デザインのプロの自邸リノベ  和を意識したギャラリー空間で ヴィンテージ家具を愛でる

デザインのプロの自邸リノベ和を意識したギャラリー空間で
ヴィンテージ家具を愛でる

60㎡バルコニー付き物件

ワンストップリノベーションサービスを行う「リノベる」に勤務の古久保拓也さんは、1年程前、築約40年のマンションを購入。
「91㎡の居住スペースに、60㎡のバルコニーが2面を取り囲むように付いているのが魅力的でした。壊せない構造壁や梁があったのですが、設計士がその躯体を活かして間取りを考えつつデザインしてくれました」。
“和”を意識したという空間は、4LDKから3LDK+大容量のウォークインクローゼットにチェンジ。ラーチ合板に塗装した漆黒のような壁面とむき出しのコンクリート、フローリングの床が、古久保さんが愛してやまないヴィンテージの家具を引き立てる。
躯体現しの空間に、無塗装の床、黒塀のような仕切り壁が和モダンな雰囲気。ペンダントライトはハワードミラー社製のジョージ・ネルソン バブルランプ。特殊なプラスチックをスプレーでコーティングしている。

躯体現しの空間に、無塗装の床、黒塀のような仕切り壁が和モダンな雰囲気。ペンダントライトはハワードミラー社製のジョージ・ネルソン バブルランプ。特殊なプラスチックをスプレーでコーティングしている。

家具を含め、部屋全体に白から黒のグラデーションをつけて色彩構成。バルコニーから明るい光が入る。

家具を含め、部屋全体に白から黒のグラデーションをつけて色彩構成。バルコニーから明るい光が入る。

オリジナルの意匠が随所に

「梁や構造壁はあえて出っ張らせたままの意匠にしました。そうすることで印象が変わってくるし、空間を効果的に活かせます」。
リビングのTVボードのある壁は、天井の梁のラインから凹んだ位置に。廊下や個室なども、構造壁のラインにあえて揃えず壁を設定しているのが特徴的だ。
「フローリングがめちゃくちゃ大工さん泣かせだったんです。素材も太さも違う床材を、1枚1枚張ってもらいました」。
素材は無垢のヒッコリーとオーク。通常の床材よりも細く、かつ不揃いな太さの材を無作為に張った。
「細いほうがシャープに見えて、空間が締まると思うんです。普通は塗装するのですが、あえて無塗装にして、汚れが味に変わってくるのを狙いました」。
漆黒の壁は木目が浮き出て見えるのが味わい深い。
「表情のある荒々しい表面感を出したかったので、自分でサンディングしてうづくり仕上げを狙いました」。
古久保さんにとってリノベーションは2回目。以前よりも広くなった今回は、「たくさんある家具でシーンが作れる空間づくり」がテーマだった。
黒塀に包まれた廊下。細くシャープな床板がリビングまで続いている。構造壁をあえて出して個性的に。hysteric Daido vol.8のポスター下の1800年代シンガーミシンのイスは、イスにリクライニング機能をもたせた初期のもので、現在インダストリアル家具のアイコンのひとつになっている。

黒塀に包まれた廊下。細くシャープな床板がリビングまで続いている。構造壁をあえて出して個性的に。hysteric Daido vol.8のポスター下の1800年代シンガーミシンのイスは、イスにリクライニング機能をもたせた初期のもので、現在インダストリアル家具のアイコンのひとつになっている。

壁のオブジェはかつてフランス大使館が所蔵していたウミウチワ。ピエール・ジャンヌレの代表作であるPJ-010104T チークアームチェアも鎮座。

壁のオブジェはかつてフランス大使館が所蔵していたウミウチワ。ピエール・ジャンヌレの代表作であるPJ-010104T チークアームチェアも鎮座。

うづくり模様が美しい壁のニッチに、和テイストの花をアレンジ。右手の“ほとんど座れないイス”は、ブルックス社のサドルを使ったザノッタのSELLA。「機能を無視しても成り立つプロダクトです」。

うづくり模様が美しい壁のニッチに、和テイストの花をアレンジ。右手の“ほとんど座れないイス”は、ブルックス社のサドルを使ったザノッタのSELLA。「機能を無視しても成り立つプロダクトです」。

柳宗裡のエレファントスツールを鉢植えの台座に。フロアスタンドはドイツかイタリアのもの。

柳宗裡のエレファントスツールを鉢植えの台座に。フロアスタンドはドイツかイタリアのもの。

それぞれの居場所でステイホーム

テレワークが続く今、古久保さんはワークスペースで過ごすことが多い。
「ピエール・ジャンヌレのデスクに、初任給で購入した20年以上愛用しているアーロンチェアで仕事しています。日当りもよくて快適です」。
グラフィックデザイナーとしてロンドンで活動、その後アンティークのバイヤーに。アンティークマーケットで購入した雑貨や、ヴィンテージの家具、現代的なグラフィックアートなどが混在する。
「イスは今現在17、18脚ほど持っていて、前の家はイスに覆われて生活している感じでした(笑)。今は自分の空間があって、贅沢な使い方ができますね」。
ワークスペースには、1950年代のイームズPKWも。妻・あゆみさんは、
「朝起きると家具の配置が変わっていたり、突然、不必要なイスが届いたりするんですよ」と笑う。
あゆみさんの居場所は、黒がテーマのリビングダイニングからグラデーションをつけ、やや明るいトーンにしたキッチン。
「壊せない壁があったため独立型にしたのですが、自分のプライベートなスペースにもなり、良かったと思っています。友人の職人さんに造作してもらった机で、ハーブの勉強などをしています」。
高級感を演出するため床は石のタイルに。取っ手などのパーツ、壁のタイル、間接照明などにもこだわった空間にバルコニーから明るい光が差し込む。
ワークスペースの床はラワンで。ラーチ合板を使い、すっきりさせられるようにウォークインタイプにした収納と、本棚を設けた。

