ギャラリーのような空間モノトーンのインテリアに
アートと雑貨が映える
2連のアーチ開口が空間のアクセント
2019年に、都内に築30年ほどのマンションを購入したOさん夫妻。結婚後は賃貸マンションで暮らしていたが、お子さんの成長とともにマンションの購入を考えるようになったという。妻の知絵さんは「子どもをのびのびと育てたかったので、1階の物件限定で探しました。それまで暮らしていたエリアで4、5軒を検討して、角部屋で周囲に緑が多いこの部屋に決めました」と話す。
知絵さんは、リノベーションの設計・施工を展開するFINDの設計士。職業柄リノベーションをしたい思いもあったものの、購入した物件がリフォーム済み物件だったため、入居時には特に手をいれなかった。「4年ほど住んでから、いよいよリノベーションしようということになりました。それまで生活する中で積み重なっていた『ここを変えたい』という思いを実現しました」。
リノベーションにあたっては、72.59㎡・3LDKの間取りを2LDKに変更。夫の悠介さんともども「有効活用できていない」と感じていた和室を撤去し、リビングと一体の空間にした。
特徴的なのが、和室の押入れ部分と床の間をウォークインクローゼットとベンチに変更し、それぞれの上部をアーチ状に加工したこと。「アーチが連なるヨーロッパの回廊が好きで、リノベでは連続したアーチ開口をつくりたいと思っていました。3連のアーチも検討しましたが、クローゼットの使い勝手を考慮して、最終的に2連に落ち着きました」(知絵さん)。
クローズドキッチンを、オープンに使いやすく
間取り面での変更としては、和室の撤去に加えてキッチンをクローズドからオープンにした。キッチンとダイニングとの間にあった壁を取り払い、廊下を含めて回遊性のある動線を確保。さらにもともと壁のあった場所に、奥行きのあるカウンターを新たに設けた。このカウンターは、お菓子やパンをつくるときに便利なうえ、配膳もラクになったとのこと。
キッチンは入居時にリフォーム済みだったこともあり、レンジフードとコンロは既存のものを利用した。「設備にはコストをあまりかけなくて良いと考えているので、シンプルなキッチンを選びました」と話す知絵さん。その分、カウンターを新設したり、壁のタイルを馬貼りにするといった工夫を施し、使い勝手とデザイン性を向上させている。「オープンキッチンにしたことでの一番の変化は、料理中でも家族とコミュニケーションがとれるようになったことです。子どもとの会話もしやすくなりました」。
LDKが広くなったことで、生活シーンの大半をLDKに集約できるようになったという。「家族みんなが、ほとんどの時間をLDKで過ごしています。2部屋ある洋室は、ほぼ寝室としてのみ使っています」。
設計者ならではのアイデアを活かす
インテリアの面では、壁や天井の白をベースにしつつ、建具や照明に黒を選び、モノトーンの落ち着いた空間とした。知絵さんが結婚前から集めている動物グッズのコレクションや子どもの描いた絵を飾ることを前提に、作り込みすぎないことを意識したという。
中でも玄関から居室へと続く廊下は、床をグレーのモルタル調の塗装で仕上げ、美術館やギャラリーのようなすっきりとした空間にしている。「玄関から突き当たりまでが長い廊下は気に入っていたので大きくは変えませんでしたが、床をモルタル調に仕上げるなど工夫しました」。さらに印象的なブラックの建具は、既存のものを塗り替えた。「もともとは面材が木目調でハンドルが黒だったのですが、気に入らなかったんです。リノベのタイミングで黒く塗り替えてもらいました」。
活かせるものは活用しつつ、間取りの変更や設計士ならではの建材のセレクトなどにより、イメージを一新したOさんの住まい。自らの住まいをリノベーションしたことで、その効果を改めて実感したという知絵さん。「自分好みの空間になったことに加えて住み心地もよくなり、リノベーションしてよかったです」と締めくくった。