古い団地の良さを活かす 開放感と機能性を追求した団地リノベーション

古い団地の良さを活かす 開放感と機能性を追求した
団地リノベーション

魅力的な環境でリノベーションを決意

 林直弘さん・寛子さんご夫妻が暮らしているのは、横浜市のたまプラーザ駅より徒歩数分の距離にある築53年の団地の一室。周辺には緑豊かな公園があり、静かで穏やかな環境だ。
 もともとは同じ団地の別の棟に賃貸で住んでいたというご夫妻。結婚を機に、同じ団地の一室を購入・リノベーションを決意した。
「広さや日当たりが大きな決め手ですが、この団地の周辺の環境も良く、近隣の人の雰囲気もとても良かったのもこの物件を選んだ理由のひとつです。他の物件も内覧へ行ったのですが、この場所を越えてくる物件は見つかりませんでした」と直弘さん。
 リノベーションにあたり、ご夫妻は設計を、「A+Sa(アラキ+ササキアーキテクツ)」に依頼。
「妻も僕も建築の仕事をしているため、建築関係の雑誌をよく見ているのですが、その中でも、一番惹かれるリノベーションをしていたのがA+Saさんでした。さらに担当者の小林佑輔さんが妻の大学の同級生だったこともあり、とても相談しやすい環境でした。こういった、いろいろな理由が重なって、今回A+Saさんに依頼することになりました」(直弘さん)。

ワンフロアのような広々とした開放感が印象的なLDK。床はご夫妻の希望であった無垢材を使用している。

ワンフロアのような広々とした開放感が印象的なLDK。床はご夫妻の希望であった無垢材を使用している。

経年変化の風合いが残る柱がLDKのアクセントとなっている。「当面は夫婦二人で暮らせればいい、という思いがあったので、仕切らずに大らかな空間を希望しました」と直弘さん。

経年変化の風合いが残る柱がLDKのアクセントとなっている。「当面は夫婦二人で暮らせればいい、という思いがあったので、仕切らずに大らかな空間を希望しました」と直弘さん。

寝室とリビングを仕切る建具と壁の素材には、透け感のあるジュートを採用。仕切りつつも、開放的な印象を与える。

寝室とリビングを仕切る建具と壁の素材には、透け感のあるジュートを採用。仕切りつつも、開放的な印象を与える。

寝室として利用している和室。窓からはたっぷりの光が差し込む。

寝室として利用している和室。窓からはたっぷりの光が差し込む。

直弘さんのお気に入りの場所でもあるバルコニー。休日はアウトドア用の椅子を置き、読書などをして過ごすことも多いという。

直弘さんのお気に入りの場所でもあるバルコニー。休日はアウトドア用の椅子を置き、読書などをして過ごすことも多いという。

新しさと古い団地の良さを取り入れる

 リノベーションにあたって、林さんご夫妻がこだわったのは、開放感のある空間。そして、ただ綺麗な姿にするのではなく、古い団地の趣きも取れ入れるということ。
「表層だけのリノベーションにはしたくありませんでした。新しさと古い団地の良さが混ざり合った面白さや楽しさを残したいと考えていました。A+Saさんとは、この考えを共有できていたので、デザイン面についてはおまかせしました」(直弘さん)。
 ご夫妻の要望を受けたA+Saの小林さんは、もともとあった柱や敷居などは残しつつも、壁やキッチンなどポイントごとにデザインを施した。また、機能面では、水回りの狭さや断熱などの団地特有の弱さを改善するべく、北側の壁には断熱材を使用し、水回りは洗面台を廊下に配置するなどレイアウトの変更を実施。「団地の空気感に惹かれているということだったので、すべてを一新するようなリノベーションではなく、全体は既存の雰囲気を残して、デザインや機能を付加して、整えていくようなリノベーションを心がけました」と、小林さん。
リビングからキッチンを見る。来客時でも孤立しないように、ワンルームに近い感覚のオープンな空間を目指した。

リビングからキッチンを見る。来客時でも孤立しないように、ワンルームに近い感覚のオープンな空間を目指した。

造作のキッチンは、寛子さんの使いやすさを追求し、カウンターの高さを調整している。

造作のキッチンは、寛子さんの使いやすさを追求し、カウンターの高さを調整している。

シンプルなデザインの造作の吊り戸棚。また、キッチン前面には、使い勝手のよい立ち上がりを設けた。

シンプルなデザインの造作の吊り戸棚。また、キッチン前面には、使い勝手のよい立ち上がりを設けた。

キッチン横の部屋は書斎として活用している。将来的には区切って使用することも考慮し、敷居を残している。

キッチン横の部屋は書斎として活用している。将来的には区切って使用することも考慮し、敷居を残している。

ストレスを感じない心地良い暮らし

 今回のリノベーションによって、賃貸時代に課題と思っていたところが一気に解決したという林さんご夫妻。「特に生活動線がとても使いやすくなりました。玄関やキッチンも広くなったので、以前の住まいと比べて、住み心地はとても良くなりました」(寛子さん)。
またコロナ禍においても、ストレスを感じることなく過ごすことができたという。
「引っ越してから、しばらく二人とも在宅ワークが続きましたが、ゆとりのある広さだったので、閉塞感を感じることもなく、全くストレスを感じませんでした」と声を揃えるご夫妻。

 開放感と素材感にこだわり、理想的な住まいを実現した林さんご夫妻。最後にこれからの楽しみについて伺った。「古いものと新しいものが建材レベルでバランス良く合わさっているので、どんな家具でも受け入れられるんです。これからはテレビボードや食器棚や本棚など、素材感のある古い家具と置き換えていきたいと思っています」と寛子さん。一方、直弘さんは「趣味のアウトドアグッズなどをオシャレに見えるように家の中にもディスプレイしていきたいなと考えています。趣味と家がマッチするのが理想です」と話す。
笑顔で語るご夫妻の様子からも、この住まいでの充実した暮らしぶりが伝わってきた。

合板でシンプルな作りながらも、フェルトを張ったディスプレイを設け、機能性とデザイン性を考慮した靴箱。

合板でシンプルな作りながらも、フェルトを張ったディスプレイを設け、機能性とデザイン性を考慮した靴箱。

玄関から正面を見る。玄関は二人並んでも靴が履けるように、もともとあった寝室の入口を埋めて靴箱をつくり、玄関のスペースを広くした。

玄関から正面を見る。玄関は二人並んでも靴が履けるように、もともとあった寝室の入口を埋めて靴箱をつくり、玄関のスペースを広くした。

もともと団地特有のコンパクトなつくりだった洗面台を、廊下側にレイアウトを変更することによって、機能性とゆとりある広さを実現した。

もともと団地特有のコンパクトなつくりだった洗面台を、廊下側にレイアウトを変更することによって、機能性とゆとりある広さを実現した。

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