ワークスペースの床はラワンで。ラーチ合板を使い、すっきりさせられるようにウォークインタイプにした収納と、本棚を設けた。

1950'sのイームズ PKWは、木の脚で回転するところがレア。突き当たりの壁はDIYで作成したもの。左手に本棚、右手が収納。

1950’sのイームズ PKWは、木の脚で回転するところがレア。突き当たりの壁はDIYで作成したもの。左手に本棚、右手が収納。

グラフィティアーティストのTILTによるユニオンジャックのプリントの下には、イギリスのEVERTAUTのインダストリアルチェア。そこにGRAS no 201を。

グラフィティアーティストのTILTによるユニオンジャックのプリントの下には、イギリスのEVERTAUTのインダストリアルチェア。そこにGRAS no 201を。

インドから来たピエール・ジャンヌレのPJ-030405 チークデスクで仕事をする古久保さん。

インドから来たピエール・ジャンヌレのPJ-030405 チークデスクで仕事をする古久保さん。

明るいモノトーンにした独立型のキッチン。キッチン台は収納を豊富に造作。水切りをシンクの内側に設定するなどをリクエストした。妻専用のテーブルはここに収まるサイズを考え、木の脚とウレタン塗装の天板で造作したもの。

明るいモノトーンにした独立型のキッチン。キッチン台は収納を豊富に造作。水切りをシンクの内側に設定するなどをリクエストした。妻専用のテーブルはここに収まるサイズを考え、木の脚とウレタン塗装の天板で造作したもの。

石のタイルや真鍮の取っ手が高級感を与える。あゆみさんはハーブの研究中。「いずれはベランダでハーブを育てたいですね」。 

石のタイルや真鍮の取っ手が高級感を与える。あゆみさんはハーブの研究中。「いずれはベランダでハーブを育てたいですね」。 

凹凸があり掃除がしやすいタイルをセレクト。鉄板の後側に間接照明をつけている。

凹凸があり掃除がしやすいタイルをセレクト。鉄板の後側に間接照明をつけている。

趣味を活かせる家づくり

「中学時代にミッドセンチュリー家具が少しずつ日本に入り込み、そこからイスにはまっていきました。同じデザイナーのプロダクトは2つ持たないと決めています(笑)」。
アルネ・ヤコブセンのダイニングテーブルにセッティングされたイスは、イームズ始め、アレキサンダー・ジラルド、剣持勇など。黒を基調とした和モダンな空間に映える。
「自分のギャラリーという思いがありますね。本当はもっととがってやりたいけれど、子供もいるので抑えめにしているところもあります(笑)」。
今後は広々としたバルコニーにも着手していきたいそうだ。
「花壇をつくってハーブやグリーンを育てたり、子供が楽しく遊べるようにしたりしたいと思っています」。
家族みんなが楽しめる家へと日々進化を続ける。
様々なブランドを揃えたダイニングの家具は、黒で統一。右手にキッチンがある。

様々なブランドを揃えたダイニングの家具は、黒で統一。右手にキッチンがある。

左の丸テーブルはAlvar Aaltoの model 70 table。Finmar社製。右手はスクラップ材で家具を作るピート・ヘイン・イークのイスで、長男のファーストチェア。

左の丸テーブルはAlvar Aaltoの model 70 table。Finmar社製。右手はスクラップ材で家具を作るピート・ヘイン・イークのイスで、長男のファーストチェア。

長男・多桜くん(2歳)が座るのは、1960年代のジョージ ナカシマのラウンジアームチェア。アームはひとつひとつ異なるデザイン。イスでアートの英才教育中の、古久保さんのインスタグラムにも注目。

長男・多桜くん(2歳)が座るのは、1960年代のジョージ ナカシマのラウンジアームチェア。アームはひとつひとつ異なるデザイン。イスでアートの英才教育中の、古久保さんのインスタグラムにも注目。

モンキーレンチの発明で有名なスウェーデンのヨハン・ペーター・ヨハンソンのアンティークランプ。スウェーデンのオークションで購入したそう。 

モンキーレンチの発明で有名なスウェーデンのヨハン・ペーター・ヨハンソンのアンティークランプ。スウェーデンのオークションで購入したそう。 

アンティークの義足やトランク、小箱など、蚤の市などで見つけたお宝をディスプレイ。手前のイスはマルセル・ワンダースデザインのKnotted Chair。

アンティークの義足やトランク、小箱など、蚤の市などで見つけたお宝をディスプレイ。手前のイスはマルセル・ワンダースデザインのKnotted Chair。

組み合わせが無限なスウェーデンの壁掛け収納システム、ストリングを。壁を彩るようにコーディネート。 

組み合わせが無限なスウェーデンの壁掛け収納システム、ストリングを。壁を彩るようにコーディネート。 

手織りのラグは、アフガニスタンの民藝品ウォーラグ。戦車などがモチーフで、戦争批判の意味が込められている。

手織りのラグは、アフガニスタンの民藝品ウォーラグ。戦車などがモチーフで、戦争批判の意味が込められている。

ヴィトラのソファーまわりに集う古久保さん一家。鉄製のソファーテーブルは、“羊羹”をイメージして古久保さんの先輩にデザインしてもらったオーダーメイド。施工は「リノベる。

ヴィトラのソファーまわりに集う古久保さん一家。鉄製のソファーテーブルは、“羊羹”をイメージして古久保さんの先輩にデザインしてもらったオーダーメイド。

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