アウドドアと暮らしの融合  大空間のLDKがつくり出す 自然の中のような心地よさ

アウドドアと暮らしの融合大空間のLDKがつくり出す
自然の中のような心地よさ

圧倒的な広さを求めて

アウドドアブランド「カリマー」の日本総代理店で働き、休日は自然の中でクライミングやサーフィンを楽しむという稲田里樹さん。2016年6月に川崎市宮前区のマンションに引っ越し、妻のめぐみさん、5歳の娘・澪ちゃんと暮らしている。

稲田さんはかねてから、圧倒的に広いリビングが欲しいと思っていた。当初は戸建も考えたが、都心に通勤可能なエリアで希望通りの広さを備えた物件はなかなかない。そこで、自分好みにリノベーションできる中古マンションを買おうと考え、100㎡以上を条件に探したという。「この部屋は元々4LDKだったのですが、間取りを変えればかなり広い空間がつくれると思いました。緑が多く野鳥のさえずりが聞こえる住環境も気に入りました」。

リノベーションは、インテリアデザインやオリジナル家具の製作を手がける「HAY hutte」の安井秀行さん、スタイルのある住まいの設計施工を行う「Hajikami」の谷脇周平さんと協力して行った。「実は2人は古くからの友人。気心の知れた仲間と相談を重ねながら、理想の住まいづくりを進めていきました」(稲田さん)。

稲田さん(右)とHAY hutteの安井さん(左)は大学時代からの友人でそろって山好き。互いのセンスに一目置く間柄でもある。

稲田さん(右)とHAY hutteの安井さん(左)は大学時代からの友人でそろって山好き。互いのセンスに一目置く間柄でもある。

趣味に没頭できる部屋

玄関を入ったすぐ左手には、コンクリート敷きでガレージのような雰囲気の部屋をつくった。クライミング、サーフィン、自転車、キャンプ、ピラティス、プラモデル、ベース……と、実に幅広い趣味を持つ稲田さんのための「趣味の部屋」だ。

壁一面の棚とラックに整然と並ぶアウトドアウェアやクライミングギアが圧巻だが、ここには登山歴15年以上という稲田さんのこだわりが詰まっている。「前の住まいでは使わないときはしまっていたので、登山やクライミングの準備に一苦労。現場で忘れ物に気がつくこともありました。今は見えるところに全て並べているので、準備や片付けがとてもスムーズになったし、忘れ物もなくなりましたね」。アウトドアを思う存分楽しむ秘訣は、実は住まいの中に隠されているのかもしれない。

「趣味の部屋」の広さは約6畳。置きたいもののサイズや量に合わせて、棚やハンガーラックを造作した。

「趣味の部屋」の広さは約6畳。置きたいもののサイズや量に合わせて、棚やハンガーラックを造作した。

壁一面に並ぶアウトドアグッズ。よく見るとリュックやザイルを引っ掛けているのはカラビナ。ポールの太さはカラビナの径に合わせたそう。

壁一面に並ぶアウトドアグッズ。よく見るとリュックやザイルを引っ掛けているのはカラビナ。ポールの太さはカラビナの径に合わせたそう。

全てオリジナルでカラーリングしたガンダムのプラモデル。中には完成までに半年を要した力作も。

全てオリジナルでカラーリングしたガンダムのプラモデル。中には完成までに半年を要した力作も。

趣味の部屋と廊下の間の壁には大きな窓を設け、抜け感をもたせた。大きなデスクは「BISLEY」のロッカー2つに天板を載せてつくったもの。

趣味の部屋と廊下の間の壁には大きな窓を設け、抜け感をもたせた。大きなデスクは「BISLEY」のロッカー2つに天板を載せてつくったもの。

愛用の自転車はつっぱり棒タイプのラックにひっかけて。右手に見える玄関からすぐに出せるのも便利。

愛用の自転車はつっぱり棒タイプのラックにひっかけて。右手に見える玄関からすぐに出せるのも便利。

壁にはホールドを付け、クライミングの練習ができるようにした。ウェットスーツをかけているのは、ラッペルステーションというクライミング用品。

壁にはホールドを付け、クライミングの練習ができるようにした。ウェットスーツをかけているのは、ラッペルステーションというクライミング用品。

開放感たっぷりのLDK

思い描いていた広いリビングは、4部屋に区切られていた部分を一部屋につなげることで実現した。こうして誕生したLDKの広さはなんと約38畳。安井さんは、個人宅でここまで広い空間をつくることは滅多にないと語る。「あとで部屋足りなくならない? 本当に大丈夫? と何度も確認したのですが、『部屋の数よりも広いリビングだ!』という稲田君の意志が固くて(笑)」。一方で稲田さんは「憧れていた通りの大空間になってうれしい。娘も気持ちよさそうに走り回ってます」と満足げだ。
このLDKにいると自然の中にいるような開放感を感じるが、そのわけは広さだけではなくこだわりの施工にもある。床はぬくもりいっぱいの無垢のオーク材で、壁の一面を山の岩肌のような石張りにしてあるのだ。「安井君、谷脇君と打ち合わせを重ね、好きなテイストに仕上げました。ここで過ごす時間は本当に快適。4部屋をつなげたことで風の抜けも良くなって、夏場もエアコンはほとんど使わないんです」(稲田さん)。

思わず「広い!」と声が出る38畳のLDK。天井はリノベーション時に30cmほど上げた。

思わず「広い!」と声が出る38畳のLDK。天井はリノベーション時に30cmほど上げた。

石の壁は、パズルのように組み合わせるのが大変だったそう。「ミッドセンチュリーのアメリカ建築の雰囲気もありますよね」と安井さん。

石の壁は、パズルのように組み合わせるのが大変だったそう。「ミッドセンチュリーのアメリカ建築の雰囲気もありますよね」と安井さん。

LDKの端に設けられたキッチンもかなりの広さだが、ここには、家族全員で料理を楽しみたいという稲田さんの思いが反映されている。「夫婦揃って料理好きで、その影響を受けたのか、5歳の娘も手伝いたがるんです(笑)」。

