海外のインスタグラムで発見。
