80㎡未満のお一人様リノベ 重厚感のある壁が主役。物件のもち味を生かして。

80㎡未満のお一人様リノベ重厚感のある壁が主役。物件のもち味を生かして。

物件探しは交通の便よりも、環境の充実を優先。

東京都内に建つ築33年、総面積77㎡のマンション。イラストレーターの島田桂子さんは2年前に購入したこの物件をリノベーションして、昨年の春から暮らしている。
「引っ越しを考えたときに、賃貸で借りるよりも買って自分の好きな部屋にして暮らしたいなと思ってリノベーションを決めました」と島田さん。
小高い丘の上に建つこのマンションは、豊かな緑に囲まれ、心地よい風が吹き抜ける。
「駅近じゃなくていいので、静かで緑があるところを優先して物件を探していたら、ここを見つけました。出かけるときは基本、原付バイクです。晴れた日は気持ちいいですよ」と続けた。
そして内装デザインを手掛けたのは、Small Design Studio社の大内久美子さん。雑誌『&Premium』で大内さんの手掛けた物件を見かけたことがきっかけで今回の依頼に至ったという。
「雑誌で見たデザインをとても気に入っていたので、基本的には大内さんにお任せで進めていただきました。あとは予算との調整でしたね。最初の予算より200万円ほど削る必要があったので、自分でできるところは自分でやりました」
そう話す島田さんは、リビングの壁面の塗装を自らDIYで仕上げた。
「夏休みと有給を使って、友達と2人で一週間かけて塗りました。塗装代だけでも60万円くらいは削減できたと思います」
日中は仕事場として利用しているリビング。

日中は仕事場として利用しているリビング。

キッチンからリビングへの眺め。

キッチンからリビングへの眺め。

ダイニングテーブルは「THE CONRAN SHOP」で購入。

ダイニングテーブルは「THE CONRAN SHOP」で購入。

築33年、総面積は約77㎡。

築33年、総面積は約77㎡。

オキナインコのかぐらちゃん。

オキナインコのかぐらちゃん。

「IDEE」のベンチソファ。

「IDEE」のベンチソファ。

奥多摩のガレージに眠っていたヴィンテージキャビネット。

奥多摩のガレージに眠っていたヴィンテージキャビネット。

ノコギリザメの顎など好きな小物を飾って。

ノコギリザメの顎など好きな小物を飾って。

涼しげなラタンチェアは「SLOW HOUSE」のもの。

涼しげなラタンチェアは「SLOW HOUSE」のもの。

柱や梁を使わない、壁式構造とは?

この家を語る上で欠かせないのが、壁式構造ならではの重厚感のある壁だ。壁式構造とは、柱や梁を使わずに、壁そのもので躯体を支える構造のことをいう。内装デザインを手掛けた建築士の大内さんは、こう説明してくれた。
「この家のように壁自体が構造体になっている物件は、低層マンションに多いです。この構造だと壁を取り払うことができないので、新しい間取りを計画するときの制約になりがちです。しかしこの分厚いコンクリートの壁圧をうまく生かせば、普通の壁には出せない重厚感のある空間ができあがります。間取りをすっかり変えたいと思う方には不向きかもしれないですが、物件の持ち味を生かすという意味では、他にはない魅力的な部屋づくりができる構造だと思います。なかにはこの壁が好きで、壁式構造の物件を選ぶ方もいらっしゃいますよ」
この物件の場合は、部屋の中央を横切る壁の構造体を境に、キッチンとリビングを緩やかに仕切る間取りになった。もともとはキッチンの隣に和室があったが、間の壁を取り払い広々としたキッチンが完成した。また、ふすまとドアのあった部分はそのまま生かし、白壁にぽっこり穴の開いた個性的な通路へと生まれ変わった。
障子の内窓はもともとこの物件にあったものを再利用した。

障子の内窓はもともとこの物件にあったものを再利用した。

キッチン部分の総面積は約18㎡。

キッチン部分の総面積は約18㎡。

飾っている小物は羽根木の雑貨店「Out of museum」のものが多数。

飾っている小物は羽根木の雑貨店「Out of museum」のものが多数。

「kitchenhouse」のオーダーキッチン。

「kitchenhouse」のオーダーキッチン。

取り除けない壁の躯体を生かした間取り。

取り除けない壁の躯体を生かした間取り。

ガスコンロは「NORIZ」の+do(プラスドゥ)。

ガスコンロは「NORIZ」の+do(プラスドゥ)

冷蔵庫を収納する柱を造作。上部にはレンジフードのダクトが通っている。

冷蔵庫を収納する柱を造作。上部にはレンジフードのダクトが通っている。

窓の外は約22㎡のルーフバルコニー。

窓の外は約22㎡のルーフバルコニー。

カーテンの代わりに、「ニトリ」のコードレスハニカムシェードを採用。

カーテンの代わりに、「ニトリ」のコードレスハニカムシェードを採用。

自由度の高い「kitchenhouse」のオーダーキッチン。

ほとんど毎日自炊をしているという料理好きの島田さん。ここへ引っ越してからは、ベランダでハーブや野菜を育てながら、ますます料理の時間を楽しんでいるそうだ。
「最近はタイ料理にはまっていて、ガパオライスやグリーンカレーをよく作っています。今ベランダでホーリーバジルとコブミカンの葉を育てているのですが、摘み立ての葉だと香りが全然違いますよ。これを入れるだけで一気に本場のタイ料理になります」
そして料理をする機会が増えると共に、増えていったのが食器のコレクション。キッチンの後ろには、しっかりと収納力のあるバックカウンターを設けた。
「キッチンとバックカウンターはどちらも「kitchenhouse」でオーダーしました。天板や腰壁の色まで細かくオーダーできるのが魅力です。かなり大きなサイズのキッチンを選んだのですが、色を統一したことですっきりとした印象にまとまったと思います」と大内さん。
「半分は食器やキッチン用品、もう半分は生活用品や日用品を収納しています。使い切れないくらいの収納力だなと思っていましたが、住み始めたらちょうどよかったです」と島田さんが続けた。
最後に、これからのことを聞いてみた。
「いまソファが置いてある場所に、置き家具ではなく作り付けのソファを作れたらいいなと考えています。この家に一番ピタッとはまる家具を揃えていくのが理想です。住んでいくなかで気がつくことや変化していくこともあるので、住みながら居心地のいい家づくりをしていければいいなと思っています」と、笑顔で締め括ってくれた。
洗面台の右にはトイレ、左には浴室がつづく。

洗面台の右にはトイレ、左には浴室がつづく。

トイレには扉をつけず、洗面所と同空間に設置。

トイレには扉をつけず、洗面所と同空間に設置。

洗面ボウルは「サンワカンパニー」のアッセを採用。

洗面ボウルは「サンワカンパニー」のアッセを採用。

寝室は約12㎡と広々。

寝室は約12㎡と広々。

12歳になるチロちゃん。2匹の愛猫と暮らす。

12歳になるチロちゃん。2匹の愛猫と暮らす。

玄関のすぐ隣に寝室がある。

玄関のすぐ隣に寝室がある。

木の枝をそのまま生かしたハンガーラックは「IDEE」で購入。

木の枝をそのまま生かしたハンガーラックは「IDEE」で購入。

リノベーションは「Small Design Studio」が担当。

リノベーションは「Small Design Studio」が担当。

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