
夫婦2人暮らしの65㎡ワンルーム世界を旅したジュエリーデザイナーが作る
アーバンリゾートなマンションリノベ
世界各国を訪れたジュエリーデザイナー。
物件購入の条件は?
2015年に結婚したOさんご夫妻。このマンションを購入したのは2020年のこと。ジュエリーデザイナーである奥様は、海外出張で様々な国を訪れてきた。現地のホテルやレストランで目にしたインテリアに刺激を受け、日本にはない要素を自宅に取り入れたいと考えていた。
「父が鉱山関係の仕事をしていたので、幼い頃から身近に石がありました。また、ニューヨークへ留学したりと、若い頃から海外のインテリアに触れる機会は多かったです。それらがジュエリーの仕事や、家づくりへの興味につながっていると思います」と話す奥様。
長年、リノベーションへの関心を抱いていた奥様は、フルリノベーションを前提に物件を探していた。
「ずっとフルリノベーションをしたいと思っていたので、物件は常に探していました。でも、良いなと思う物件のほとんどはリフォーム済みでした。そこに手を加えるのは、もったいないと感じていたんです。そんな時にこのマンションと出会いました」
築54年でありながら、前のオーナーがほとんど手を加えない状態で住み続けてきた物件。ためらいなくフルスケルトンにできると感じたそうだ。
「自分たちの好きなデザインに完全に作り変えられる!と嬉しくなりました。そして部屋に入った瞬間、目に飛び込んでくる素晴らしい眺望にも一目惚れ。このマンションよりも背の高い建物が、周辺に建てられないことが約束されていたので、即決でしたね」と、当時を振り返る。リノベーションは、物件探しから相談していたリノベ会社『リノベる。』に引き続き依頼をした。

築54年、総面積は約65㎡。

寝室側から、LDKを眺めて。

リビングから、寝室側を眺めて。

ベランダを背に、部屋全体を見る。

過ごしやすい季節はベランダに出て、夫婦2人でビールを楽しむ。

和紙とシルクスクリーンによる作品は、奥様の美大時代の卒業制作。

廊下にも奥様の作品。実家で保管していたものを、リノベを機に自宅へ。

イタリア人デザイナーによるソファ「MARENCO」。

道路の側溝に使うコンクリートの蓋をチェスの台座として活用。配線の目隠しも兼ねている。
目指したのは、都会のリゾート。
多国籍な家具をバランスよく。
リノベーションのテーマは、アーバンリゾート。都会にいながら、自然を感じられる空間だ。
「海外のホテルで味わうリラックスした雰囲気を日常に取り入れたかったんです。それでいて、都会的な洗練された雰囲気もほしかった。たとえば、リビングにはエーゲ海のリゾート地を思わせる白い壁に、リラックス感のあるイタリア製のソファを置きました。反対に、キッチン周りはブラックと石の素材をベースに、ソリッドで都会的な印象に。インテリアはシティホテルの洗練された雰囲気をベースにしつつ、アジアやアフリカの民藝雑貨をアクセントに取り入れました」
インテリアのバランスは、ブルックリン在住のインテリアデザイナー・Athena Calderone氏のInstagramアカウントを参考にしたそうだ。
「彼女のモダンな邸宅には、アジアや南米の雑貨がバランスよく配置されています。我が家にも、アフリカ、ニューヨーク、バリ島、香港など、これまで買い集めてきた多国籍な家具があるので、彼女のセンスをいつも参考にしています」

コンロとシンクが分離したII型のキッチン。

ひとつひとつ表情の異なるタイルを芋張りに並べて。

キッチンからバルコニーまで、光と風が抜ける間取り。

キッチンの奥には、7㎡のアトリエが続く。

キッチン前の壁にはニッチ棚を設けた。

システムキッチンは「GRAFTEKT」のもの。

ダイニングテーブルは、目黒で購入したヴィンテージ。照明は、ハンス・J・ウェグナー。
デザイナーズ家具に馴染む、DIYのアイデア家具
ほしいと思ったものは、可能な限り自作するという美大出身のOさん。持ち前のセンスのよさで、手持ちの多国籍な家具ともバランスよく調和している。
「無いものは自分で作るのが好きなんです。うちにある棚類は、3,000円くらいの材料費で作りました。お金をかけるところはかけて、できることは自分で。メリハリを大事にしています」
例えば、ベッドサイドに立てかけた格子の建て具もDIYをしたものだ。
「最初は完全に独立した寝室を作ることを検討しました。しかし、壁を建てることで狭く感じ、LDKの開放感が失われることを懸念しました。かといって、キッチンから寝室が丸見えになるのも嫌でした」
そんな時に思い出したのが、フランスの家具デザイナーであるジャン・プルーヴェの展示で見た窓のデザインだった。
「彼の作品にランダムな格子でできた窓があるんです。それをヒントに木材の板を組み合わせて、簡単な格子状の建て具を作りました」
DIYだけではなく、ユニークな素材の使い方にも注目したい。たとえば、チェスの台座として使っている縦に長いコンクリート。
「実はあれ、道路の側溝に使うコンクリートの蓋なんです。もともとは横向きに置いて、テレビ台として使っていました。コの字型になっていて中が空洞なので、今は配線隠しとして壁にくっつけて使っています」
世界を旅して得たインスピレーションと、既成概念にとらわれない自由な発想が、唯一無二の心地よい空間を生み出している。

「ジャン・プルーヴェ展」で見たデザインを参考に、格子の建具をDIYした。

自然光がたっぷりと入る夫婦の寝室。

ベッドの足元の壁を窪ませたニッチ棚は奥様の自作。天板にはタイルを張って。

アトリエでは、自身のジュエリーブランド「AKey」の制作を行う。

アトリエの一角には、靴棚を設けた。

玄関を入って右手にはアトリエ。真っ直ぐ進むと、LDKが続く。

床のタイルは、目黒のインテリアショップ「complex」で購入した「BB0HS」。
