余白からはじめよう 自分たちの手で 色づけしていく部屋

余白からはじめよう自分たちの手で
色づけしていく部屋

シンプルな箱から始める

築45年ほどのマンションをリノベーションして暮らし始めた、高橋理さんと陽子さんご夫妻を訪ねた。引っ越してまだ半年ほどの部屋には、「はじめまして」というような雰囲気が漂っている。「以前住んでいたマンションが更新の時期だったタイミングもあり、ふらっとリノベーション物件を見にいってみたらここを見つけて、そのまま決めてしまいました。いくつか見たのですが、ここは大きな公園や駅も近いし、日当たりがとてもいい。窓が大きいのも気に入ったポイントのひとつです」。
設計はリノベーション会社に依頼。毎回3時間ほどの打ち合わせを5、6回したという。「設計の方も色々ご提案くれたのですが、全体的にはあまり装飾はしたくなかったんです。長く住むことを考えて自分たちで少しずつ足していくものと一緒に育っていけたらいいなと思い。シンプルな箱にしておきたかったのです」と理さん。
リビング左手。奥の窓には鈴木マサルさんデザインのテキスタイルを。

リビング左手。奥の窓には鈴木マサルさんデザインのテキスタイルを。

大きなテレビも、この広さの壁面にはあまり目立たない。「ソファがまだなかったときは居場所がなかったです」と笑いながら話す陽子さん。

大きなテレビも、この広さの壁面にはあまり目立たない。「ソファがまだなかったときは居場所がなかったです」と笑いながら話す陽子さん。

リビング入って右手にキッチン。キッチンは陽子さんが憧れていたというオールステンレス製。

リビング入って右手にキッチン。キッチンは陽子さんが憧れていたというオールステンレス製。

手間をかけて自分たちの色をつくる

元々の部屋は90平米弱ほどの3LDK。玄関を入った突き当りが、明るい大きなワンフロアのリビング。仕切られていた壁は取り払って、大きな箱に。あとは寝室と水周り、小さな書斎となっている。
この部屋のいくつかのものは理さんの手づくりだ。玄関の靴棚やキッチンの吊棚、なんといっても食器棚は初めてつくったとは思えない出来栄え。「土日を使ってつくりました。きちんとした木を使いたくて、ナラの無垢材でつくりました。つくり方は自分で調べたり、家具屋へ行って家具を観察したりして結構調べました。製作中も無垢材だから、めちゃくちゃ重かったです。キッチンに入れるのに1時間くらいかかって。でも楽しかったし達成感はありましたね」。そのほか壁の塗装なども自分たちでしたという。
床はヒッコリーの幅広の材。この広さの寒さしのぎのために床暖房をいれたというが、それに対応した幅広の床板はなかなか見つからなかったという。「木がまばらな模様なのでシンプルな箱のさりげないアクセントにもなるかなと。経年変化も楽しめそうだし傷や汚れも気にならなそう」と、値段は張るがヒッコリーに決めた。
理さんがつくった食器棚はぴったりと、まるで造り付けの家具のようにおさまっている。

理さんがつくった食器棚はぴったりと、まるで造り付けの家具のようにおさまっている。

棚板も無垢材で、扉や引き出しもスムーズに動く。

棚板も無垢材で、扉や引き出しもスムーズに動く。

吊棚は杉の木にワックスをかけた。これも理さんの手による。

吊棚は杉の木にワックスをかけた。これも理さんの手による。

余白が楽しみな暮らし

引っ越してからやっと少しずつ整ってきた部屋。これからもう少しキャビネットやテレビボードなどもつくってみたいと話す理さん。「仕事は広告のデザインなので、一定期間で終わってしまうものも多いですが、ものはつくってからずっと使われるところに面白みを感じていて、自分のためにやっているという部分もありますね。そういう意味ではやることがたくさんありますね、これからも」。
また、会社員の傍ら飲食店やケータリングなどの手伝いもしているという陽子さんは「料理は好きなんですが平日はなかなか忙しくて、まだこのキッチンを使いきれていないんです。だからゆっくりホームパーティーなんかもしたいですね」。家で過ごすことが増えたという夫妻。時間とともに、この部屋が二人の色になじんでいくだろう。
寝室には設え窓をつけてやわらかな採光を。

寝室には設え窓をつけてやわらかな採光を。

書斎の壁面は、理さんがコンクリートをのみで綺麗にして仕上げた。

書斎の壁面は、理さんがコンクリートをのみで綺麗にして仕上げた。

玄関脇のクローゼットへの入り口にアールをつけて愛嬌のある開口に。

玄関脇のクローゼットへの入り口にアールをつけて愛嬌のある開口に。

靴棚も理さんお手製。明るい黄色の壁面塗装も自分たちで。

靴棚も理さんお手製。明るい黄色の壁面塗装も自分たちで。

理さんのお父さんが間伐材とチェーンソーでつくったスツールが、素朴な温かみを添える。

理さんのお父さんが間伐材とチェーンソーでつくったスツールが、素朴な温かみを添える。

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