![マンション選びから間取りまで 車椅子でも暮らしやすいバリアフリーのリノベーション マンション選びから間取りまで 車椅子でも暮らしやすいバリアフリーのリノベーション](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202138/230731n-1000x600.jpg)
マンション選びから間取りまで車椅子でも暮らしやすい
バリアフリーのリノベーション
物件探しの条件は、玄関まで段差がないこと。
結婚4年目になるN夫妻は、2021年にこの家を購入し、フルリノベーションをして暮らしている。2人が目指したのは、車椅子でも過ごしやすい住まいだ。
「高校生の時に交通事故に遭って以来、車椅子で生活をしています。以前は賃貸マンションに暮らしていましたが、何かと不便に感じることが多く。いつかはリノベーションをして、快適に生活のできる家をつくりたいと考えていました」と話すのは、エンジニアとして活躍する旦那様。
物件探しでは、玄関までフラットにアクセスできる共有部が絶対条件だった。
「部屋の中はリノベーションでバリアフリーにできても、共用部にある階段や段差は変えることができません。マンションのエントランスから部屋に入るまでに、段差や階段がない物件に絞って探しました。10cmほどの段差でも、荷物をもちながら車椅子で越えるのは難しいです(旦那様)」
「普段は夫がひとりで車通勤をしています。そのため、車椅子で乗り降りしやすい平置きタイプの駐車場も条件でした。都心の築浅マンションだと立体駐車場が多くて、車椅子での乗り降りが難しいんですよね」と、心理士として働く奥様が続けた。
物件探しをはじめてすぐに候補にあがったこの物件は、内見をした日に即決した。「ゴミ出し場へもフラットにアクセスでき、周囲の土地も平坦で、バリアフリー面の条件をすべて満たしていました。しかもラッキーなことに、部屋より広いルーフバルコニーが付設されていて。もう、ここしかない!と思って、その日のうちに申し込みをしました(奥様)」
![築50年のマンションの一室、広さは約87㎡。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202012/230731n-001.jpg)
築50年のマンションの一室、広さは約87㎡。
![ダイニングテーブルは「KANADEMONO」でセミオーダーしたお気に入り。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202014/230731n-002.jpg)
ダイニングテーブルは「KANADEMONO」でセミオーダーしたお気に入り。
![キッチンに並ぶ3つの照明は、IKEAで購入した。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202017/230731n-003.jpg)
キッチンに並ぶ3つの照明は、IKEAで購入した。
![造作したキッチンは、作業しやすいよう横幅を240cmと広くとった。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202019/230731n-004.jpg)
造作したキッチンは、作業しやすいよう横幅を240cmと広くとった。
![230731n-005](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202022/230731n-005.jpg)
車椅子でも物を取り出しやすいよう、棚には扉を設けず布で目隠しを。
![230731n-006](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202025/230731n-006.jpg)
冷蔵庫は車椅子でも取り出しやすい低いモデルを採用。横には冷凍庫を置いている。
![コンロの足元に、換気扇のスイッチを設置した。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202029/230731n-007.jpg)
コンロの足元に、換気扇のスイッチを設置した。
車椅子でも使いやすい、水回りとは?
