人生3度目のリノベーション 隠し扉でプライベートを分けた 光が導く独創的な空間

人生3度目のリノベーション隠し扉でプライベートを分けた
光が導く独創的な空間

ライフスタイルの変化に合わせて

都心に広がる緑豊かな公園のほど近く。築28年のマンションの1室を購入したYさんは、3度目となるリノベーションを敢行した。
「西麻布のマンションに住んでいたときに、DIYしたのがきっかけでした。無機質な空間も個性的に変えられることに気がつき、楽しさを感じたんです」
本格的なリノベーションの1軒目は2019年。なんと麻布十番に建つマンションの、100㎡テラス付き117㎡の最上階ペントハウスを、プール付きの2LDKに。コロナ禍の2021年には、ライフスタイルの変化により、大岡山の177㎡強の戸建てを購入して2軒目をリノベーション。
「今のところ2、3年に1回リノべしている感じです(笑)。リノべ自体が目的ではないのですが、暮らしている中で状況が変わってきて。今回は通勤の利便性を考え、やはり都心部に戻ろうと思いました」
200㎡近くからコンパクトになったものの、それでも80㎡ほどある3LDKを1LDKに変更して、アーティスティックな空間を創造した。

渋谷の街並を抽象画で表現した、真田将太朗のアートや、イタリアブランドの選び抜かれた家具が彩るダイニングエリア。

渋谷の街並を抽象画で表現した、真田将太朗のアートや、イタリアブランドの選び抜かれた家具が彩るダイニングエリア。

ゆったりと過ごせるリビング。広々としたバルコニーでBBQも楽しめる。カーテンの替わりに、ベランダ側に電動式のブラインドを取り付けた。エネルギー効率もUP。

ゆったりと過ごせるリビング。広々としたバルコニーでBBQも楽しめる。カーテンの替わりに、ベランダ側に電動式のブラインドを取り付けた。エネルギー効率もUP。

パブリックとプライベートを分ける

リノベーションは1回目から依頼している「グローバルベイス」に。
「もう何でも分かっていただいているので、ずっと同じ設計士さんにお願いしています。基本的にやりたかったことを伝え、あとはどういうオプションがあるかを相談していきました」
3回のリノベーションで一貫しているのは、“プライベートスペースとパブリックスペースを分ける”こと。
「この物件は内見に入ったときに、両方の切り分けを明確にイメージすることができたんです。戸建てのときは3階のパブリックスペースに向かって、光に導かれていくような設計を考えたのですが、ここはバルコニーのある方向に自然に目線が導かれるので、そこを活かした間取りにしました」
玄関を入ると、光に招かれてパブリックスペースへ。独立していたキッチンの壁と和室を取り壊して、リビングを仕切りなく隣接させた大空間は、ゲストを招くことの多いライフスタイルと、暮らしやすさを考えて計画した。

パブリック側であるリビングとダイニングキッチンは仕切りなくつながっている。総面積は76.76㎡。

パブリック側であるリビングとダイニングキッチンは仕切りなくつながっている。総面積は76.76㎡。

ベッドスペースはプライベート側の一角に。

ベッドスペースはプライベート側の一角に。

人をもてなすダイニング&ラウンジ

「ダイニングキッチンは白黒で対比させたくて、キッチン側は白、造作の収納とベンチのあるダイニング側は黒をテーマに壁の色を分けました。でもそれだけではモダンになりすぎるので、調和させるためウォルナットのダイニングテーブルと2色配されたイスを置いています」
そしてアートやカラフルなクッションで色を加え、照明や小物などで遊び心をプラス。インターネットで世界中から情報を集めて揃えたモノが、空間を個性的に彩っている。
「キッチンの壁には花をイメージしてハニカムタイルをあしらいました。所々で花をモチーフにするなど、細かい遊び心を加えているんです。気づいてもらえると嬉しい仕掛けが、色んな場面に散りばめられています(笑)」。
Stringの棚を一面に設置したリビングは、ブラウン×グリーンのカラーを基調にコーディネート。大きなソファを置く替わりに、一人掛けのチェアを4脚置いたスタイルが斬新だ。
「TVの前に大きなソファを置くと、TVが主体になってしまうんですよね。主役は自分たちであり、ここは会話をするための場なので、いかにコミュニケーションとるかがコンセプトです」
沈み込むような座り心地のイタリア製のチェアに腰かけると、ゆったりとした時間の流れが感じられる。
「リビングというよりラウンジのイメージです。ゲストが来たときは、ここでアペタイザーを楽しんでからメインのダイニングに行き、食べ終わったらまたここで寛ぎます。普段は夕食を食べて、寝る前に一度ここで落ち着いてからプライベートスペースへ。そのため、天井の中央につけようとしていた照明も外してもらい、あえて暗く演出しました」

