夫婦の57㎡リノベーション祇園の切り通しと旅館の離れを
マンションに再現
マンション選びは、耐震基準と管理組合まで吟味
都内に暮らすO夫婦は、2017年の入籍と同時にこの部屋を購入。フルリノベーションをして暮らしている。
「この物件は築50年ですが、マンションの大規模修繕工事で耐震基準を満たしていました。加えて管理組合がしっかりしているのも魅力の1つでした。フロアごとに年に一度集まって、意見交換する機会があるんです。新築にはどんな人が住むかわからないですが、中古マンションなら住人の人柄をある程度把握してから購入を決断できるのも利点だと思いました」とご主人。
中古マンションをリノベーションする選択肢は、最初から2人とも一致していたという。
「住みたい場所には、大抵すでにマンションが建っているじゃないですか。それなら築年数にはこだわらずに場所で選んで、中身を新しくすればいいと思ったんです。リノベをお願いしたブルースタジオさんは、リノベ会社の合同説明会で知りました。施工事例を見たときに、施主のわがままに寄り添ったデザインを提案してくれそうだなと思い、お願いしました」と話すのは奥様。
多機能な小上がりと、梅柄の唐紙をあしらった天袋
部屋全体を和テイストで仕上げたO邸。特にこだわったポイントは3つ。
1つ目は、畳で仕上げた多機能な小上がりスペースだ。
「LDKは広くなくていいから、小上がりスペースをつくって空間を緩やかに仕切りたいと考えていました。ソファを置かない代わりに、ここに寝転がってくつろいだり、夜はここに布団を敷いて並んで寝ています。小上がりの脇に一枚板のカウンターをつけたので、昼間はワークスペースとしても活用しています」と奥様。
2つ目は、小上がりの上部に設けた戸棚・天袋(てんぶくろ)。リビングに収納が欲しいと考えていたところ、設計士さんから提案されたのがこの天袋だった。
「天袋のふすま紙には、金箔と銀箔をあしらった唐紙(からかみ)を貼りました。京都の唐紙屋さんでオーダーしたオリジナルの梅柄です。というのも、私たち夫婦は湯島天神の梅祭りのデートがきっかけで交際がスタートしました。結婚式も湯島天神で挙げたので、梅は2人にとって特別なモチーフなんです」と続ける。
祇園の切り通しをマンションの廊下に再現
3つ目のこだわりは、祇園の路地をイメージした廊下。
「廊下は祇園の『切り通し』にある石畳をイメージしました。廊下沿いにある書斎には格子の引き戸を4枚並べ、さらに入り口にあえて5cmの段差を設けています。こうすることで、石畳の廊下から旅館の離れへ入っていく雰囲気を演出しました」とご主人。
そしてLDKの入り口には、さらに7cmの段差を設けた。
「LDKが旅館の母屋、書斎が離れというイメージです」と続けた。マンションに京町家を再現するという大胆なプランのイメージソースになったのは、建築家・藤井厚二の住まい『聴竹居』だった。
「昭和3年に建てられた住居ですが、今でも色褪せない格好良さがあります。実際に見学に行ったのですが、リビングに続く小上がりは特に素晴らしく、今回のリノベで絶対に真似したいポイントでした。外光が床に反射する感じも本当に素敵で。好きなポイントは設計士さんに伝えていたので、フローリングのツヤっとした感じなど聴竹居に寄せてくれました(奥様)」
この家に暮らしはじめて今年で6年目を迎えたO夫婦。これからは家の手入れに精を出しながら、少しずつ暮らしを変化させていく予定だ。
「次回のマンションの大規模修繕では、窓の工事があるんです。それが終わったら、窓にワーロン紙の雪見障子をつけたいと思っています。窓も和の雰囲気になったら、また違う印象になりそうで楽しみです」と、2人笑顔で締めくくってくれた。