陰影が美しい住まい和と北欧、異なる２つの
テイストをセンスよくMIX
美しい和室で特別な空間に
築40年の世田谷区内のマンションを購入し、フルリノベーションした『ACTUS（アクタス）』マーケティング部の広野吉行さん。
「やりたいことを思う存分形にしてみたかったので、自分で図面を引きました」。
施工はこの物件の販売会社にオーダーした。
「祖母の家の縁側で過ごす時間が好きだったこともあり、雪見障子のある和室をぜひ作りたいと思いました。旅館に泊まると、和室に高揚感を覚えたりもしますよね。ならば和室を自室に作ろうと考えました」。
美しい和室を作るために、建具にはこだわった。雪見障子や簾戸を古材店で選び、それに合わせて施工した。
「窓側とリビング側、２面に障子が必要だと思いました。窓と和室の間に縁側のような場所を作ることで、雪見障子越しの光がとてもきれいになりました。とても満足しています」
古材店で見つけた雪見障子のサイズに合わせて施工。「ペンダントライトを下げる場所を決めてシーリングの位置をオーダーしました。施工会社からほんとにこんな端で合ってるのか確認されました（笑）」。明るさは調光可能。
縁側のようなスペースを贅沢に設けた。窓は三重ガラスにリフォーム。風が抜ける簾戸（すど）は夏を涼しく過ごせる。
雪見障子越しの柔らかな光が美しい。
ルイスポールセンのペンダントライトはカッパー素材の限定モデル。フラワーベースはホルムガードでカイ・フランクのデザイン。ネストテーブルはアクセル・キアスゴー。
和室に作った板の間でお香を焚く。「器は南部鉄器の蚊やりです」
六畳間に見えるように、部屋の大きさに合わせて畳をオーダー。「縁の色も好みの色で作ってもらいました」
夜は布団を敷いて和室で休む。
直線を活かしたモダンなリビング
和室と対象的な雰囲気を持つモダンなリビングは、壁沿いにすーっと一本、デスクが設えてある。
「壁付のテーブルの天板はなるべく継ぎ目を作りたくなかったので、搬入サイズギリギリの２枚の板で作りました」。
ここで仕事をしたり、食事をとったり、そして写真が好きな広野さんの、写真ギャラリーとしての要素も持つスペースだ。
「ディーター・ラムスのヴィツゥの壁面ユニットをぜひ使いたかったので、予め壁面に下地材を入れました」
着物を掛ける時に使う衣桁（いこう）を和室ではなくリビングに置いている。和のアイテムが２つの空間をつなぐ役割を果たしている。
『ACTUS』オリジナルのFOUR CHAIRは、リビングに置いても馴染むワークチェア。ミニマムなデザインの衣桁（いこう）は『東屋』で。床材はオーク材をグレーにペイント。
広野さんが撮影した写真を飾る壁面ユニットはディーター・ラムスのヴィツゥ。天板を挟み、上下２段で構成。手前のソファはアルネ・ヤコブセンがSASエアターミナル用にデザインしたもの。
トレーシングペーパーでカバーしたお気に入りの写真家の写真集を並べる。「仕事ではデジタルカメラを使いますが、趣味ではハッセルブラッドのフィルムカメラを使います」。デスクの下にはピアノの音色が美しく聴こえるように調整されたスピーカー。
押すと水回りが現れる魔法のような壁
「リノベーションの際にもうひとつやりたかったことが、“壁のようなドア”を作ることです。取っ手をつけず、押せば開く壁を作りたいと思いました」
縁側を贅沢に作った和室空間の一方で、キッチンは思い切って小さくした。
「料理もほとんど作らないので、冷蔵庫はホテルにあるようなミニサイズです」
美しい光と影、心休まる和室。広野さんが自分の“好き”を存分に追求し、丁寧に作り込んだ理想の空間ができあがった。
すっきりとした壁に見えるが、実はここはドア。「壁に見せたかったので、蝶番の選択や施工にもこだわりました」
扉の奥は洗面やウォークインクローゼットにつながる。右隣がウォークインクローゼットのドア。
和室の奥は廊下側へとグルリと回遊できるウォークインクローゼット。
調理器具はひとつひとつこだわったセレクト。
toolboxのパッケージのキッチンを選択。「ひとり暮らしなので思い切ってコンパクトにしました。極小の冷蔵庫を足元に収納。パンは網で焼きます」
キッチンの収納にガラスの引き戸のTORKUTのチェストを活用。「４台あるうち、残りの２台はウークインクローゼットで使っています」
