リノベーションありきの物件探し
料理家の藤山朗子さんが暮らすのは、自由が丘に建つヴィンテージマンション。2007年からこちらのお部屋で、フレンチおうちごはんが習える料理教室
「サロン・ド・キュイジーヌ エッセイエ・ヴ」を主催している。
「自宅で料理教室を開けるところを、と考えて、好きなようにリノベーションができる中古物件を探しました」。
築40〜50年になるこのマンションには新築にはないレトロな味わいがあり、料理教室スペースと藤山さん夫婦のプライベート空間を確保できる広さを兼ね備えている。
「落ち着く雰囲気に惹かれて、こちらに決めました。工夫してリノベーションすれば、料理教室としても住まいとしても、居心地よくできるだろうと感じました」。
パリのアパルトマンをイメージして
藤山さんとフランスの出会いは大学時代。夏休みに1ヶ月間滞在し、日を重ねるほどにその魅力を実感したという。
「何十円で買えるパンが感動するほど美味しいとか、普段着がすごく洗練されているとか、日本とは違う豊かさに惹かれました」。
その後、20代半ばにはフランス留学を体験。高級ホテル「Ritz」の料理学校に通い、フレンチの技術を学んだ。そして今も、年に一度はフランス旅行に出かけ、現地のグルメや文化を味わっているそうだ。そんな藤山さんがリノベーションのテーマとしたのは、おしゃれで心地よい「パリのアパルトマン」だった。
藤山さん宅の玄関扉を開けると、そこはテラコッタタイル敷きが印象的な広々とした空間。たまご色の壁と明るさをおさえた照明が、心を安らげてくれる。
「こちらは、料理教室として使っているパブリックスペース。奥を主人と私のプライベートスペースにしています」。
今の空間を見ると想像もつかないが、元は和室とダイニング、廊下を備えた昔ながらの間取りだったのだという。
また、特に時間をかけて考え抜いたのはキッチン。藤山さんは「こういう風にしたいというイメージがはっきりしていたから、既成のシステムキッチンは一長一短に感じてしまって。そこで、パーツを組み合わせてカスタムメイドできるE:kitchenさんにお願いしました」と振り返る。
ちょっと試しにご一緒にいかが?
料理教室
「サロン・ド・キュイジーヌ エッセイエ・ヴ」の特徴は、フランスの家庭で出てくるような、毎日食べられる体に優しいお料理を教えてくれること。藤山さんは「フレンチって敷居が高いと思われがちですが、家庭料理として考えると、和食より絶対楽だと思います。メインディッシュを一つ決めれば、それにあった前菜さえつくれば形になるんですよ」と微笑む。
ちょっと長いお名前は、「ちょっと試しにご一緒にいかが?」という意味。教室は気軽に楽しめる1回完結型で、5名までの少人数制だ。藤山さんは「お料理は苦手、でも食べるのは好きという方にも、ぜひいらして欲しいです。わざわざ足を運んでいただくので、簡単にできて美味しいソースの作り方を伝授したり、フレンチの料理名の意味をお伝えしたり、何かしら楽しい知識を持ち帰ってもらえるように心がけています」と話す。
また、藤山さんは一昨年に猛勉強の末にソムリエの資格を取得。教室ではワインも提供し、料理とのマリアージュを提案している。
「ワインの世界は本当に奥が深いんです。産地とかぶどうの品種がわかってくると、『なんで自分がこの味を好きか』が説明できるようになって、どんどん楽しくなりますよ」
藤山さんのホスピタリティを詰め込んだこの空間は、たくさんの人に「美味しい食事がくれる満たされた時間」を広めていくのだろう。
料理教室「サロン・ド・キュイジーヌ エッセイエ・ヴ」