設備面の問題もクリア   シェア感覚で現代に暮らす 昭和のヴィンテージリノベ

設備面の問題もクリアシェア感覚で現代に暮らす
60年代マンションリノベ

4面開口の貴重な造りを活かして

「購入したのは15年程前。当時は物好きしか買わないような物件でしたが、今や待ちが出るほどの人気のようです」。
というのは一級建築士事務所ミハデザインの光本直人さんと濱名直子さん。ご夫妻とふたりのお子さんが暮らす1963年に建てられたマンションは、その雰囲気と独特の造りが人気だ。
「35世帯全ての住戸に2〜3面の開口があり、戸建てのような箱型で隣と接していないんです。特にこの部屋は正方形の角部屋で、4面に開口があります。この抜け感と、リフォーム前で売り出されていたため自分たちで手を入れられる点が魅力でした」。
DIYを少し施して13年程暮らし、1年半前にスケルトンにして全面的にリノベーションを行った。
廊下を設ける代わりに、中央にキッチン、カウンターを置き東西に渡した。

廊下を設ける代わりに、中央にキッチン、カウンターを置き東西に渡した。

キッチンからつながったリビングダイニング。天井は壊してむき出しに。

キッチンからつながったリビングダイニング。天井は壊してむき出しに。

日当り、風通しのよいLDKはグリーンもよく育つ。床には無垢のオーク材を。

日当り、風通しのよいLDKはグリーンもよく育つ。床には無垢のオーク材を。

シェア感覚の共有部と個室

「まず開口を活かして東西に道を通したい、と思いました。廊下を設けると空間を狭めてしまうので、中央にキッチン、ダイニングを置き共用部として、まわりにはベッドルームや水回りを配しました」。
このマンションは、柱と梁の接合部で支えるラーメン構造。壁で遮られることなく自由にプランを立てられるのも利点だった。
「スケルトンにすると柱と梁、窓だけになりました。パイプスペースも水回りに集中していたので、縛られることなく平面が使えましたね」。
玄関を入ると黒皮鉄のキッチンが現れ、その周りには自然な風合いを感じさせるラワンの引き戸が個室を仕切る。引き戸は梁や開口の高さに揃えられ、上部には飾り棚が縁取りのように施されている。
「子どもの成長に合わせて暮らし方も変わってきますし、いずれここはシェアハウス、シェアオフィスにしてもいいと思っているんです」。
光と風が通り抜ける広々とした共用部は、様々な暮らし方も可能だ。
ダイニングからキッチン方面を見る。光が一直線に通り抜ける。

ダイニングからキッチン方面を見る。光が一直線に通り抜ける。

中央に配したキッチンがアイランドのように空間を仕切る。

中央に配したキッチンがアイランドのように空間を仕切る。

キッチン背面のカウンターには黒皮鉄をあしらった。生の素材感が自然な表情を出し、コンクリートの雰囲気と調和する。奥の本棚も黒皮鉄で作ったもの。「べったりとした黒にならないのが魅力です」。

キッチン背面のカウンターには黒皮鉄をあしらった。生の素材感が自然な表情を出し、コンクリートの雰囲気と調和する。奥の本棚も黒皮鉄で作ったもの。「べったりとした黒にならないのが魅力です」。

開口に合わせて小さな棚を上部に設置。家中をぐるりと取り囲み、ディスプレイが楽しめる。

開口に合わせて小さな棚を上部に設置。家中をぐるりと取り囲み、ディスプレイが楽しめる。

金物屋で作ってもらった脚に天板を載せたダイニングテーブル。照明はもともとダウンライトだったのをペンダントに変えたもの。

金物屋で作ってもらった脚に天板を載せたダイニングテーブル。照明はもともとダウンライトだったのをペンダントに変えたもの。

3部屋欲しかったという個室を、まわりに配置。床は寄せ木張りにして変化をつけた。

3部屋欲しかったという個室を、まわりに配置。床は寄せ木張りにして変化をつけた。

設備面もリノベート

ただ、いちばん頭を悩ませたのは設備面の老朽化だった。
「入居して5年後くらいにお風呂やキッチンの漏水がありました。断熱材も全く使われていなかったので冬も寒かったんです。そこで、1年半前のリノベーションでは配管を全部取り替え、断熱材も入れました」。
床は20cm上げて防音仕様にしたことで、足音問題もクリア。
「実際に住んでみて性能の大切さも感じましたね。今ではすべて改善されて、快適に暮らしています」。
開口があるため、ユニットが入れられなかったバスルームは、タイルをあしらったハーフユニットに。配管のある天井はビス留めをして、問題が生じたときにもすばやく対応できるようにした。
「DIYもやりましたよ。玄関は塗料を重ね塗りしてムラが出るように仕上げました。キッチンの棚などはホームセンターでカットしてもらった板を使って作ったものです」。
引き戸やもともとあった昭和からのドアには、デッドストックの真鍮などを使ってドアノブに。ラフでありながら細かなところにこだわったインテリアが、統一感を生んでいる。
無印良品の収納ケースを使った洗面。トイレは当初からついていたドアを活用し、真鍮の取っ手に付け替えた。

無印良品の収納ケースを使った洗面。トイレは当初からついていたドアを活用し、真鍮の取っ手に付け替えた。

奥はハーフユニットにした窓のあるバスルーム。サンワカンパニーで選んだ洗面はクラシカルな雰囲気。

奥はハーフユニットにした窓のあるバスルーム。サンワカンパニーで選んだ洗面はクラシカルな雰囲気。

玄関を入ると目に飛び込むのが、存在感のあるこのカウンター。少し壁を立ち上げていることで、キッチン側のごちゃつきをカバーしている。不要となったダクトなどを飾りに。

玄関を入ると目に飛び込むのが、存在感のあるこのカウンター。少し壁を立ち上げていることで、キッチン側のごちゃつきをカバーしている。不要となったダクトなどを飾りに。

DIYで作った食器棚。収納ケースがぴったり収まるようサイズを計測した。

DIYで作った食器棚。収納ケースがぴったり収まるようサイズを計測した。

キッチンでの作業をほどよく隠す吊り収納。カゴバッグも収納に活用。

キッチンでの作業をほどよく隠す吊り収納。カゴバッグも収納に活用。

最初は茶色に塗り、その上にシルバーを重ね塗り。

最初は茶色に塗り、その上にシルバーを重ね塗り。

ドアノブは、真鍮の取っ手などをセレクト。

ドアノブは、真鍮の取っ手などをセレクト。

ヴィンテージの魅力

「ここに暮らす人達は、マンション愛がすごいんです。ずっとここに住み続けたいと思っています。だからこそ手をかけて、問題を解決していかなければいけない、と思っているんです」。
バルコニーの造りつけのプランターに育つグリーン、インドアグリーン…。窓をいっぱいに開け放った、風と光と緑がいっぱいのLDKで、そう語るミハデザインのおふたり。共用部も隅々まで美しく、管理も行き届いた「愛される建物」は、まだまだこの先何年も受け継がれていきそうだ。
リビングのTVボードもDIYで作成したそう。

リビングのTVボードもDIYで作成したそう。

室内の共有部分すべて見渡せるダイニング。イスは1脚ずつ揃えていったもの。

室内の共有部分すべて見渡せるダイニング。イスは1脚ずつ揃えていったもの。

バルコニーにはどの住戸にも、もともとプランターが設置されていた。中も外もグリーンがいっぱい。

バルコニーにはどの住戸にも、もともとプランターが設置されていた。中も外もグリーンがいっぱい。

mihadesignの光本直人さんと濱名直子さん。デザインはもちろん、住宅の性能も考えたプランを提案。

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