車椅子でも快適な暮らしを実現するために、工夫した点は大きく3つある。1つ目は、幅の広い通路。
「前の家では通路で回転することが難しかったです。今回は家のどこにいても方向転換ができるようにしました。車椅子の周りをマスキングテープで囲って測り、何cmあれば回転できるかをシミュレーションして。トイレを広くとったのも、同じ理由です(奥様)」
2つ目は、洗面台やキッチンなど水回りへのアプローチ。
「洗面台とキッチンは造作しました。シンクの下に収納棚などは作らず、空間をあけてもらったんです。脚がすっぽり収まることで、車椅子でも近づきやすくなるんですよね。以前は洗面台の横に車椅子をつけて、体をひねるようにして洗顔していました。今は正面から手を伸ばせるようになって、とても使いやすいです(旦那様)」
そのほかにも、水回りには不便に感じることが多いと言う。
「今まで換気扇を使いたいときは、マジックハンドを使って無理やりスイッチを押していました。今回それを解消するために、キッチンの足元にリモコン式のスイッチを設置していただきました。それだけでもかなり生活しやすいと感じます」と続ける。
![全長4.5mのスロープ。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202031/230731n-008.jpg)
全長4.5mのスロープ。
![ゆったりと幅をとった通路は、ご主人のワークスペースを兼ねている。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202035/230731n-009.jpg)
ゆったりと幅をとった通路は、ご主人のワークスペースを兼ねている。
![有孔ボードの裏側には、帽子や腕時計を掛けて。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202038/230731n-010.jpg)
有孔ボードの裏側には、帽子や腕時計を掛けて。
![スロープの建具には、入居後にDIYで黒板塗装を施した。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202042/230731n-011.jpg)
スロープの建具には、入居後にDIYで黒板塗装を施した。
![スロープの先には、ルーフバルコニーへの出入り口がある。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202046/230731n-012.jpg)
スロープの先には、ルーフバルコニーへの出入り口がある。
![洗面スペース。屋根型にカットした出入り口は、奥様のこだわり。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202050/230731n-013.jpg)
洗面スペース。屋根型にカットした出入り口は、奥様のこだわり。
![脚がすっぽり収まるよう、洗面台の下は空間を開けた。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202054/230731n-014.jpg)
脚がすっぽり収まるよう、洗面台の下は空間を開けた。
![トイレ内でも車椅子で回転ができるよう約4㎡の広さに設計。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202057/230731n-015.jpg)
トイレ内でも車椅子で回転ができるよう約4㎡の広さに設計。
![トイレ内でも車椅子で回転ができるよう約4㎡の広さに設計。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202101/230731n-016.jpg)
学校の理科室で使われる実験用のシンクを採用。
![ベンチ付きのユニットバスは、TOTOのサザナシリーズ。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202106/230731n-017.jpg)
ベンチ付きのユニットバスは、TOTOのサザナシリーズ。
![車椅子でも服が取れるよう下段を旦那様、上段を奥様のクローゼットに。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202110/230731n-018.jpg)
車椅子でも服が取れるよう下段を旦那様、上段を奥様のクローゼットに。
家の主役となった、全長4.5mのスロープ。
そして3つ目の工夫は、玄関からバルコニーに続く4.5mのスロープ。ルーフバルコニーに出入りする窓ガラスには40cmの高さがあり、車椅子では出られなかった。そのために考えられたのが、長いスロープをつくる案だ。
「バルコニーへ車椅子のまま出入りできる方法を設計士さんと一緒に考えました。40cmの高さを解消するには、5mほどの長さが必要でした。それよりも短いと傾斜が急すぎて、車椅子で自力で登ることができないからです。かなりの長さがあるため、スペースを占領してしまうことが懸念点でした。そこで有孔ボードや黒板塗装を取り入れて、ただのスロープにしないよう工夫をしました。思い切って造ってよかったです。お休みの日にルーフバルコニーで朝ごはんを食べたり、夕方に2人でお酒を飲んだり。あとは星を見るのが好きなので、バルコニーに寝そべって星空をゆっくり眺める夜もあります(旦那様)」
ここに引っ越してからは、家のなかで過ごす時間が増えたというN夫妻。
「コロナ禍に家で楽しめる遊びの1つとして、謎解きゲームにハマりました。今でも夫婦でずっと続けている趣味です。日をまたいで2人で考え続けることもあれば、夫の方が先に解けてしまって、私が待たせてしまうこともあるんです(奥様)」
そんな待ち時間には、プロジェクターでホームシアターを楽しんだり、音楽を聴いたり、2人だけの今を楽しんでいる。
![壁に映像を投影してホームシアターを楽しむ、ふたりの定位置。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202113/230731n-019.jpg)
壁に映像を投影してホームシアターを楽しむ、ふたりの定位置。
![230731n-020](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202116/230731n-020.jpg)
リビングから寝室の方向を眺めて。
![230731n-021](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202119/230731n-021.jpg)
ベッドの横に車椅子をつけられるようスペースを広く設けた。
![230731n-022](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202122/230731n-022.jpg)
「unico」で購入したソファ。車椅子でも座りやすいよう手すりのないものを選んだ。
![230731n-023](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202125/230731n-023.jpg)
ダイニングチェアは「Re:CENO TOKYO」のもの。
![230731n-024](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202129/230731n-024.jpg)
スロープを上りきったスペースは、ヨガや読書を楽しむ場所に。
![洗面スペースから、ワークスペースを見る。](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202133/230731n-025.jpg)
洗面スペースから、ワークスペースを見る。
![230731n-026](https://img.tokosie.jp/2023/07/25202136/230731n-026.jpg)