広いカウンターやゆったりとした通路、たくさんの鍋を置ける棚やビルトインオーブンを備えたキッチンの使い心地は抜群で、料理の幅も広がった。「ゆったりとしたリビングを眺めながら料理をしていると時間を忘れます。ここで一杯やるのも乙なんですよ」。

モルタルで造作したキッチンカウンターは、どこか昔ながらのかまどを連想させる。

モルタルで造作したキッチンカウンターは、どこか昔ながらのかまどを連想させる。

たくさんの鍋や大皿を並べられる頑丈な棚は、「Hajikami」がストックしていた味のある古材でつくった。

たくさんの鍋や大皿を並べられる頑丈な棚は、「Hajikami」がストックしていた味のある古材でつくった。

右奥のカウンター下にあるのは冷蔵庫。「家庭用で気に入ったデザインがなくて、業務用を入れました」(稲田さん)。

右奥のカウンター下にあるのは冷蔵庫。「家庭用で気に入ったデザインがなくて、業務用を入れました」(稲田さん)。

稲田さんが「HAY hutte」で購入したキッチンウエアたち。「HAY hutte」では、世界中から集めた味わい深い雑貨の販売も行っている。

稲田さんが「HAY hutte」で購入したキッチンウエアたち。「HAY hutte」では、世界中から集めた味わい深い雑貨の販売も行っている。

料理好きの稲田さんの最近のお気に入りは、カレーづくり用の鍋とおひつ。「ご飯をおひつに入れておくと冷めても美味しいんです」。

料理好きの稲田さんの最近のお気に入りは、カレーづくり用の鍋とおひつ。「ご飯をおひつに入れておくと冷めても美味しいんです」。

空間を彩る精鋭たち

LDKを洗練された空間に仕上げている要因は2つある。1つ目は「HAY hutte」が手がけた家具たちだ。自然素材のぬくもりと高いデザイン性が特徴で、ずっと眺めていたくなる。「家具は室内で使うものですが、素材から自然を感じられることをコンセプトに制作しています。触り心地や座り心地にもこだわって、手仕事でていねいに仕上げます」と話す安井さんに稲田さんも「本当に使い心地が抜群。特にソファは気持ちよすぎて、娘がしょっちゅう寝ています」とうなずく。

2つ目の要因は、稲田さんが選び抜いたインテリア小物やグリーンたちだ。実は稲田さんの前職はグラフィックデザイナーで、その感性と審美眼はさすがの一言。安井さんも「竣工時からどんどん雰囲気が良くなっています。どこを見てもかっこいいし妥協がない。凝り性の稲田君らしいなと思います」と話す。

こだわりたっぷりのリノベーションをやり遂げた稲田さん。「アウトドアも好きですが、同じくらいインドアで趣味や料理に没頭する時間も好き。そんな時間を極上のものにしてくれるこの部屋の満足度は100%です」と語る笑顔が印象的だった。

「HAY hutte」オリジナルのダイニングテーブルと椅子。どちらも材はオークで重厚感がある。テーブルの幅は2m20cmとかなり大きいが、この大空間にはしっくり馴染む。

「HAY hutte」オリジナルのダイニングテーブルと椅子。どちらも材はオークで重厚感がある。テーブルの幅は2m20cmとかなり大きいが、この大空間にはしっくり馴染む。

壁面には飾り棚と収納棚を造作。稲田さんが絶妙なバランス感覚で飾った小物たちが空間に彩りを添える。収納棚の中にはたくさんの食器と娘さんのおやつが入っているそう。

壁面には飾り棚と収納棚を造作。稲田さんが絶妙なバランス感覚で飾った小物たちが空間に彩りを添える。収納棚の中にはたくさんの食器と娘さんのおやつが入っているそう。

 収納棚の取っ手は真鍮に藤を巻いたもの。細かい部分まで気を配る、ものづくりの信念が感じられる。

収納棚の取っ手は真鍮に藤を巻いたもの。細かい部分まで気を配る、ものづくりの信念が感じられる。

リビングの一角に設けた作業スペース。「娘の机として使っています。欲しかったセブンチェアを買ったのに座ると娘に怒られます(笑)」と稲田さん。

リビングの一角に設けた作業スペース。「娘の机として使っています。欲しかったセブンチェアを買ったのに座ると娘に怒られます(笑)」と稲田さん。

美しい佇まいのソファ。材はオークで背の部分は藤編み。座面にはマットレスに使うポケットコイルを入れていて、ゲストベッド代わりにもなる。

美しい佇まいのソファ。材はオークで背の部分は藤編み。座面にはマットレスに使うポケットコイルを入れていて、ゲストベッド代わりにもなる。

温かみのある色合いのラグは、50年ほど前のアンティークキリム。

温かみのある色合いのラグは、50年ほど前のアンティークキリム。

グリーン選びのポイントは見た目のユニークさ。「エアプランツを置いた右の木は行きつけの植物屋さんのディスプレイだったもの。頼みこんで売ってもらいました」(稲田さん)。

グリーン選びのポイントは見た目のユニークさ。「エアプランツを置いた右の木は行きつけの植物屋さんのディスプレイだったもの。頼みこんで売ってもらいました」(稲田さん)。

大好きな漫画のお気に入りの1コマをスキャンしてつくったオリジナルの額。3種類あって気分によって変えている。

大好きな漫画のお気に入りの1コマをスキャンしてつくったオリジナルの額。3種類あって気分によって変えている。

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