ToKoSie ー トコシエ

自然素材に包まれた洞窟(?)空間心身が満たされる
丘の上の穏やかな時間

緑豊かな環境に惹かれて

教会の鐘の音が鳴り響く、横浜の丘の上。
「この辺りで中古物件を探していたんです。ここは目の前に公園があるし、風致地区のため静かで落ち着いていて、初めて見にきて気に入りました」。
不動産関係の仕事に携わる木村さんが購入したのは、昭和45年に建てられたヴィンテージマンションの一室。リノベーションは知り合いだったアトリエ橙の奥山裕生さんに依頼した。
「建築に興味があり学校に通っていたのですが、そのときの講師の方だったんです。いろんな考え方を受け入れてくれて、相談しやすそうだったのでお願いしました」。
和室のある2LDKの42㎡をスケルトンにし、ワンルームとして再構成。
「扉はなるべく最小限にすること、小上がりと土間、ウォークインクローゼットを設けることなど、こちらの要望を伝えました。できあがってきた最初のプランは、ほぼ希望通りでしたね」。
漆喰の壁に包まれ、清涼な空気感が漂うワンルーム。ベランダは公園に面していて、開口部の向こうに緑が広がる。
漆喰の壁に包まれ、清涼な空気感が漂うワンルーム。ベランダは公園に面していて、開口部の向こうに緑が広がる。
ダイニングスペースに設置した鏡が、空間に広がりを感じさせる。
ダイニングスペースに設置した鏡が、空間に広がりを感じさせる。
ウォークインクローゼットにも扉はつけなかった。アーチ型の入り口がやわらかな印象。
ウォークインクローゼットにも扉はつけなかった。アーチ型の入り口がやわらかな印象。
キッチンの脇にタモ材の天板で配膳台を設置。ここで食事をとることもできて便利。
キッチンの脇にタモ材の天板で配膳台を設置。ここで食事をとることもできて便利。

イメージは白い洞窟の家

ベッドルームなども特に設けず、リビング、ダイニング、キッチン、ベッドスペースがワンルームの中に連続して現れる。
「ベッドはソファーにもなるし、横になってテレビを観ることもできます。これは私のアイデアなのですが、ロールスクリーンを下ろせばテレビが隠れて、白い壁に同化してくれます」。
2級建築士の資格を持ち、建築雑誌なども愛読する木村さん。
「欲しかった小上がりは、天井が低いことから一旦取りやめる話になったのですが、それならまわりにフレームを設けて、逆に籠もり感を出してしまいたい、とリクエストしました。リノベするなら小上がりはどうしても設けたいと思っていたので」。
フレームで情景を切り取るかのような小上がりでは、ゆったりお茶を飲んだり、本を読んだり。その脇の造作の机では、力を入れているスペイン語の勉強をするという。
「年に1回くらいはスペインを訪れています。この家も、そもそものイメージはグラナダの白い洞窟の家なんです。天井が低く籠もり感があって、漆喰のザラザラした壁に包まれている感じが希望でした」。
塗装下地用のクロスの上に漆喰を塗った白い壁と、無垢のナラ材の床。部屋中を覆う自然素材が、空気を浄化してくれるような、そんな心地よい感覚に包まれる。
念願だった小上がり。ゲストを招いたときには布団を敷いて、ベッド代わりにも。
念願だった小上がり。ゲストを招いたときには布団を敷いて、ベッド代わりにも。
小上がりとキッチンの間にワークスペースを設けた。スペイン語のテキスト、建築の本などを収める棚も造作で。
小上がりとキッチンの間にワークスペースを設けた。スペイン語のテキスト、建築の本などを収める棚も造作で。
リビングにはソファーベッドを。木のキャビネットは広げればダイニングテーブルになる。塗装用下地の上に塗った漆喰の壁は、ひびが入りにくいのが特徴。
リビングにはソファーベッドを。木のキャビネットは広げればダイニングテーブルになる。塗装用下地の上に塗った漆喰の壁は、ひびが入りにくいのが特徴。
普段はロールスクリーンを下ろし、すっきりとした白い空間に。
普段はロールスクリーンを下ろし、すっきりとした白い空間に。
テレビを観るときはスクリーンをアップ。テレビ用の空間を予め設けた。
テレビを観るときはスクリーンをアップ。テレビ用の空間を予め設けた。

趣味を楽しめる空間づくり

壁の柱を活かした間接照明や、あえて設けたニッチなど、さり気ない細やかなデザインもあちこちに施されている。リノベを担当した奥山さんは、
「木と白い壁のシンプルな空間がベースでした。そこにちょっとしたゆとりを加えて、空間を広々と楽しめるよう考えました。テレビの上の間接照明なども照明学を活かし、目に優しい灯りを考えています」。
洞窟のように包み込んでくれる穏やかさと暖かさ。居心地のよい空間に、友人たちもよく集まってくる。
「キッチンの横の配膳台は、部屋が狭くなるかなと思ったのですが、設置して正解でした。パーティーの時など、飲みものを置いてセルフで楽しんでもらえるんです。決して広くない空間ですが、十分楽しめますね」。
折り畳み式のダイニングテーブルは、畳んでしまえば広々としたスペースに。壁に設置した全身ミラーを前に、フラメンコの練習をするのだそうだ。
「毎日、早く家に帰りたいな、と思うようになりました。暖かいし寛げるんです。朝は東向きの小上がりの窓から光が差し込んできて、爽やかに目覚めることができます。日曜日は教会の鐘の音にスペインを思い出したり。家で過ごす時間が充実していますね」。
水まわりはもともとあった位置に。キッチンにも仕切りはないが、リビングダイニングから、ちょうど見えにくい位置にある。
水まわりはもともとあった位置に。キッチンにも仕切りはないが、リビングダイニングから、ちょうど見えにくい位置にある。
キッチンは白、黒、グレーで統一。“つるつるしすぎていないものがよかった
キッチンは白、黒、グレーで統一。“つるつるしすぎていないものがよかった”ので、木村さんが自ら探したサブウェイタイルを採用。
洗面のヘリンボーン貼りのタイルも自らセレクト。職人さんが3日かけて貼ってくれたそう。セーターが手洗いできるよう実験用のシンクに。
洗面のヘリンボーン貼りのタイルも自らセレクト。職人さんが3日かけて貼ってくれたそう。セーターが手洗いできるよう実験用のシンクに。
玄関には広めの土間を。炭を混ぜたモルタルを敷きやや濃い色合いを出した。
玄関には広めの土間を。炭を混ぜたモルタルを敷きやや濃い色合いを出した。
玄関前の引き戸は薄いグレー。白い空間にアクセントとなっている。
玄関前の引き戸は薄いグレー。白い空間にアクセントとなっている。
白い空間に窓の外の緑が鮮やかに映える。赤い物体は青山スパイラルで見つけた時計。
白い空間に窓の外の緑が鮮やかに映える。赤い物体は青山スパイラルで見つけた時計。
配膳台の上の時計は、床の余り材で作った「アトリエ橙」スタッフからのプレゼント。
配膳台の上の時計は、床の余り材で作った「アトリエ橙」スタッフからのプレゼント。
「家にいるのが幸せなんです」と木村さん。念願のリノベーションを実現。
「家にいるのが幸せなんです」と木村さん。念願のリノベーションを実現。