アトリエとしての住まいインスピレーションが沸きあがる
トキメキを大切にした実験室
1棟リノベ物件と出会って
「都心で駅近の、リノベーションができるマンションを探していたんです」。
というテーブルコーディネーターの菅野有希子さん。1棟丸ごとリノベーションして販売する、築15年のマンションに出会ったのは4年程前。
「新築も見ていたのですが、一部屋ずつが狭く、開放感が感じられる物件がなかったんです。この部屋はもともと80㎡弱の1LDKで、窓の多い東南角部屋。明るい日差しも入っていました。この条件を活かしてリノベーションをすれば、さらにオープンな空間がつくれると思いました」。
エントランスなど、明るくモダンな雰囲気にリノベートされた共有部も気に入ったそう。マンション全体を担当していたリビタの、モデルルームを担当していた女性建築家に相談して進めることに。
格子戸で緩やかに間仕切りを
「開放的な間取りにすること、床をヘリンボーン張りにすること、ガラス戸を取り入れること、タイルを使うことといった、譲れない条件をお伝えしてプランを立てました」。
間取りや水回りの位置はほぼ変えず、ヘリンボーン張りのLDKを中心としたワンルームのようなプランに変更。玄関を入るとスケールの大きいキッチン、光が通過する格子戸のベッドルームが目に飛び込んでくる。
「格子戸は、危なくないように透明アクリルとアルミフレームで造作したものです。開けておけば部屋全体がワンルームになるし、閉じておいても光が抜けて視界が遮られません。家にいる時間が長いので、広々とした空間で心地よく過ごせるのが有り難いですね」。
菅野さんはフリーランスでテーブルコーディネートをはじめ、食や住に関するスタイリング、商品開発などの仕事に携わっている。
「ここは私にとってアトリエでもあるんです。実験的に色々なコーディネートを試しています。家は心地よい場所であるのと同時に、インスピレーションの沸く空間であって欲しいですね」。
様々なテイストをミックスさせて
どこを切り取っても絵になる空間は、菅野さんがネットや写真集などから気になるインテリアを集めて実現させたものだ。
「気になるものを集めている中で、自分は海外のアパルトマンのような雰囲気が好きなのだと気づきました。細かなパーツや素材など、建築家さんに紹介してもらったり、自分で探したりして、理想の空間を目指しました」。
存在感のあるキッチンは、既存のシステムキッチンに面材を貼ってモールディングを施し、真鍮の取っ手を取り付けて完成した。
「仕事柄もあり器をたくさん持っているので、アイランドに棚を増設しています。パントリーに加えてアイランド上に吊り収納も取り付けました」。
薄いグレーのキッチンの面材は、リビングのアクセントウォール、サニタリーの壁紙のグレーとグラデーションになっている。
「リビングの2面は開口なので、唯一の壁である部分に収納を設けますか? と聞かれたのですが、それよりもディスプレイスペースにしたいと思い、アクセントウォールに仕上げました。色々なアレンジを楽しんでいます」。
家具はアンティークあり、ヴィンテージあり、インダストリアル系ありと、様々にミックス。
「同じテイストで揃えるよりは、色々なものを混ぜ合わせて雑多な感じを楽しみたいです。家具も色々と配置を変えては、違う雰囲気を味わっています」。
雑然としていても美しい空間に
LDKから進めていったリノベーション計画は、洗面所で完結。
「とりこぼしたものをここに凝縮させました。使いたかったタイルをあしらい、収納は最小限にしてビジュアル重視で海外の洗面器を選びました(笑)。ミラーや照明もお気に入りです」。
もともと外国人の入居を想定して設計されたマンションのためか、ベッドルームから洗面へとつながるドアが設置されているなど、特徴のある造りだった。便利な動線はそのままに、1日2回のバスタイムを楽しんでいるそう。
「以前、賃貸のときもデザイナーズマンションを借りていたのですが、ただ生活するのではなく、住まいにもトキメキが欲しいと思っています。ミニマルですっきりとした部屋もいいですが、私は色々なものが雑然と出ていても素敵な空間が好き。だから、出しっ放しでも美しく見えるモノを選んでいます。そしてコーディネートして、しっくりこなければまた変えて。トライアンドエラーで実験を楽しめる空間を手に入れて満足しています」。