デザインと暮らしやすさを両立 額縁が絶景を切り取る
眺めのよい暮らし
出窓を額縁のように見立てて
東向きの窓の向こうには、東京都心から横浜まで見渡せる、大パノラマが広がる。Bさんご夫妻は1年程前、眺望に惹かれてこの1室を購入。
「自分の思い通りの空間にしたい、という気持ちが強かったので、リフォーム前の中古物件を探していました。その中でいちばん大事にした条件は何よりも眺望。低層マンションなのに窓から景色が広がる、理想の部屋を見つけました」。
物件を決めてからリノベーション会社をリサーチ。
「8社くらい検討して3社に提案をいただいたのですが、グローバルベイスの設計士さんが出してくれた、手描きの緻密なパース図がとても素敵で。それが決め手になりました」。
物件内見時に、その設計士さんが指摘したのも、窓からの眺めが部屋のいちばんのポイントだということ。出窓を額縁のように仕上げることを提案された。
「窓まわりにフローリングを貼りましょう、という案を出していただきました。部屋のイメージは固まっていて、やりたいことはお伝えしたのですが、それをどう実現するかまではわかっていなくて。イメージを越えるプランをいただいたと思っています」。
大事にしたのは、奇を衒わないこと
Bさんご夫妻は、カリフォルニアに4年間暮らした経験を持つ。現地で買い集めたヴィンテージの雑貨などが映える空間にすることが希望だった。
「ナチュラルとインダストリアルの両方を入れた空間にしたいということ、趣味のコーヒーと本を楽しめる空間にしたいということをお伝えしました」。
和室を取り払って、広々とさせたLDKは、白い壁と天井、無垢の床でナチュラルに仕上げつつ、壁の一面のみモルタルで塗装。一部にウォークインクローゼットを設け、一部はディスプレイとグリーンを楽しめるスペースに。
「間取りに関しては、最初はとても迷いました。リモートが中心になりワークスペースが必要だったのですが、リビングに設けるかどうかとか、室内窓を取り入れるかどうかなど考えました。最終的には、落ち着いて過ごせるように個室はきちんと分けることにしました」。
主寝室と子供部屋の仕切り壁はそのままに、半スケルトンにして、LDKのみを広く取った。
「基本的には奇を衒いすぎないように、寝室とLDKは分けて、ワークスペースも寝室に併設しました。子どもも大きくなりつつあり、それぞれの時間も必要なので、普通の間取りにしたのは正解だったと思っています」。
家族で調理できるキッチンに
「娘が料理好きなので、キッチンは家族3人、みんなで立てるようにしたいと思っていました。ここが完成する前はうなぎの寝床のような社宅に住んでいて(笑)、みんなで作業することが難しかったんです」。
半分仕切りがあったカウンターを壊してオープンに。壁付けI型のキッチンをリビング側に向けて設置し、広々とした作業台を連続させた。
「当初はアイランドキッチンを考えたのですが、デザインが決まっていることや幅が狭いこと、コスト面が合わないことから迷っていたところ、設計士さんがこの案を出してくれたんです」。
作業台にはIKEAの収納を活用することでコストを削減。面材を揃えて造作した。幅を広々と設定したことで、みんなでパンをこねたり、餃子を作ったりするのが楽にできるように。
「配管を現しにする案もあったけれど、それは私が全力で阻止しました(笑)。見た目には憧れるけれど、現実的に考えたら埃がたまったりして、掃除が大変だと思うんです」。
というのは奥様。デザイン関係の仕事に携わり、デザインにこだわるご主人のイメージに共感しつつも、使い勝手も大事だと考えたそう。
ブックラックが家族の交流を生む
素材選びには、かなりの時間をかけたそう。
「キッチンのタイルの色を決めるのも、サンプルを床に並べてイメージしてみたりして、散々悩みましたね。全体像が把握できるわけではないので、そこが難しかったです」。
提出したデータの中には、担当の設計士さんが手掛けた物件も含まれていたそう。
「イメージが近かったのでスムーズに進んだと思います。完成してみてこうじゃなかった、というのはほぼゼロで。提案していただいたLDKのブックラックも、家族のコミュニケーションに役立っています」。
ブックラックは、美しい背表紙をディスプレイするだけでなく、それぞれが読んでいる本に興味を持ち、シェアするライブラリーのような機能を果たしている。
「おしゃれな空間でありつつ、暮らしやすさも残したいし、生活を楽しみたい。そこをうまく融合させていただいて、想像以上の空間になったと思いますね」。
額縁のように切り取られる街を背景に、豊かな暮らしが営まれている。