“Less is More”を具現 ミニマルな空間に宿る
本当の豊かさ
こだわり抜いた作品としての家
デザインユニット「トネリコ」の米谷ひろしさん、増子由美さんご夫妻が現在暮らすのは、都心に建つ70年代のヴィンテージマンション。10年程前に購入し、自らリノベーションを行った。
「その前に住んでいた物件もリノベをしたのですが、まだ若かったので予算的にすべてできたわけではありませんでした。ここは独立前に初めてフルリノベーションを行った空間です。作品として考えていたので、細かいところまでこだわり抜いています」
と、米谷さん。増子さんが希望するイメージを米谷さんが図面化。細かな素材やカラーなども共有してプランニングした。
「デザインのツボがふたり一緒なので、プランは立てやすかったですね。0から伝えなくても9から始めれば10になる。それは大事ですね」
と増子さんは語る。
「その前に住んでいた物件もリノベをしたのですが、まだ若かったので予算的にすべてできたわけではありませんでした。ここは独立前に初めてフルリノベーションを行った空間です。作品として考えていたので、細かいところまでこだわり抜いています」
と、米谷さん。増子さんが希望するイメージを米谷さんが図面化。細かな素材やカラーなども共有してプランニングした。
「デザインのツボがふたり一緒なので、プランは立てやすかったですね。0から伝えなくても9から始めれば10になる。それは大事ですね」
と増子さんは語る。
エントランスをLDKに見立てる
もともとは70㎡ほどの空間が3LDKに細かく分かれていた。壁などすべて取り払いスケルトンにしてワンルームに。
「集合住宅なので配管は移動させられません。それを見越した上で解体してみたら、洗面所の入り口の位置を変えることができました」。
もともとリビング側にあった入り口をキッチン前に移動させ、配管を避けてコンパクトに設計。ここはエントランスホールでもあるが、三和土(たたき)はなく、まるでLDKの一角のよう。
「造作した鏡の引き戸を閉めれば玄関のドアが隠れて、エントランスが部屋の一部のようになります。暗くなりがちな玄関や廊下を明るい場所にすることと、空間を有効的に使うことを考えました」。
靴は、エントランス脇に設けられたシューズクローゼットの中に入れてしまえば、何も邪魔するもののない空間に。落ち着いたグレーのセラミックタイルの床がそのままリビングまで連なり、導いてくれる。
「集合住宅なので配管は移動させられません。それを見越した上で解体してみたら、洗面所の入り口の位置を変えることができました」。
もともとリビング側にあった入り口をキッチン前に移動させ、配管を避けてコンパクトに設計。ここはエントランスホールでもあるが、三和土(たたき)はなく、まるでLDKの一角のよう。
「造作した鏡の引き戸を閉めれば玄関のドアが隠れて、エントランスが部屋の一部のようになります。暗くなりがちな玄関や廊下を明るい場所にすることと、空間を有効的に使うことを考えました」。
靴は、エントランス脇に設けられたシューズクローゼットの中に入れてしまえば、何も邪魔するもののない空間に。落ち着いたグレーのセラミックタイルの床がそのままリビングまで連なり、導いてくれる。
計算し尽くした“壁のような収納”
「人を招くことを前提にデザインしたんです」。
シンプルでミニマルなモノトーンのリビングは、天井高が上げられ開放感に包まれる。
「隣にベッドルームを設けましたが、壁ではなくクローゼットを仕切りにしています。天井もあえて開けて、空間を分断しないようにしました。人の気配を残したかったんです」。
壁のように見える、グリッド状のパネルで構成された面はすべて壁面収納の扉。これを開くと衣類を中心に生活用品が現れる。
「何もない状態で生活したいので、収納も大事なテーマでした。師である内田繁が言っていたのは、“一般の人が驚くくらいじゃないとプロじゃない”ということ。寸法にとことんこだわり“壁に見える収納”を追求しました」。
面として美しく見える600mmまでのサイズを守って扉の幅を設定。手をかける目地の幅はギリギリ指が入る13mmの細さに。マットな真白の面に細い目地がシャープなラインを描く。
「自分の家なのでギリギリに挑戦してみる、実験的な意味合いもありました。結果としてデザイン的にも収まりがよく、さらに掃除もしやすくてクリーンに過ごせる空間になりました」。
シンプルでミニマルなモノトーンのリビングは、天井高が上げられ開放感に包まれる。
「隣にベッドルームを設けましたが、壁ではなくクローゼットを仕切りにしています。天井もあえて開けて、空間を分断しないようにしました。人の気配を残したかったんです」。
壁のように見える、グリッド状のパネルで構成された面はすべて壁面収納の扉。これを開くと衣類を中心に生活用品が現れる。
「何もない状態で生活したいので、収納も大事なテーマでした。師である内田繁が言っていたのは、“一般の人が驚くくらいじゃないとプロじゃない”ということ。寸法にとことんこだわり“壁に見える収納”を追求しました」。
面として美しく見える600mmまでのサイズを守って扉の幅を設定。手をかける目地の幅はギリギリ指が入る13mmの細さに。マットな真白の面に細い目地がシャープなラインを描く。
「自分の家なのでギリギリに挑戦してみる、実験的な意味合いもありました。結果としてデザイン的にも収まりがよく、さらに掃除もしやすくてクリーンに過ごせる空間になりました」。
何もないからものの美しさが映える
エントランスにあるキッチンは、腰壁に床と同じセラミックタイルを使用した。
「玄関を入ったときに、手元が見えないように腰壁の高さを考えました。これも初めてやってみたことのひとつです」。
キッチン背面の収納の扉は、開け閉めや出し入れがスムーズにできるよう片開きに。生活上の動作も計算済みだ。
「料理はダイニングのテーブルに運んでいただきます。床に直接座るのも気持ちよくて、ゴロゴロしたりしていますよ(笑)」。
目地の多いフローリングに比べすっきり見えることと、経年変化しない素材感が魅力だったセラミックタイルの床は、夏は冷んやりと涼しく、冬は床暖房により暖かい。空をイメージして薄いグレーでグラデーションをつけた天井の下に広がる空間には、静寂な空気感が漂う。
「“Less is more”というミース・ファン・デル・ローエの言葉がありますが、何もないミニマルな状態が、自分たちがいちばん心地よく過ごせる空間なんです。茶の湯文化にも通じるのですが、何もないからこそ、器であったり、アートであったり、そこにあるひとつのものが美しく見えてきます。そういうレスの状態をつくりたい、という思いを結集させ誕生した家ですね」。
「玄関を入ったときに、手元が見えないように腰壁の高さを考えました。これも初めてやってみたことのひとつです」。
キッチン背面の収納の扉は、開け閉めや出し入れがスムーズにできるよう片開きに。生活上の動作も計算済みだ。
「料理はダイニングのテーブルに運んでいただきます。床に直接座るのも気持ちよくて、ゴロゴロしたりしていますよ(笑)」。
目地の多いフローリングに比べすっきり見えることと、経年変化しない素材感が魅力だったセラミックタイルの床は、夏は冷んやりと涼しく、冬は床暖房により暖かい。空をイメージして薄いグレーでグラデーションをつけた天井の下に広がる空間には、静寂な空気感が漂う。
「“Less is more”というミース・ファン・デル・ローエの言葉がありますが、何もないミニマルな状態が、自分たちがいちばん心地よく過ごせる空間なんです。茶の湯文化にも通じるのですが、何もないからこそ、器であったり、アートであったり、そこにあるひとつのものが美しく見えてきます。そういうレスの状態をつくりたい、という思いを結集させ誕生した家ですね」。