LDKにひな壇状の寝室を愛犬と穏やかに暮らす
オリジナルの無国籍空間
自ら数パターンのプランを作成
「リモートワークが増えたこと、二人で暮らし始めたことをきっかけに、マンション購入を考え始めました」。
映像関係の仕事に携わる夫と、照明デザイナーの妻。Aさんご夫妻は約2年前、職場のある都心にアクセスしやすく、かつ緑も豊かな場所を条件に物件探しをスタート。
「犬を飼うことを予定していたので、散歩しやすい立地も希望していました。70㎡くらいで探していたのですが、3LDKのファミリー向けの間取りが多かったんです。部屋数は必要ないと思ったし、私たちが思い描く空間を実現するためには、リノベーションが必然でした」。
見つけたのは当時築14年のマンション。理想とした空間は、ストレージを1カ所だけ設けつつ、LDKをできるだけ広々させるというもの。取り壊せる仕切り壁を業者に聞いた上で、自らA〜Iまで9パターンのゾーニング図を作成、『EcoDeco(エコデコ)』の設計士さんに伝えてプランニングを開始した。
「回遊型など色々なプランを頂きましたが、希望したのはとにかく開放的にすること。水回りなど既存のものを活かして、コストを抑えることも考えました」。
ベッドルームがLDKの一部に
できあがったプランは、「LDK+ベッドルーム」、「ワークスペース+ストレージ」に分かれた1LDKにするというもの。
「さすがに寝室とLDKは別だろう、と思ったのですが(笑)、意外と過ごしやすいし、開放感を優先する上で最適解のひとつだったと思っています」。
明るく光が差し込むLDKに、緩やかなひな壇状に設けられたベッドルーム。高さが低めに抑えられ、圧迫感なくLDKに溶け込んでいる。
「内見で小上がりのある家も見たのですが、床の掃除が大変そうだし、ヨイショと上がりたくないなと(笑)。高さを何cmにするかは、何度も相談しましたね」。
ひな壇の形が四角ではなくZ型になっているのもユニーク。
「掃除機ロボットが上がっていけるように、床にスロープもつけました。実際には使っていませんが(笑)」。
上の段は黒く塗り分け空間を視覚的に区分け。コンクリート現しの天井にはひな壇に合わせてZ型にダクトレールを取り付けた。そして壁の一面は、ニュアンスのあるブルーで塗り分けた。
「北欧のフェルメールと言われているハマスホイの作品をイメージしたカラーです。上野の美術館に来たときにふたりで観に行ったら、妻も好きだというので、ベッドサイドの壁に取り入れようということになりました」。
開放的な空間を無国籍にアレンジ
キッチンは壁や吊り戸棚を取り払って、明るくオープンに。ラワンで造作したカウンター兼収納棚が、緩い仕切りになっている。
「位置は壁づけのまま動かさず、キッチン台だけを新しいものに取り替えました」。
シンプルなステンレスのキッチン台は、夫が選んだものだ。
「私はウッド系のキッチンをイメージしていたんです。全体にもっとシンプルな方が私は好きですね(笑)」と言うのは妻。
室内のオリジナリティ溢れる無国籍なインテリアも、夫がこだわってコーディネートした。
「ひとつのテイストに統一したり、〜風というインテリアにはしたくないんです。色や柄など色々混ぜてうまく取り入れるのが好きですね」。
エジプトのキルトや、動物モチーフの雑貨など、カラフルでキュートな雑貨をディスプレイ。夫がネットなどで購入したひとつひとつ形が違う照明器具は、照明デザイナーである妻が、ランダムに配置した。
「ダウンライトなど埋め込み型の照明が好きではないんです。フロアライトも邪魔になるので、ペンダントライトをメインにコーディネートしました」。
少しずつ手を加える楽しみ
「窓から見られる周りの景色も、抜けがあるので開放感がありますね」。
おふたりはここに越してきてから、家で過ごす時間が長くなったそう。
「夫がワークスペースに籠っている時は、私はひとりでLDKを占有しています。義父に自分の部屋がなくてもいいの?と聞かれたりしたのですが、全く問題なく快適です」(妻)。
ワークスペース+ストレージのある北側にも開口があり、明るい光に包まれる。北側のバルコニーではハーブを育て、家庭菜園も。
「これからどんどん育てていく予定です。家も気になるところが残っていて、まだ完成ではないんです」。
現在は、キッチンのモルタル壁にモロッコのタイルをあしらうことを計画。どのように貼るか、デザインを思案中だそうだ。
「もっとよくなるんじゃないかなと、日々考えています。少しずつ手を加えていきたいですね」。