ダイニング側の一面にグレーの壁紙を採用。空間のカラーコンセプトに合わせる形で、イタリアブランドのイスをセレクトした。グレーの壁前の両サイドの棚の間には、下が収納になったベンチが設けられている。照明はmoooi。

ダイニング側の一面にグレーの壁紙を採用。空間のカラーコンセプトに合わせる形で、イタリアブランドのイスをセレクトした。グレーの壁前の両サイドの棚の間には、下が収納になったベンチが設けられている。照明はmoooi。

白をテーマにしたキッチン側。Mieleのコンロとオーブン、AEGの食洗機を指定して造作した。薄めの天板を少し浮かせることで軽やかに見せるなど、デザインを細かく指定した。キッチンにぴったりのアートは毛利美穂。

白をテーマにしたキッチン側。Mieleのコンロとオーブン、AEGの食洗機を指定して造作した。薄めの天板を少し浮かせることで軽やかに見せるなど、デザインを細かく指定した。キッチンにぴったりのアートは毛利美穂。

扉を垂直収納できる造作のカップボード。排気口が前にあることなどから、美しく収められるEuroCaveのワインセラーを内蔵。

扉を垂直収納できる造作のカップボード。排気口が前にあることなどから、美しく収められるEuroCaveのワインセラーを内蔵。

キッチンはシンク内の使いやすさにもこだわった。名古屋モザイクのハニカムタイルを使って、花をモチーフに壁面をアレンジ。

キッチンはシンク内の使いやすさにもこだわった。名古屋モザイクのハニカムタイルを使って、花をモチーフに壁面をアレンジ。

ブラウン×グリーンのカラーでコーディネートしたラウンジ。スウェーデンの壁掛け収納家具Stringを設置。イタリアの小さな村で作家につくってもらった器など、海外で入手した雑貨を飾っている。Tom Dixonのサイドライトは夜、自動点灯する仕組みに。

ブラウン×グリーンのカラーでコーディネートしたラウンジ。スウェーデンの壁掛け収納家具Stringを設置。イタリアの小さな村で作家につくってもらった器など、海外で入手した雑貨を飾っている。Tom Dixonのサイドライトは夜、自動点灯する仕組みに。

デッドスペースになっていた出窓の周りを取り壊し、開放的に造りかえた。上質な革を使ったCORIUMのアームチェアはフルフラットになり、最高の座り心地。ピアノの上にはピカソのリトグラフを飾る。

デッドスペースになっていた出窓の周りを取り壊し、開放的に造りかえた。上質な革を使ったCORIUMのアームチェアはフルフラットになり、最高の座り心地。ピアノの上にはピカソのリトグラフを飾る。

