自然豊かな団地に住む北欧の暮らしの知恵を活かした
小さく住まうリノベーション
スリーピングボックスを家の中心に
出版社勤務の川端麻里子さんが、緑豊かな多摩丘陵を散策していた時に見つけたのがこの団地だった。
「敷地内に立派なヒマラヤ杉があり、大きな桜の木が並ぶ、古い団地ならではの自然あふれる佇まいに惹かれました」。
リノベーションは一級建築士事務所『ON』にお願いした。実は他に数件、設計事務所にコンタクトを取っていたが、なかなか思いきれずにいた。
「『ON』が改装を手掛けたお気に入りの自然素材のパン屋さんがありました。その建物の2階に構える『ON』の事務所も素敵で、きっと私の好みに共感いただけると感じました」
その直感はビンゴ! 川端さんも改装を手伝いながらリノベーションがスタートした。
和室2間の2DKの仕切りと壁をなくし、大きなワンルームに。そこにスリーピングボックス(箱形のベッド)、本棚、キッチンテーブルを3つ置いた。3つの家具は、緩やかに空間を分けながら、さまざまな居場所をつくり出している。
小さく暖かなスリーピングボックス
寒さが厳しい長い冬があるスウェーデンでは、小さく家を造り、部屋全体に熱を回して暖かく過ごせるようにしていた。限られたスペースを賢く使うためのさまざまな工夫を施した家具も作られた。スリーピングボックスもその工夫のひとつで、小さな箱型の寝室の中はとても暖かい。
川端宅は部屋の中心にスリーピングボックスを置き、周囲に子どもの勉強机や、玄関側に靴箱、リビング側には蓋を開けると収納になっているベンチを作った。スリーピングボックスの上段は既存の柱・梁とも近く、キャットウォ―クにもなっている。
猫のライフスタイフも大きく変化
以前は室内飼いだった猫たちは、この団地に引っ越してきてから自由に家と外を出入りする生活になった。ご近所さんからもとても可愛がられているそう。
ビワや柿や栗など住民の誰かが植えた果樹がそこここに育つような、古い団地ならではの暖かくゆるやかな居心地のよさが、川端さんちのもうひとつの大きな魅力だ。