キッチンが主役の空間自分好みのリノベーションで
フレキシブルな間取りを実現
タイミングよく出会った再販物件
東急東横線沿線の駅から徒歩数分という好立地に建つ、築37年のマンション。2面採光の明るい1室にお住まいのSさまは、コロナ禍で在宅ワークが増えたことをきっかけに、マンションの購入を考えるようになったと話す。「それまで暮らしていた30㎡のマンションではオンオフの切り替えが難しくなり、改めて住まいについて考える中で『自分の家がほしい』と思いました。料理が好きで人を招くことも多かったので、中古マンションをリノベーションして、キッチンが主役の空間を作れたらいいなと思ったんです」。
条件として駅から近いこと、面積40㎡以上、住み慣れた東横線沿線という3つを掲げ、マンションを探したSさま。なかなか良い物件に出会えず1年が過ぎた頃に内覧したのが、現在の住まいだった。「再販物件で既にリノベーション工事が始まっていましたが、3つの条件をすべてクリアしていたことに加え、2面採光の角部屋で管理状態も良く理想的でした。ラッキーなことに、物件を紹介してくださった不動産屋さんと、現場の設計施工を行うFINDさんが知り合いだったことから、販売元との交渉を行うことができ、スムーズな購入が実現しました」(Sさま)。購入に伴い再販工事は一度ストップしたが、その後はSさまの希望に沿ったプランのもと、再度リノベーションがスタートした。
テーマは「キッチンに暮らす」
S邸のリノベーションを担当したFIND設計チームの齊藤加奈子さんは、「工事に着手したばかりのタイミングだったので、生かせるものを生かしつつプランや設備、素材を変更することができました」と話す。Sさまは「ヘリンボーン張りのフローリングや洗面所などの水まわりは、元のプランが素敵だったので、変更せずそのまま進めてもらいました」と振り返る。一方、キッチンは大きく変更した。Sさまは「〈キッチンに暮らす〉というコンセプトを伝えて、キッチンを中心とした空間づくりをお願いしました」と振り返る。「FINDさんは壁付けキッチンを発注済みだったのですが、私にとってアイランドキッチンは譲れない条件でした。アイランドキッチンを再購入することも考えつつ齊藤さんに相談したところ、モールテックスでキッチンのカウンターを拡張してアイランドキッチンにアレンジしてくださったのです」。こうして、Sさまの希望どおりの存在感のあるアイランドキッチンが実現。「使い勝手を我慢しない、唯一無二のキッチンができました」(Sさま)。さらに食器やキッチン家電などをたくさん所有するSさまのために、パントリーや背面収納も造作した。「パントリーの開口はアールにするなど、Sさまの遊び心をプラスしました」(齊藤さん)。
LDKはキッチンを中心に、ソファやラグなど家具の配置を変えることで、さまざまな用途に対応できる空間とした。フレキシブルな空間づくりに大きな役割を果たしているのが、SさまがDIYでつくったベンチだ。「ふだんはカウンターのハイスツールとして使いますが、床座のときには背もたれとして使えるように考えました。ホームセンターでOSB合板を切ってもらい、友人と一緒に作りました」(Sさま)。こうして、在宅ワークの際は仕事に集中でき、お客さまを招いたときは料理を楽しみ、くつろぐ際には読書や映画を楽しめるLDKが完成した。
2方向からアクセスできるクローゼット
LDK以外のスペースは、コンパクトかつ合理的なプランを採用。玄関から廊下を挟んで右手にクローゼットと寝室、左手に水まわりをまとめた。ユニークなのが、玄関とクローゼット、寝室のつながり。FINDの齊藤さんは、当初は寝室を独立した空間にすることを想定していたが、Sさまが寝室とクローゼットとの間に壁を設けずにカーテンで間仕切ることを提案。「斬新なアイデアで驚きましたが、玄関側からも寝室側からもクローゼットにアクセスができるのが便利だなと思いました」(齊藤さん)。実際に使い勝手もいいそうで、Sさまも満足しているとのこと。またバスルームに続く脱衣洗面室のほかに、廊下に手洗いコーナーを設けている。「気軽に使えるコーナーとして、訪れる友人たちにも好評です」(Sさま)。
自分好みのリノベーションで、理想的な住まいを手に入れたSさま。友人や知人を招いてお料理をする機会も増え、家で過ごす時間が充実したものになったと話す。「いずれは料理教室などができたら」と話すSさまの笑顔が、リノベーションが生み出した可能性を物語っていた。