ソファテーブルは置かず、あえてオットマンの上にトレーを置くスタイルに。チェアには1脚ずつ小さなサイドテーブルを添えている。

ソファテーブルは置かず、あえてオットマンの上にトレーを置くスタイルに。チェアには1脚ずつ小さなサイドテーブルを添えている。

バリ島で購入した猿の縫いぐるみ。パッチワークがかわいい。

バリ島で購入した猿の縫いぐるみ。パッチワークがかわいい。

“隠し扉”の奥に生活エリアを

プライベートスペースは、壁に見える“隠し扉”の向こうにひっそりと現れる。
「ここにはもともとL字の廊下があり、廊下を取り払うと玄関から寝室がすぐ見える造りでした。プライベート側は隠し、パプリック側に人が自然に流れるようにしたくて、壁に同化させた隠し扉を造作してもらいました。設計士さんは苦労されたみたいです(笑)」
そっと押すと開き、手を放すと自動で閉じる扉の向こうには、ベッドスペース、ワークスペース、バスルーム、クローゼットが隠れている。中央には衣類を効率的に収めるため、自らデザインしたアイランド収納が。
「以前よりコンパクトになったので、ひたすら収納を設けることを考えました。でも同時にベンチを造作したり、ゆとりも持たせています」
余裕のある開放的な空間には、バーガンディーレッドに包まれたベッドスペースがアクセントのよう。
「斜め天井と梁があったので、ここは“寝る箱”をコンセプトに、唯一天井をふかしてフラットにしました。圧迫感が出るかなと思ったけれど、包み込まれるように安眠できるので正解でしたね。今回やりたかったワインレッドも取り入れることができました」
室内に使うカラーを、壁面の大きなアートとリンクさせるなど、生活スペースもアーティスティック。
「万人向け過ぎて個性のない、無機質な空間が嫌いなんです。折角の自分の居場所なのに、なぜもっと個性を出さないのかと。かといってニッチな方向に行き過ぎても落ち着きません。自分たちが住みやすいことが大前提ですが、同時にチャレンジも楽しんで、好みのテイストをどう具現化していくか。リノベーションはそんな創作意欲を満たしてくれますね」

壁と一体化させた隠し扉。光の具合でゴールドっぽく輝く壁紙を選んだ。

壁と一体化させた隠し扉。光の具合でゴールドっぽく輝く壁紙を選んだ。

隠し扉の奥がプライベートスペース。床は美術館でも使われる、傷のつきにくい無垢のオークで統一。

隠し扉の奥がプライベートスペース。床は美術館でも使われる、傷のつきにくい無垢のオークで統一。

中央のアイランド収納を挟んで回遊できる造り。右手の扉奥にバスルーム&洗面がある。アイランド収納は両側に機能をもたせた。こちら側は引き出しに。

中央のアイランド収納を挟んで回遊できる造り。右手の扉奥にバスルーム&洗面がある。アイランド収納は両側に機能をもたせた。こちら側は引き出しに。

包み込まれる寝心地のベッドスペース。壁の照明はTom Dixon。

包み込まれる寝心地のベッドスペース。壁の照明はTom Dixon。

ほどよく籠もり感のあるワークスペース。机や棚も造作した。

ほどよく籠もり感のあるワークスペース。机や棚も造作した。

衣類ケア家電LG Stylerを置く場所も設計時に考慮。手前にベンチが造作されている。

衣類ケア家電LG Stylerを置く場所も設計時に考慮。手前にベンチが造作されている。

オープンに設けたWIC。

オープンに設けたWIC。

アイランド収納の反対側は見て選べるよう、掛ける収納に。

アイランド収納の反対側は見て選べるよう、掛ける収納に。

清潔感のある白で統一した水廻り。洗面台も造作した。

清潔感のある白で統一した水廻り。洗面台も造作した。

タイルの貼り方に工夫を凝らしたバスルーム。

タイルの貼り方に工夫を凝らしたバスルーム。

タイ・プーケットの作家の、現地ギャラリーで購入したアート。手前のヴィトンの革製の花と色をリンクさせている。

タイ・プーケットの作家の、現地ギャラリーで購入したアート。手前のヴィトンの革製の花と色をリンクさせている。

フランスの巨匠、ピエール・スーラージュの作品。アヴェロン県ロデーズの美術館を訪れて気に入り、熱海のギャラリーでたまたま見つけて購入したうちの1点。

フランスの巨匠、ピエール・スーラージュの作品。アヴェロン県ロデーズの美術館を訪れて気に入り、熱海のギャラリーでたまたま見つけて購入したうちの1点。

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