アイデアは仕事先で旅先で 日本・フランス文化の ほどよい調和を感じる空間

アイデアは仕事先で旅先で日本・フランス文化の
ほどよい調和を感じる空間

都心にいながら緑に囲まれた暮らし

東南にある大きな窓から日中、常に陽が差し込み部屋を照らす。新宿区という都心にありながら元武家屋敷だった敷地内には大きな木々に囲まれ、都会にいることを忘れてしまうほど。
「街の中心なのに緑に囲まれている環境はなかなか無いですよね。景色を遮る高い建物もありませんし、私達が望む環境が揃っていました」
フランス人のご主人の仕事で香港に住んでいたTさんが家族で日本に戻ってきたのは5年前。これまで外国人向けの賃貸として出されていた物件が分譲で売り出されたのが、たまたま帰国のタイミングだった。
「都心で100㎡以上の広さがあってこれだけの環境がある物件は今後ないと思い購入を決めました」
偶然が重なって購入した築30年、約180㎡の3LDK。部屋を決めてから準備に4ヶ月、施工に4ヶ月かかったリノベーションにはご主人のアイデアが散りばめられている。
サロンには常に日差しが入る。室内をすっきりした空間に見せるため、ボリュームのでるカーテンではなくブラインドを採用。

サロンには常に日差しが入る。室内をすっきりした空間に見せるため、ボリュームのでるカーテンではなくブラインドを採用。

部屋の雰囲気を明るくしたいという想いからベースカラーは白。テレビ台を取り付けるため後ろに大理石のタイルを設けた。

部屋の雰囲気を明るくしたいという想いからベースカラーは白。テレビ台を取り付けるため後ろに大理石のタイルを設けた。

周りにあるアイデアをリノベに活かす

リノベーションの大枠を考えたのはご主人。
「仕事や旅行先で意識して建築やデザインをチェックしていて、好きなものを家に取り入れたいと考えたみたいです。ゼロから作るクリエイティビティはないけど、コピーはできるって彼は言っていますね」
京都の町家でアイデアを得て、取り入れたのはリビングとキッチンの間にあった壁を無くし、そこにメープル素材の格子を入れたこと。窓からの光を奥のキッチンに届くようにした。重たくならないよう角材の間はガラスではなくプラスチックを採用している。
「私は気にしていなかったんですけど、主人が奥まで光が入ったほうが良いと言って設置しました。キッチンにいても他の部屋を見ることができるので私も気に入っています。夜、ライトで照らされると浮世絵を見ているような美しさがありますね」
そんな照明はダウンライトを使った間接照明。そのために天井を高くしたほどのこだわりもご主人によるもの。
「フランスでは間接照明が主流なんです。角度や調光など緻密に計算して、ダイニングテーブルやアートを飾る場所を想定した照明にはこだわっていました」
Tさんは主に色と素材選びを担当した。
「実際に住んでいて心地よいものは何かというのを考えて選びました。日本のショールームは高級感を意識しているのか暗めの物が多いんですね。冬に太陽が出ないせいか、フランスは明るい色調が多いのでそちら寄りになったのかもしれません」
壁を取り払い木の格子にしたことで開放感がある空間に。また、床一面カーペットだった広いサロンの一部を1段上げフローリングにすることで空間の変化を楽しめるようにした。

壁を取り払い木の格子にしたことで開放感がある空間に。また、床一面カーペットだった広いサロンの一部を1段上げフローリングにすることで空間の変化を楽しめるようにした。

照明はテーブルや絵画の位置を把握した上で設置している。

照明はテーブルや絵画の位置を把握した上で設置している。

アクセントになっている主寝室に設けた木製の壁は宿泊したホテルが着物の帯を飾っていたところから着想。Tさんは布や和紙など複数の素材を検討した結果、明るく優しい色合いの木材を取り付けた。

アクセントになっている主寝室に設けた木製の壁は宿泊したホテルが着物の帯を飾っていたところから着想。Tさんは布や和紙など複数の素材を検討した結果、明るく優しい色合いの木材を取り付けた。

主寝室と同じ木製の壁がキッチンにも。無機質な白い壁にぬくもりを与える。左のワインラックはご主人の造作。

主寝室と同じ木製の壁がキッチンにも。無機質な白い壁にぬくもりを与える。左のワインラックはご主人の造作。

広すぎると感じた玄関スペースを壁で仕切ることで書斎用の部屋を作った。

広すぎると感じた玄関スペースを壁で仕切ることで書斎用の部屋を作った。

フランスでは当たり前のようにある暖炉。ご主人の提案でバイオエタノール燃料を使って火をおこすEcoSmart Fireをサロンとリビングの間に設置。

フランスでは当たり前のようにある暖炉。ご主人の提案でバイオエタノール燃料を使って火をおこすEcoSmart Fireをサロンとリビングの間に設置。

アートを身近に感じ楽しむ

ご夫婦が共通で好きなことは歴史のある物やアート系の物を見たり集めたりすること。
「主人は車とかデザインもの、私はアートと古美術が趣味なんです。2人ともストーリーのあるものが好きなんですね」
自宅には絵画や版画、写真、骨董品、著名人によるもの、若手作家のもの、そしてご子息による作品が飾られている。ル・コルビジェなどのデザイナー家具がある一方、香港やインドネシアなど旅行や出張先で購入した無名ブランドのものもある。
「家具とかは一気に買うことはなく、焦らずに少しずつ増やしていきます。旅行や仕事で良い出会いがあったら買うようにしていて、ブランドとかは関係ありません」
“かっこいい 和と洋の融合”がテーマだったというTさんのリノベーション。ご夫婦が趣味でこれまで培ってきたデザインやアートのセンスが、互いの文化を主張しすぎない自然な調和を見せる空間を生み出している。
シャルロット・ペリアン デザインのシェーズ・ロング。

シャルロット・ペリアン デザインのシェーズ・ロング。

本を読んだりする際はDysonのフロアライトを使う。

本を読んだりする際はDysonのフロアライトを使う。

手前のリビングに置かれたル・コルビジェによるデザインのガラステーブルとカッシーナのパルディスチェア。ご主人のこだわりで設置されたライティングが壁にかけられた3枚の福本倫の銅版画を照らす。

手前のリビングに置かれたル・コルビジェによるデザインのガラステーブルとカッシーナのパルディスチェア。ご主人のこだわりで設置されたライティングが壁にかけられた3枚の福本倫の銅版画を照らす。

所々に置かれた古美術はTさんが選んだものが多い。

所々に置かれた古美術はTさんが選んだものが多い。

壁に飾られた墨絵は篠田桃紅の作品。不定期に飾る作品を変える。

壁に飾られた墨絵は篠田桃紅の作品。不定期に飾る作品を変える。

持っていたレコードを額縁に入れて。「フランスではよくやっていることみたいです」とTさん。

持っていたレコードを額縁に入れて。「フランスではよくやっていることみたいです」とTさん。

Tさんの友人でもある陶作家 泉水の作品。友人の作品で気に入った物があれば購入し家に飾る。

Tさんの友人でもある陶作家 泉水の作品。友人の作品で気に入った物があれば購入し家に飾る。

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