経年の変化を楽しむ  仕事も家時間も快適 光と風が回遊するワンルーム

経年の変化を楽しむ 仕事も家時間も快適
光と風が回遊するワンルーム

リモートワークが購入のきっかけに

「1年程前、リモートワークが本格化することになって、引っ越しを考えたんです」。
佐藤さんご夫婦のマンション購入計画は、コロナ禍がきっかけだった。1カ月弱で見つけた築36年の物件を即決することに。
「内見したのはここを含めて2軒だけです。見晴らしがよく、光と風が抜ける造りが理想的でした。もともと不動産関連の仕事に携わっていて物件はたくさん見ているので、迷いはなかったですね」。
と語る夫の諒さんは、都内の中古・リノベーション住宅を販売する「cowcamo」に勤務。
「以前はよく仲間のスタッフの家に行っていたのですが、どこも素敵な空間で憧れていました。自分たちの住まいも、ゼロから考えられるリノベーションが前提でしたね」。
というのは妻・早矢さん。ふたりが好きなデザインや内装の画像などを集めて、会社でつきあいのある建築士さんに設計を依頼した。
都心の高台に建つマンションの1室。光がたっぷり差し込み、グリーンもよく育つ。

都心の高台に建つマンションの1室。光がたっぷり差し込み、グリーンもよく育つ。

土間に設けたワークスペース。DIYした本棚が、ベッドルームとの間仕切りに。

土間に設けたワークスペース。DIYした本棚が、ベッドルームとの間仕切りに。

ガラスの引き戸で光を通す

設計士さんには、「ワークスペースを設けること」、「風の抜けがよく、リビングにしっかり光が入る間取りにすること」をリクエスト。
「3つほど出してもらったプランの中でいちばんフィットしたのは、全体をワンルームのように使う、回遊できるプランでした」。
廊下に連なる収納を挟んで、ワークスペース、ベッドルーム、LDKがぐるりと回遊できる間取りに。収納と天井の間は空いているので、2方向にある開口から入る光や風が、家中を通り抜ける。
「音は届くけれど閉塞感がなく、ふたりでリモートワークしていたときも快適でした。前の家なら病んでいたかもしれませんね(笑)」。
LDKと居室、廊下を仕切るのは造作した大きなガラスの引き戸。開けても閉じても、家中どこにいてもつながりが感じられる。
廊下までカバーするガラスの引き戸。ワークスペース側の開口から、ベランダ側の開口に光が抜ける。

