家族のかたちに合わせてデザイン性と機能性
物件の特徴を活かした家
夫妻の“住みやすい”を求めて
お子さんたちの独立と夫の定年退職を控え、20年以上暮らしていたマンションの持ち家をリノベーションしたMさん夫妻。長く社宅住まいをしていたが、お子さんの成長によって手狭になったことをきっかけにマンションを購入したため、当時の物件探しの条件は2人のお子さんの部屋が用意できること。結果として3LDKの最上階にある角部屋を購入したが、夫妻2人の暮らしになると個室の必要性が薄れていった。そこで思い立ったのがリノベーションだったという。「引退した友人たちが移住先の物件をリノベーションしていたのを、遊びに行った時に見ていたんです。それで、自分たちもリノベーションをして2人の住みやすい空間にしようと考えました」と夫。
ダイニングドアを開けると、キッチン、ダイニング、2つのリビングが一つになったメインスペースが広がり、空間に余裕を感じさせるMさん夫妻のご自宅。生活環境の変化に合わせただけでなく、これまで不便に感じていたところを改善したり、やってみたかったことを実現したりと、夫妻の想いを強く感じられる場になっている。
キッチンを中心に全てをつなぐ
ショールームを回ったり雑誌やインターネットで事例を見たりと、一年近くかけプランを練っていった。互いの希望をまとめた資料を複数の会社に渡し、出てきた提案を吟味した中で選んだのがSHUKEN Reだったという。「担当の方にニュアンスが一番伝わったと感じた」と妻。
リノベーションの大きな目的の一つは、部屋を減らし83㎡の空間を活かすこと。住まいの中心にあるキッチンは、元々I型のセミオープンキッチンで、背面と側面の壁を隔てて玄関から各部屋につながる廊下になっていた。そこで、キッチンをアイランド型にして壁を取り払い、廊下をメインスペースの一部に。さらにダイニングと個室を隔てていた仕切りをなくしたことで、キッチンを軸にしたダイニングと2つのリビングで構成される1LDKの開放感ある空間とした。「2人だけなので、ベッドを置く寝室と荷物を置くスペースを作って、あとは広い空間にしたいと考えました」と夫。キッチンを中心にパントリー、ウォークスルークローゼット、寝室、リビング、リビングダイニングと回遊ができるようになったことで改めて気づいたことがあると妻は話す。「それぞれの部屋に窓があることは分かっていたんですが、壁がなくなって改めてこんな窓だらけの家だったんだって」。開放感だけでなく、最上階で角部屋という立地を活かした、採光と風通しのよい空間作りにもつながった。
中心となる造作キッチンはシームレスのシンクでお手入れがしやすいステンレストップ。高さは料理をする夫に合わせ若干高めにし、ゲストが来た際はキッチンの外側と内側両方から作業ができるようになっている。リビング側に移動させたことで、広さに余裕を持たせ、夫妻で一緒に料理を楽しめるようになった。
空間に馴染む個性
窓の多さに加えもう一つ、この家ならではの発見としてダイニングと個室を隔てていた壁を取り払って出てきた斜めに立つ柱がある。斜線制限のために設けられた斜めの躯体は最上階だからこそ。デザイン性を感じさせる柱は、飽きさせない空間を演出する。「平面図で柱があることは知っていたのですが、まさか斜めになっているとは。掘り出し物だと喜びました」ダイニングからのトイレの目隠しになりゾーニングの役割もあると夫。
ガラスブロックを使ったリビングドアは妻の提案だった。「私が中学生の時に、実家を建てる際、母が玄関にガラスブロックを使おうとしたんですね。でも当時、オイルショックで材料が不足していて叶いませんでした。それを子供ながらに覚えていて、どこかに取り入れたいなと」。透明のガラスブロックにこだわり、屋外で使用する10センチ幅のものを選んだ。厚みがあり存在感がありつつも、空間を視覚的に完全には遮らないことで広がりのある空間にマッチさせた。列をあえてアシメトリーにする遊び心も見せる。
それぞれの部屋にあった収納スペースをウォークスルークローゼットに集約したことで、荷物の整理にもなった。「仕事を引退するとスーツの量は減るし、必要なものが少なくなるので持ち物は収められるだけの量にしようと思っています」と夫。妻も「収納はたくさんあると、たくさん入れちゃいますしね」と収納スペースを必要以上に作らなかったと話す。
「ここにいる方がいいので、外食が減って家で食事をすることが増えました。子どもたちも、元々住んでいた環境より居心地がいいので、遊びに来る機会が増えましたね」と夫は笑顔で話す。
予想通りの効果もあれば、想定外の嬉しいこともあったMさん夫妻のリノベーションは、マンション最上階の角部屋であることの利点が最大限に活かされた空間を生み出した。