建築家夫婦の住まいアートを身近に置く
水辺のSOHOスタイル
建築設計事務所knofを主宰する菊嶋かおりさんと永澤一輝さん夫妻のオフィス兼住居を訪ねた。およそ築30年ほどのマンションの一室をフルリノベーションした部屋からは、ゆるやかに流れる運河を見下ろせる。「以前住んでいた部屋も水辺を臨めたのですが、一度経験してしまうと心地よくて、この家は地図で川を辿りながら探したんです。それに運河があれば建物も建たないですし」と永澤さん。
もともと4LDKだった77㎡の広さをスケルトンにし、ほとんど仕切りがない空間に設計した。「住む場所と働く場所がオーバーラップするような空間をつくりたかったんです。できるだけ普段見えているスペースを広く取りたかったのと、どうしても生活感が出てしまうトイレや風呂、洗面などの水周りは壁際にまとめました」。
空間の分け方と色使い
玄関を入ると右手に仕事場、正面にキッチン、一段床が上がってフローリング張りのダイニングスペース、そしていちばん奥のベランダ前はタイル敷きの土間のようなスペースとなっている。そして水周りの裏側に、畳敷きの小上がりが寝室スペースとして隠れている。「仕事で使うことを考え、あえてリラックスできるような団らんスペースは設けなかったんです。ですが、土間スペースにソファを置くことにも挑戦してみたいです。緊張感のある良いソファを探しています」と菊嶋さん。
玄関からすぐのキッチンは、冷蔵庫を業務用にすることで高さを抑えてカウンター下に配置。常にカウンター上をすっきりと見せることで、打ち合わせに訪れた人に対するプライベート感を消した。キッチンの窓からは運河、そしてその奥には夕日を背負う都心のビル群の影が見える。
「壁や天井、床に白は使わないようにしようという自分たちの裏テーマもありました。白いもの、例えばイサム・ノグチの和紙の照明や彫刻作品などの白いオブジェクトを引き立たせる空間にしよう、と。設計当時ブラジルの建築をよく見ていて、アースカラーとコンクリートだけという組み合わせに惹かれていたこともあると思いますが」と永澤さん。
玄関からすぐのキッチンは、冷蔵庫を業務用にすることで高さを抑えてカウンター下に配置。常にカウンター上をすっきりと見せることで、打ち合わせに訪れた人に対するプライベート感を消した。キッチンの窓からは運河、そしてその奥には夕日を背負う都心のビル群の影が見える。
「壁や天井、床に白は使わないようにしようという自分たちの裏テーマもありました。白いもの、例えばイサム・ノグチの和紙の照明や彫刻作品などの白いオブジェクトを引き立たせる空間にしよう、と。設計当時ブラジルの建築をよく見ていて、アースカラーとコンクリートだけという組み合わせに惹かれていたこともあると思いますが」と永澤さん。
暮らしにアートを取り入れる
水周りや収納の位置をまとめたことにより必要になったいくつかの扉。「必要な扉は4つなのですが扉として見せたくないなと、全て扉にしてしまうことに。そうすると長く大きなスクリーンのように見えてきて、特徴的な素材、もしくはモチーフがほしいと思いました」と菊嶋さん。画家の池田早秋さんが点描で描いた鯨のモチーフを、拡大して合板に大型プリント。その合板パネルを建具にはめ込んだ。
「池田さんには工事中に来ていただいて、海につながる運河や丸の内のビル群が見えることなどを外の景色を見ながらお話しして、イメージをふくらませていただきました。もともと二人の間で、暮らしとアートをもっと近づけられないか、という話をしていたんです。まずは自宅で実験的にやってみよう、と。それが今後、住宅設計の新しい提案になっていけばいいなと。このパネルは取り替え可能なつくりなので、パネルを替えることで、またその時々のアートを楽しめるんじゃないかと思っています」。積極的に変化していく住まい。次に訪れるのが楽しみになる。
「池田さんには工事中に来ていただいて、海につながる運河や丸の内のビル群が見えることなどを外の景色を見ながらお話しして、イメージをふくらませていただきました。もともと二人の間で、暮らしとアートをもっと近づけられないか、という話をしていたんです。まずは自宅で実験的にやってみよう、と。それが今後、住宅設計の新しい提案になっていけばいいなと。このパネルは取り替え可能なつくりなので、パネルを替えることで、またその時々のアートを楽しめるんじゃないかと思っています」。積極的に変化していく住まい。次に訪れるのが楽しみになる。