廊下までカバーするガラスの引き戸。ワークスペース側の開口から、ベランダ側の開口に光が抜ける。

収納がベッドルームとの仕切りに。天井は塞がず開けて上部に間接照明を施した。収納の取っ手を引くと、クローゼット、ストレージ、洗濯機が現れる。

収納がベッドルームとの仕切りに。天井は塞がず開けて上部に間接照明を施した。収納の取っ手を引くと、クローゼット、ストレージ、洗濯機が現れる。

玄関を入るとシューズクローゼットの向こうに土間のワークスペースが。

玄関を入るとシューズクローゼットの向こうに土間のワークスペースが。

ワークスペースから玄関方向を見る。引き戸を閉めることも可。

ワークスペースから玄関方向を見る。引き戸を閉めることも可。

アイアンの格子がシックな雰囲気。ペンダントライトはイサム・ノグチ。 

アイアンの格子がシックな雰囲気。ペンダントライトはイサム・ノグチ。 

ベランダへと光が抜ける。どこか和モダンなテイストに癒される。

ベランダへと光が抜ける。どこか和モダンなテイストに癒される。

偏りすぎない雰囲気に

内装は特に譲れないものがあった。
「経験変化で趣きが出てくる素材感がふたりとも好きなんです。ただ、全体を木で統一するとやわらかすぎてしまうので、ちょっとピリッと無機質な感じをプラスしたいと思いました」。
深い色味の家具に似合うようチークのフローリングにしつつ、壁の一面にはモルタルを塗装。ワークスペースは土間にして雰囲気を変えた。
「壁は躯体現しでと思ったのですが、壁紙を剝がしてみたら、糊の跡が目立ってしまって。インダストリアルになりすぎるのも違うかなと」。
グレーのタイルで床を切り替えたキッチンは、色々探した中で、ラワンの風合いがイメージにぴったりだったtoolboxのものに。それに合わせてキッチン脇のサニタリーへの扉も、ラワン素材で造作した。
「カーテンレールもtoolboxで選び、DIYで取り付けました。キッチン台ありきでコーディネートしています」。
ラワンの面材+ステンレスの天板が気に入ったキッチン台はtoolboxで。キッチンまわりの床はタイルで切り替えた。

ラワンの面材+ステンレスの天板が気に入ったキッチン台はtoolboxで。キッチンまわりの床はタイルで切り替えた。

ダイニングテーブルはネットで探したG-PLANのヴィンテージ。イスも1客ずつヴィンテージを探し求めた。

ダイニングテーブルはネットで探したG-PLANのヴィンテージ。イスも1客ずつヴィンテージを探し求めた。

リビング〜ベッドルーム〜ワークスペースの一連の壁をモルタル塗装で。チークの床に馴染むTVボードはACME Furnitureで購入した。

リビング〜ベッドルーム〜ワークスペースの一連の壁をモルタル塗装で。チークの床に馴染むTVボードはACME Furnitureで購入した。

土間のワークスペースにはグリーンを。LDKと雰囲気が変わり、気分を切り替えられるそう。

土間のワークスペースにはグリーンを。LDKと雰囲気が変わり、気分を切り替えられるそう。

ヴィンテージを愛でる

ドアノブや、床の切り替え、引き戸のレール部分…。ディーテールにはさり気なく真鍮があしらわれ、趣きのある温かな雰囲気に。
「ガラスの引き戸の枠や格子に使ったアイアンは、経年変化が出るものを選びました。同じ素材でも色々と違うらしいんです」。
細部までこだわった空間には、おふたりが好きなヴィンテージの家具や古道具を配置。やわらかなガーゼのカーテンの向こうには、東京・城南エリアの景色が遠くまで広がっている。
「空気のたまる場所がないのが何より良かったですね。好きなインテリアに囲まれて、快適に過ごせています」。
実は、この秋にはおふたりに赤ちゃんが誕生するそう。土間にベビーベッドを置くなど、現在、色々と計画中。リモートで始まった自由に回遊できるワンルームは、様々な住まい方にも対応してくれそうだ。
造作の棚板で、お気に入りの陶器の器を“見せて”収める。棚板下のtoolboxの真鍮バーはDIYで設置。

造作の棚板で、お気に入りの陶器の器を“見せて”収める。棚板下のtoolboxの真鍮バーはDIYで設置。 

ガラス作家・安土草多さんのペンダントライト。温もりのある明かりが灯る。

ガラス作家・安土草多さんのペンダントライト。温もりのある明かりが灯る。

toolboxの木製カーテンレールと、ガーゼのカーテンがお気に入り。

toolboxの木製カーテンレールと、ガーゼのカーテンがお気に入り。

洗面台の蛇口、引き戸の取っ手も真鍮を使用。

洗面台の蛇口、引き戸の取っ手も真鍮を使用。

古道具を見つけては購入するそう。美しい色彩の絵は、知人が早矢さんをイメージして描いたもの。  

古道具を見つけては購入するそう。美しい色彩の絵は、知人が早矢さんをイメージして描いたもの。

収納の取っ手も真鍮。ダイニングにはトルコのヴィンテージラグを敷く。

収納の取っ手も真鍮。ダイニングにはトルコのヴィンテージラグを敷く。

佐藤諒さんと早矢さん。お子さんを迎えて、住まい方を考えるのも楽しみ。

佐藤諒さんと早矢さん。お子さんを迎えて、住まい方を考えるのも楽しみ。

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