手間が愛着を育てる フードディレクターの 好きなものに囲まれた暮らし

手間が愛着を育てるフードディレクターの
好きなものに囲まれた暮らし

足で集めた“好き”と暮らす

人気のカフェやレストランのフードコンサルティングや店舗デザイン、イベントのディレクションを手掛けるクリエイター『𝚞𝚗𝚒𝚝𝚎́ 𝚒𝚗𝚌.(ユニテ)』代表の浅本充さんが、1年ほど前に暮らし始めたのが、ここ自由が丘駅のほど近くにある3層吹き抜けのメゾネット。階段に沿って天井が斜めに伸び、空間がのびやかに広がる。

その部屋には世界中を旅しながら少しづつ吟味して集められたモノたちが並び、浅本さんらしいとびきり心地のいい空間が作られている。
「ブランドやデザイナーにはこだわりはほとんどなくて、知人に古い家具を探してもらったり、食器はフリーマーケットで買ったり、個人から譲り受けた愛すべき中古品が多いです」
ダイニングテーブルの上のライトは、フランスの蚤の市で出会ったミルクグラスに惹かれ、苦労して持ち帰ったものだそう。

朝はDualitのトースターで焦げないように見守りながらパンを焼き、丁寧にミルでコーヒーを挽き、夜はディーター・ラムスのレコードプレイヤーで真空管が暖まっていくのを感じながら好きな音楽を聴く。
「ちょっと手間がかかる分だけ、愛着が深まっていく。そういうものが好きなんです」

2層部分がダイニング。「アメリカ製のテーブルはメーカーなど不明ですが、大きさが気に入って購入しました」

2層部分がダイニング。「アメリカ製のテーブルはメーカーなど不明ですが、大きさが気に入って購入しました」

「堀井和子さんの本を読んで以来、Dualitのトースターが欲しくて、初めてヨーロッパに行った時に手に入れたものです」。さりげなくアートフレームでインターホンを隠している。

「堀井和子さんの本を読んで以来、Dualitのトースターが欲しくて、初めてヨーロッパに行った時に手に入れたものです」。アートフレームでさりげなくインターホンを隠している。

「約100年前のアンティークの食器棚は、神戸の雑貨店の知人が3年くらいかけて探してくれて、店から東京までクルマで運んできてくれたお気に入りです」

「約100年前のアンティークの食器棚は、神戸の雑貨店の知人が3年くらいかけて探してくれて、店から東京までクルマで運んできてくれたお気に入りです」

「オールホワイトのArtekのDomus Chairは珍しいと思います」。写真左のイスはジャスパー・モリソン。

「オールホワイトのArtekのDomus Chairは珍しいと思います」。写真左のイスはジャスパー・モリソン。

「家具は実家にたくさん置いてあって、ここにあるものは今、身近に置きたいものばかりです」と浅本充さん。

「家具は実家にたくさん置いてあって、ここにあるものは今、身近に置きたいものばかりです」と浅本充さん。

「ディーター・ラムスのBRAUNのラジオレコードプレイヤーは、完璧な状態ではないのですが、そのゆらぎのある音がお気に入りです」。ラリー・クラークのシルバープリントはパリから持ち帰ったもの。キャビネットはIDÉE。

「ディーター・ラムスのBRAUNのラジオレコードプレイヤーは、完璧な状態ではないのですが、そのゆらぎのある音がお気に入りです」。ラリー・クラークのシルバープリントはパリから持ち帰ったもの。キャビネットはIDÉE。

選び抜いたものを置くスタイルに

「古い戸建てに住んでいた時は、たくさんの雑貨や家具に囲まれていました。でも今はお気に入りをポンと置く、この部屋の生活を楽しんでいます」
ラリー・クラークのシルバープリント、ローレンス・ウェイナーのポスター、ロナン&エルワン・ブルレックのオブジェ──。本当に好きなものだけを選んで、視界に置いて暮らす心地よさがある。

「模様替えが好きなので、たとえばActusのソファは季節ごとにファブリックを替えて楽しんでいます」
古い家具を直しながら使ったり、家電のご機嫌を伺いながら対話するのように扱ったり。そんなゆるやかな時間も、浅本さんの暮らしの一部になっている。

浅本さんのインテリアの特徴は?と尋ねると、なるほどという答えが返ってきた。
実はこの部屋には “和”の要素がまったくないという。和食器はなく、ポスターや家電、本の背表紙に至るまで、漢字がひとつも登場しない。どこか世界の愛らしい街に住んでいるような感覚になるのは、そのせいなのかと納得!

ライトは強力粘着両面テープを使って留めているそう。「絵を壁にかける時も両面テープを使ってます」

ライトは強力粘着両面テープを使って留めているそう。「絵を壁にかける時も両面テープを使ってます」

階段にお気に入りの本を並べて。「友達が来るとみんな階段とかに適当に座ってます」

階段にお気に入りの本を並べて。「友達が来るとみんな階段とかに適当に座ってます」

『ACTUS』のデイベッドにもなるソファ。「ファブリックを替えることができるので、秋冬はグレーに替えて楽しんでいます」

『ACTUS』のデイベッドにもなるソファ。「ファブリックを替えることができるので、秋冬はグレーに替えて楽しんでいます」

内側にたっぷりとした丈のレースのカーテンを吊るす。「窓辺に腰掛けて過ごす時間が気に入っていますす」

内側にたっぷりとした丈のレースのカーテンを吊るす。「窓辺に腰掛けて過ごす時間が気に入っています」

心地よい空間作りは、家でも仕事でも

浅本さんのお宅には、料理研究家、建築家、イラストレーター……、さまざまな分野の友人がよく集まってくる。階段に腰掛ける人もいれば、ダイニングチェアや上階のソファでくつろぐ人もいて、思い思いの場所で過ごすのがこの家の定番だ。

「家でコーヒーを淹れたり、料理を作ったり、好きな音楽をかけたり。そんなふうにして友人たちとゆっくり過ごす時間が好きなんです」
ひとつひとつのものたちに物語があり、それらがこの家に集まる人の会話を自然とほぐしていく。

「自分が心地よいと感じる空間を作ることが昔から好きでした。たぶん、その感覚が今の仕事にもつながっているんだと思います」

三層のメゾネット。玄関入って見上げると、高さのある吹き抜けが心地よい。床面積は約47㎡。

三層のメゾネット。玄関入って見上げると、高さのある吹き抜けが心地よい。床面積は約47㎡。

コンクリート打ち放しの壁とタイルの玄関。

コンクリート打ち放しの壁とタイルの玄関。

玄関ドア周りも浅本さんらしい佇まい。

玄関ドア周りも浅本さんらしい佇まい。

3階から洗面やバスルームを見下ろす。ピンク色のスツールは、アウトドアでも使えるリサイクル可能なプラスチック製。「この『アーノルドサーカススツール』は、スタッキングができて、引っくり返すとカサ立てにもなります」

吹き抜けの上階から洗面バスルームを見下ろす。ピンク色の『アーノルドサーカススツール』は、アウトドアでも使えるリサイクル可能なプラスチック製。「スタッキングができて、引っくり返すとカサ立てにもなります」

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